「痔」というと、恥ずかしい感じがして、一人で抱えて悩んでしまう方が多いように感じます。実は、非常に多くの方が妊娠中・産後の痔のトラブルに悩まされているんですよ。

※この記事は産婦人科オンラインジャーナル(2000年12月30日配信)より許可を得て転載しています。
※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

■妊娠中・産後はとても痔ができやすい状態です

まずは痔のできる仕組みについてお話しします。
肛門の周囲には、肛門を閉じるための肛門クッションという静脈の集まり(静脈叢)があります。便秘時の排便や陣痛のいきみなど、お腹の中の圧力が上がる際に、この静脈叢の血管に血液の圧力がかかることで、痔ができてしまうことがあります。

痔は一般的に女性に多く、特に妊娠中や経腟分娩後に多いことがわかっています。発症の危険因子としては、
・ホルモン変化
・腹圧の上昇(長時間立ったり、重いものを持つこと)
・便秘による排便時や分娩時のいきみ
・赤ちゃんが大きめの場合(3800g以上)
などがあります。

以上から、妊娠・出産では多くの要因が重なって痔になりやすいことがご理解頂けるのではないでしょうか。

■痔にはいろんなタイプがあります

一般的には、どんなタイプの痔も一律に「痔」と呼ばれることが多いですが、妊産婦で頻度の多い痔の種類としては、「内痔核」「外痔核」「裂肛(切れ痔)」があります。

内痔核:肛門内側の血管が膨らんでできた血豆が、肛門内に留まっている状態です。初期では痛みはなく排便時の出血のみですが(重症度Ⅰ度)、悪化すると排便時に肛門の外側に出てきて痛みを伴うようになったり(Ⅱ度)、指で戻さないと戻らなくなったり(Ⅲ度)、押し込んでも戻らなくなったりします(Ⅳ度)。

外痔核:肛門外側の血管が膨らみ血豆ができている状態で、血栓性外痔核とも呼ばれます。通常、痛みや出血を伴います。

裂肛(切れ痔):肛門の皮膚が切れたり裂けたりする状態で、排便時に痛みや出血を伴います。

■痔の予防・治療法にはどんな方法があるの?

痔は予防と早期治療が大事です。

予防方法としては、便秘にならないよう水分や食物繊維(25-30g/日)をしっかり摂取し、お通じが硬くならないように、必要なら整腸剤や緩下剤(酸化マグネシウムなど)を処方してもらいましょう。長時間立たないようにしたり、重いものを持たないようにしたり、お風呂にゆっくりつかり血流を良くするのも痔の予防に効果があります。

治療方法は、初期であれば軟膏や座薬など局所療法が効果的です。市販薬にはステロイド入りの薬も多く、ステロイドの種類によっては胎児や授乳への影響が懸念されるものもあるので、出来るだけかかりつけの病院で処方をしてもらいましょう。

また、一般的に、内痔核が悪化すると(Ⅲ度以上)手術が必要になりますので、早期の段階で治療を行うようにしましょう。

このように、痔は、予防・早期治療がとても大事です。「もしかして、痔かな?」と思ったら、長期間悩む前にまずはかかりつけの産婦人科に相談しましょう。

・日本大腸肛門病学会. 肛門疾患診療ガイドライン2014版.
・Hemorrhoid management in women: the role of tribenoside + lidocaine
・Constipation, haemorrhoids, and heartburn in pregnancy
・Hemorrhoidal Disease: A Comprehensive Review

文/産婦人科医 尾市有里