(画像はイメージです)

収入を増やすため、あるいは自身のキャリアの幅を広げるため、副業への挑戦を考える場合、気を付けなくてはいけないこともあります。今回は社労士としての経験も豊富で、ファイナンシャルプランナー(FP)でもある中村先生に、副業をするときのポイントや、キャリアアップに使える給付金制度を教えていただきました。

副業・兼業をする際は就業規則をしっかり確認

「収入面について、今は困っていなくても将来が心配」ということもあると思います。こういうときこそ、FPの出番ですね。

例えば、副業や兼業について。副業は自分で事業を立ち上げる、兼業は空いた時間に他の会社に勤める、といったイメージがありますがとくに細かな定義は決まっていません。いずれにしても、本業以外の仕事(以下、副業等)をする、つまり収入の複線化を図るのであれば、どんな風に働いていくかを具体的に考えておくと良いでしょう。

収入の複線化を考える時に気を付けていただきたいのは、働いている会社の就業規則です。禁止事項に該当していると、最悪の場合は会社を退職せざるを得なくなるかもしれません。そうしたら収入を増やすどころではなくなってしまいます。
今は、国が副業等を推進していることもあり、会社も以前より規則を緩めていることもあります。ですので、業務上の秘密を守りましょう、本業に差し支えがあってはいけませんよ、といった就業規則に則ってください。また、許可を得たり届け出たりするよう書かれていたら、それらをちゃんとしないといけません。嘘をついて、収入が途絶えしまう方が怖いですからね。社労士としては、就業規則は必ずチェックしてほしいポイントです。

あとは新しい会社で勤めを始める場合、勤務日数や時間によっては、今の勤め先・新しい勤め先、どちらも健康保険や厚生年金に入れる状態になるかもしれません。とはいえ、ダブルで入ることはできませんので、メインの職場、つまり健康保険や厚生年金に加入するのをどちらにするか選ぶ必要があります。

――健康保険や厚生年金、どちらで加入すべきか迷ったときは、誰に相談するべきでしょうか?

2社ともに加入要件を満たす場合の手続きは少し複雑になりますので、それぞれの会社の総務担当者などと確認しながら進めると良いでしょう。健康保険には、協会けんぽ(全国健康保険協会)と組合健保(企業ごとの組合が運営する健保)があり、基本的には組合健保を選んだ方が良いはずです。

協会けんぽは国の基本ライン通りのサポートを受けられますが、大手企業などの運営する組合健保はさらにサポートが手厚いこともあるからです。あとは、同じ条件であればもしもの時にどちらの総務担当者が相談しやすいか、なんてことも検討材料にしてみると良いかもしれませんね。

キャリアアップ・キャリアチェンジをしたい人のための教育訓練給付制度

イメージ

それから、収入の複線化を狙うにあたって、資格を取ってから新しい仕事を探すことも考えられると思います。その時には、雇用保険の教育訓練給付制度を上手に活用してください。

教育訓練給付制度には、3種類あります。

――以前にコラムで解説していただきましたね。

そうですね、それから大きく変わってはいませんが、改めて簡単に。1つ目は一般教育訓練給付金、2つ目は特定一般教育訓練給付金というものです。これらは資格取得講座の受講費用などに充てられるので、短期間の講座を受ける時にも活用できます。3つ目は専門実践教育訓練給付金という、医療や介護関係、士業等も含む幅広い技能習得や資格取得を行い中長期的での大きなキャリアチェンジに使えるものです。学費や受講費が年間最大40万円戻ってきますし、要件を満たすとさらに上乗せで給付を受けられるケースもあります。

現在会社勤めで雇用保険に数年加入している、会社を辞めて1年経ってないが前の職場で3年以上雇用保険に入っていたなどの場合には、退職してから1年以内に開始される講座なら使えることがあります。それを使って資格を取ってから、キャリアアップ・キャリアチェンジで収入アップを図るのもいいですね。

コロナ禍で思うように働けない場合や、従来は通勤時間で消えていた時間が在宅勤務のため使えるようになった人なども、こうした制度を上手に使うことも検討してみましょう。
また、ことさら収入が減少して困っているわけではない人も、自分の能力アップに時間を使ってみるのはいかがでしょうか。
スキルアップすることは今の会社や副業等も含めて、生涯の収入アップにつながるかもしれませんし、国の制度を建設的に活用してほしいと思います。

一方で、自営業の人がお店や会社を畳んで、再就職をするシチュエーションもありますが、そうしたときは求職者支援訓練制度も確認してみてください。これは雇用保険からの失業手当等がもらえない人が対象です。
その人の目指す職業での能力アップが図れるとハローワークに認定されれば、無料で訓練を受けられ、かつ、所得が低い家庭はその間毎月10万円受け取れる制度があります。雇用保険の制度ですが、雇用保険に入っていなかった人も使えるものです。決まった時間に資格関係の学校へ行って勉強する生活を送ることで、再就職後の生活スタイルに慣れるという側面もあります。

自営業でキャリアアップを難しく感じていたり、専業主婦から再就職したいけれどお金がないから勉強できないと考えていたりする方には、こういう制度にも目を向けて、ハローワークに相談していただけると良いと思います。

<プロフィール>
中村 薫。1990年より都内の信用金庫に勤務。退職後数カ月間米国に留学し、航空機操縦士(パイロット)ライセンスを取得。訓練中に腰を痛め米国で病院へ行き、帰国後日本の保険会社から保険金を受け取る。この経験から保険の有用性を感じ1993年に大手生命保険会社の営業職員となり、1995年より損害保険の代理店業務を開始。1996年にAFP、翌年にCFP®を取得し、1997年にFPとして独立開業。2015年に社会保険労務士業務開始。キャリア・コンサルタント、終活カウンセラー、宅地建物取引士の有資格者でもある。
●なごみFP・社労士事務所

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル 編集部
文/年永亜美(ライフネットジャーナル 編集部)