葉酸は妊活中や妊娠中に必要な栄養素だとご存じの方も多いでしょう。しかし、「いつ頃から摂取した方がいいのか?」「どのくらいの量を摂取すればいいのか?」など、わからないこともありますよね。葉酸は母子ともに大切な栄養素であり、妊娠時期によっても推奨されている摂取量が異なります。そこで今回は、葉酸の必要性について解説するとともに、葉酸を摂取するタイミングや量、ポイントについてお伝えします。
※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
■葉酸の必要性について
葉酸はビタミンB群の一種で、主に細胞分裂に必要なDNAの合成や、赤血球の形成に関わるものです。特に妊娠初期は細胞分裂が頻繁に起こり、お腹の中の赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管が形成される時期でもあります。この時期に葉酸が不足してしまうと、神経管閉鎖障害※(神経管の閉鎖がうまくいかないことで生じる先天的な異常)の発症リスクが高くなることがわかっています。また、葉酸は赤血球の形成にも関わっているため、妊娠期に不足するとお母さんに貧血症状があらわれる可能性があり、その場合赤ちゃんの成長にも影響を及ぼします。
以上の点から、葉酸は赤ちゃんの発育やお母さんの貧血予防のために重要な栄養素であるといえます。
※神経管閉鎖障害は葉酸不足以外にも多くの要因が関連しています。
■いつから、どのくらいの量の葉酸を摂取する?
一般的に神経管の閉鎖は妊娠6週を目途に完成します。妊娠前から葉酸を摂取することは神経管閉鎖障害の発症リスク低減に有効であるため、妊娠を考えたその時から葉酸を摂取することが望ましいとされています。妊娠していない時の葉酸の推奨摂取量は、成人1日あたり240μgと定められています。ただ、神経管閉鎖障害の発症予防の観点や、妊娠中期から後期にかけては葉酸の分解や排泄が促進されるとの報告があることを踏まえ、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では各妊娠期における葉酸の摂取基準を以下のように定めています。
推奨付加量/日 | 推奨摂取量/日 | |
妊活中・妊娠初期 | 400μg | 640μg(推奨240+付加400) |
妊娠中期・後期 | 240μg | 480μg(推奨240+付加240) |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」ビタミン(水溶性ビタミン) 葉酸の食事摂取基準(μg/日)より
■葉酸を摂取するときのポイント
葉酸は、ほうれん草やモロヘイヤなどの青菜類、ブロッコリー、枝豆などから摂取することができます。例えば、茹でたほうれん草には100g当たり110μg、茹でた枝豆には100g当たり260μgの葉酸が含まれています。ただ、食品に含まれる葉酸は体内で吸収されるまでにさまざまな過程を経るため、体内で利用できる割合が一定ではありません。また、葉酸は水に溶けやすく、熱に弱いため調理工程で損失が生じ、食品からだけでは十分な量の葉酸が補えない可能性もあります。
それに対して栄養補助食品などに含まれる葉酸は、食品中に含まれる葉酸と比較すると体内で利用できる割合が高いことが報告されています。そのため、特に妊活中や妊娠初期の葉酸の摂取については、通常の食品とあわせて栄養補助食品などから葉酸を摂取することが推奨されています。しかし、葉酸を大量に摂取すれば良いということではありません。葉酸の過剰摂取は健康にも影響がありますので、栄養補助食品などを日常生活に取り入れる場合には適量摂取を心がけてください。
栄養補助食品には葉酸以外にビタミンやミネラルなどを含んだ商品が多くあるため、商品の選択や使用に関して心配な点がある場合は事前に主治医や薬剤師に相談するようにしましょう。
<参考文献>
・日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2020」(閲覧日:2022.6.20)
・eヘルスネット「葉酸とサプリメント-神経管閉鎖障害のリスク低減に関する効果」(閲覧日:2022.6.20)
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(閲覧日:2022.6.20)
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八版)」(閲覧日:2022.6.20)
<クレジット>
著作/ヘルスケアテクノロジーズ株式会社
文/薬剤師 市毛優(ヘルスケアテクノロジーズ株式会社所属)