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子どもが言葉につまるなと思ったとき「吃音(きつおん)」を疑うことがあるかもしれません。吃音は、2歳をピークにおよそ8%の子どもに症状が出る珍しくないものです。吃音が出るのは、保護者の方の責任などではありません。また、吃音があっても周囲の関わり方で言葉のつまりが軽くなったり、積極的に話しやすくなったりすることが期待できます。今回は、吃音の症状や原因について今分かっていること、そして上手な関わり方についてお伝えいたします。

※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

■そもそも吃音とは?3つの特徴的な症状

吃音とは、いわゆる「どもり」のことです。こちらの方が聞き馴染みのある方も多いと思いますが、現在では不適切用語とされることもあるため、本コラムでは「吃音」と表現します。
幼児期に発症することの多い発達性吃音には、特徴的な症状が3つあります。

「きつおん」と言う場合を例に取ると、「き、き、き、きつおん」のような音の繰り返し、「きーーーつおん」のような音の引き伸ばし、「……きつおん」のように言葉がなかなか出ずに間があいてしまうブロック(阻止ないし難発ともいいます)の3つです。これらの症状が言葉を話すときに頻繁にみられることが、医学的な吃音の基準とされています。

■吃音が出るのは育て方が理由ではありません。本当の理由は?

まず先にお伝えしたいのが、保護者の方の責任などではありませんので、気に病まないようにしていただきたいです。吃音が出る主な理由は、体質と考えられています。この体質とは、言葉の音と音をなめらかにつないで話すのが苦手な体質のことです。

言葉の能力が急に発達する幼児期に、長い単語や複雑な文を話そうとするとき、特に興奮やストレスが加わった場合は、能力が追いつかずに吃音症状が出やすいとされています。

■周囲の関わり方で吃音がある子どもも話しやすくなる

幼児期の吃音の多くは、いつも症状があるわけではなく、なめらかに話せる状況の時もあります。このような状況が続いてなめらかに話すことをくり返すうちに、言葉を話す能力の発達が追いついて自然と治っていくと考えられています。また、症状があってもそれを過度に気にせず話せるような環境にいることで、症状の悪化を抑え、積極性を身に着けやすくなることが期待できます。したがって、吃音がある子どもが話しやすくなるように、こうした状況・環境を作る関わり方をしていくことが重要です。

具体的には、話をゆっくり聞き、話しかける際には簡単な文・言葉でゆっくり話しましょう。子どもへの質問は減らして、質問する場合は一言で答えられる質問にすると良いでしょう。複雑な回答を考えながら話さないといけない場合、つっかえやすくなるためです。子ども自身が話したいことをゆっくり聞いて、共感的・肯定的なコメントを簡単な言葉で伝えてあげましょう。これは子どもの話したいという意欲を強め、自己肯定感を育むうえでも重要です。なお、吃音でつっかえていると、ついゆっくり話すよう言ってしまうものですが、話し方を意識してコントロールすること自体が子どもには難しいとされます。周囲がゆっくり話していれば、子どもも自然とゆっくり話せるようになります。

最後に、就学の1年半程度前まで(4~5歳)吃音が続いている場合には専門家へ相談されることをお勧めします。専門家の治療で改善する場合もありますが、1年半ほどの期間がかかることが多いためです。また、小学生になると周囲も吃音に気づきやすくなり、さらに8歳頃からは治りにくくなることもあります。

専門家の言語聴覚士がいる施設は、地域の保健センターや都道府県の言語聴覚士協会に問い合わせると紹介してもらえます。教育機関で支援を行っていることもありますので、地元の小学校や教育委員会に問い合わせるのもいいでしょう。

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<参考文献>
・幼児吃音臨床ガイドライン作成研究班「幼児吃音臨床ガイドライン(第1版)」(参照 2022年7月1日)

<クレジット>
著作/ヘルスケアテクノロジーズ株式会社
文/医師 加藤卓浩(ヘルスケアテクノロジーズ株式会社所属)