卵巣の腫れは卵巣のう腫や卵巣腫瘍と呼ばれ、婦人科疾患の一つです。卵巣腫瘤(しゅりゅう)とも呼ばれます。
卵巣が腫れた状態で妊娠が発覚したり、妊娠初期に初めて卵巣の腫れが見つかる場合には、妊娠や出産への影響が気になりますよね。
今回は、卵巣の腫れの特徴ごとに、どのような注意点が必要か、治療方針はどうなるかを解説します。

※この記事は産婦人科オンラインジャーナル(2020年8月2日配信)より許可を得て転載しています。
※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

■およそ20人に1人の割合で妊娠中に卵巣の腫れが見つかります

近年ではほとんどの医療機関で超音波検査が実施できるようになったこともあり、比較的小さな卵巣の腫れも見つかりやすくなりました。妊娠中に卵巣の腫れが発見される頻度は約5%程度と言われています。

卵巣の腫れは、その特徴から大きく3つのタイプに分かれます。
(A)卵巣のう腫: 袋に液体が溜まって腫れているように見えるもの
(B)良性腫瘍:卵巣の細胞が一部増殖し、卵巣自体が大きくなっているが良性のもの
(C)悪性腫瘍:いわゆる卵巣がん

■(A) 卵巣のう腫は基本的に治療せず経過観察となります

卵巣のう腫は、卵巣の内部に水分や血液成分が溜まっているもので、
・妊娠によるホルモン変化で水分が溜まっている一時的な腫れ
・子宮内膜症に伴うチョコレート嚢胞(のうほう)
などがあります。

ホルモン変化による一時的な腫れはルテイン嚢胞(のうほう)と呼ばれます。妊娠初期に発見された卵巣の腫れのうち、5cm以下の大きさのものは大部分がこのルテイン嚢胞と考えられます。治療は不要で、ほとんどが自然に小さくなっていきます。
子宮内膜症に伴う卵巣のう腫は、通常、妊娠中に悪化することはありません。このため、やはり経過観察のみとするのが一般的で、定期的に超音波検査で大きさをチェックしていきます。

■(B) 良性腫瘍では大きさによって手術が必要かを判断します

良性腫瘍は、卵巣自体が大きくなっているもので、基本的には自然に小さくなりません。
注意点としては以下の点などが挙げられます。
・5-6cm以上の大きさであれば捻転(卵巣の根元がねじれて激痛が起きる)や破裂(腫れが破れてしまう)など合併症が起きる懸念がある
・10cmを超える場合には破裂に加え、出産の障害になる可能性や悪性腫瘍の可能性を考える必要がある

以上より、
・合併症(捻転や破裂など)が起こる可能性が高い
・出産時の支障となりそう
・悪性腫瘍の可能性が否定できない
などの場合に、妊娠中でも手術を実施することがあります。開腹手術にするか腹腔鏡手術にするかは、そのときの状況により個別に検討されますが、近年では腹腔鏡手術が安全に実施できているという研究報告も増えています。

■(C) 悪性腫瘍が疑われた場合には基本的に早期の手術を行います

卵巣の悪性腫瘍(卵巣がん)は、非常に大きな腫れの場合や、画像検査で腫れの内部に特有のサインが認められた場合に疑われます。
ただし確定診断には手術をしてその病変を直接検査する必要がありますので、妊娠中でも原則手術をすることになります。
手術する時期を含めた治療方針は、発見時の妊娠週数、胎児の状態、卵巣の腫れの状態などを総合的に考慮し判断されます。

今回は妊娠中の卵巣の腫れ(卵巣腫瘤)の特徴や治療方針についてまとめました。
専門用語が多く、やや難しい内容だったかもしれませんが、もし「妊娠したいけど卵巣腫瘤があると言われている」、「妊娠初期に卵巣の腫れがあると言われ不安になった」といった場合には、ぜひこの記事を参考に、担当医の先生とよく相談をしてくださいね。

・Adnexal masses in pregnancy.
・Safety of Laparoscopic Surgery for Benign Diseases during Pregnancy: A Nationwide Retrospective Cohort Study.

文/産婦人科医 重見大介