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赤ちゃんへの影響を気にして、授乳中にお薬の使用をためらわれる方もいらっしゃるかと思います。
しかし、体調を崩したときにお薬の使用を我慢してしまうと、症状が悪化して子育てにも影響が出てしまう可能性があります。授乳とお薬による治療は両立可能な場合もあるので、適切に使用することが大切です。
今回は、授乳中のお薬の使用に関する疑問について解説します。
※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
■授乳のスタイルはひとつではありません
厚生労働省は、母乳であっても育児用ミルクであっても、どちらでも赤ちゃんの成長に最適な栄養の配分になっている、とした上で、授乳のスタイルはご自身が納得したスタイルを選ぶように発信をしています。
さまざまな理由から母乳育児ができない場合もあるかと思います。生活のスタイルに合わせて選ぶことを大切にしてください。
代表的な違いは、母乳には赤ちゃんを病気から守る成分が含まれている点です。悩んだときには専門家の意見を参考にしましょう。
■お薬を使用すると赤ちゃんに影響はあるの?
飲み薬を例にあげて説明します。一般的に飲み薬を服用した場合、主に小腸から吸収されたお薬は肝臓を通って、血液中に移行します。母乳はお母さんの血液からつくられるため、お薬を服用すると母乳中にもお薬が分泌されます。
ただ、赤ちゃんに届くまでにさまざまな過程を経るため、最終的に赤ちゃんが母乳から吸収するお薬の量は、お母さんが飲んだ量よりずっと少なくなります。そのため赤ちゃん自身にお薬の影響が及ぶ可能性は低くなります。
■お薬を使用する際の注意点
しかし、一部のお薬では注意が必要です。
一部の抗不整脈薬や放射性ヨウ素を含む医薬品などは授乳中の使用には適さないと考えられています。また、お薬の中には母乳の分泌を妨げる成分を含んだものもあるため、注意が必要です。
他にも注意が必要なものはありますが、一般的に母乳への移行が少ないとされている医薬品については、授乳中でも使用できることが多いです。特に外用剤(塗り薬、目薬、点鼻薬など)は、症状のある部位のみに作用するものが多いため、飲み薬と比較して赤ちゃんへの影響が少ないといわれています。
使用するお薬の種類によっては、赤ちゃんが眠くなることもあるので、使用している間は赤ちゃんの様子(いつもより寝る時間が長い、不機嫌になっていないかなど)を気にかけるようにしましょう。
■お薬を使用するタイミングをずらせば授乳できるの?
使用するお薬の種類によっては、授乳のタイミングを調整することで赤ちゃんへの影響を少なくできる可能性があります。例えば使用した直後に吸収されるお薬の場合は、使用直後の授乳を控えたり、授乳をしてからお薬を服用したりすることで、赤ちゃんへの影響を少なくできる場合があります。
お母さんが健康でいることが、赤ちゃんの成長や健康にもつながりますので、必要なお薬はしっかりと飲むようにするのが望ましいです。
ただ、なかには1日を通して長く効果が続くお薬もあるため、どのタイミングで服用するか、授乳するかの判断には注意が必要です。
授乳中のお薬の使用で悩むことがあれば、些細なことでもかかりつけの医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
<参考文献>
・日本産科婦人科学会「HUMAN+」
・Organ Biology「妊婦・授乳婦における薬物療法と胎児・乳児リスクの評価」林 昌洋 2011, VOL.18,NO.3,p279-286
・南山堂「薬物治療コンサルコンサルテーション 妊娠と授乳改定3版」伊藤真也,村島温子,2020, p.40-45
・厚生労働省「妊娠したママのための『授乳準備ガイド』」
・厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(平成31(2019)年3月)」
<クレジット>
著作/ヘルスケアテクノロジーズ株式会社
文/薬剤師 市毛 優(ヘルスケアテクノロジーズ株式会社所属)