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妊婦さんにとって貧血は、およそ5人に1人に見られる珍しくないものです。

貧血は、必ず何かの症状が出る病気ではありません。しかし、貧血が原因となって妊娠生活がより辛いものになったり、ただの貧血ではなくもっと大きな病気が隠れていたりすることもあり、放置することはあまり望ましくありません。

今回は、妊婦さんへの貧血の影響と原因、予防について解説していきます。

※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

■貧血が進行すると、赤ちゃんにもトラブルが!?

貧血とは「血が貧しい」と書きますが、医学的には血液の中でも身体中に酸素を運ぶ赤血球、さらにその中で重要な役割を果たすヘモグロビンが少ないことを指します。そして、貧血になると身体中に十分な酸素を運ぶことができなくなり、立ちくらみやめまい、ふらつき、疲れやすさなどの症状が出ます。

これらの症状は、一般的にヘモグロビンの数値(以下Hb)が下がるほど目立つようになり、妊娠生活が辛くなる原因となりえます。さらに、出産時の出血の影響も大きくなり、産後の回復が遅くなる可能性もあります。

赤ちゃんへの影響として、急に発症したHb≦6.0 g/dLの重症貧血は、赤ちゃんの命が危険にさらされる可能性があります。これはかなり重症で大量出血などを除けばほとんどないと思われますが、Hbが8.0~10 g/dL 程度の貧血でも、低出生体重児・未熟児などのリスクが上がると報告されています。
このように、妊婦さんの貧血には様々なリスクがあるため、放置は望ましくないのです。

■栄養不足が妊婦さんの貧血の原因になる

妊婦さんの身体は、おなかの赤ちゃんに栄養を送るため血液を増やそうとします。栄養を送るために必要な赤血球・ヘモグロビンを作るには葉酸や鉄が必要になります。これらの栄養は赤ちゃんの身体を構成するためにも大量に必要なため、しばしば不足して十分に赤血球・ヘモグロビンを増やせずに貧血になってしまうわけです。

その他、まれな貧血の原因として、血液の病気や膠原病(こうげんびょう)、出血などが隠れていることもあります。特に妊娠初期の貧血では、異所性妊娠(子宮外妊娠)に注意が必要とされます。また、出産時の出血や授乳による消耗から産後の貧血もあります。

■鉄と葉酸の積極的な摂取、医療機関での定期的なチェックが大切

では、このような貧血を予防するためには、どうすればよいのでしょうか?

妊婦さんの貧血の多くはさきほどお伝えしたような鉄や葉酸の不足が原因です。したがって、予防にはこれらの栄養を十分に摂取することが有用です。参考までに、鉄を多く含む食品には、肉や魚介(特にレバー、赤身、あさり)、大豆、葉物野菜(小松菜、ホウレン草)、海藻などがあります。
鉄の吸収を助けるビタミンC(緑黄色野菜や果物)を同時に接種することもおすすめします。葉酸を多く含む食品は、レバー、大豆、ホウレン草、ブロッコリー、アスパラガスなどです。

一方で、食事から吸収できる栄養には限りがあります。重度の貧血では、栄養が体に吸収されやすいよう調整されたサプリメントや薬での摂取が必要になります。また、他の病気などが原因の場合もあるため、妊娠が分かった際には定期的に医療機関でチェックを行うことが大切です。

妊婦健診では通常、妊娠初期(妊娠 8~10週頃)、中期(妊娠 24週頃)、後期(妊娠 36週前後)の計3回、血液検査にて赤血球数やHb 値などを調べます。健診で異常がなくても先に挙げた貧血症状が急に出現して続く場合には、出血などのリスクもあるため産婦人科に相談するようにしてください。

<参考文献>
・中山書店「改訂第9版内科学書 Vo.6. pp 152」南学正臣 2019
・メディックメディア「病気がみえる vol.10 産科 第2版 pp 152」医療情報科学研究所 2010
・日本産婦人科・新生児血液学会「Q1-4. 妊婦貧血とはどんな病気ですか?」(参照 2022-03-26)
・厚生労働省「e-ヘルスネット 貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」(参照 2022-03-26)

<クレジット>
著作/ヘルスケアテクノロジーズ株式会社
文/医師 加藤卓浩(ヘルスケアテクノロジーズ株式会社所属)