妊娠中に、運動、旅行に行ったり温泉に入ったりをしたいと思っていても、赤ちゃんへの影響を心配される方もいるでしょう。
実は、妊娠中でも体調の変化に注意すれば軽い運動をしても良いとされています。妊娠中の運動は体重コントロール、リフレッシュ、体力づくりなどに良い効果が期待できます。
今回は妊婦さんが運動や旅行などをする場合の、具体的な開始時期や注意点などについてお伝えいたします。
※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
※本ページで説明している内容は、妊娠経過が順調であること・単胎妊娠を前提とした一例です。実際に運動や旅行などを行う場合は、必ず医師にご相談ください。
■妊娠の時期に応じた運動について
・妊娠初期
0〜15週(~妊娠4ヶ月)のことをいいます。
つわりによる体調の変化などもあり、妊婦さんや赤ちゃんの状態が変わりやすい時期です。
そのため、妊娠初期は、日常生活上で行える家事や買い物、ストレッチなどを通して体調の変化を確認することから始めましょう。運動を始めるのは12週以降で、妊娠が順調に進んでいる場合に限ります。
ストレッチをする際は、片足でバランスを取るなど転ぶ可能性があるものや、お腹を圧迫するようなものなどは避けてくださいね。また、妊娠前から運動習慣のある人は、それまでよりも運動強度を弱めましょう。
・妊娠中期
妊娠16〜27週(妊娠5~7ヶ月)のことをいいます。
中期は安定期とも呼ばれ、妊娠初期のつわりがおさまり、心身の不調が軽減する妊婦さんが多い時期です。
運動を始めるタイミングとしては、この頃が良いと言えます。もしも運動をするのでしたら、長時間仰向けの体勢を取るものや、急に走ったり止まったりするもの、人と接触する可能性があるものは行わないようにしましょう。
・妊娠後期
妊娠28〜39週(妊娠8~10ヶ月)のことをいいます。
後期は、お腹も大きくなり、体の動かしにくさを感じることもあるため、運動不足になって体力が低下しやすい時期です。
出産時は体力が必要となりますので、楽しんで行える運動を継続していくと良いでしょう。
ただし、いつ生まれてもおかしくない臨月では、無理に運動することは避け、注意深く体調の変化を見ていくことが大切です。
■どのような運動が良いの?
妊娠中は、自分のペースで行える有酸素運動が一般的に行われています。
- ウォーキング
- マタニティヨガ
- マタニティスイミング
- マタニティエアロビクス
- ストレッチ
運動頻度は、週2~3回で、運動時間は60分以内としましょう。
運動を行う際には、心拍数は150回/分以下で、「ややきつい」以下までの強度とすることが望ましいとされています。
激しいスポーツや球技などは転倒したりぶつかったりする危険性があるため、避けましょう。
運動の開始時期や種類などについてお伝えしましたが、早産や流産を経験したことがある、妊娠合併症がある、多胎妊娠の方などは、運動をすることで体に負担がかかりやすくなるため、医師の許可が必要となることが多いです。そのような場合には、事前に医師に確認しましょう。
■運動する時の注意事項ってなに?
・【脱水予防】:こまめに水分補給をしましょう。
妊娠中は基礎代謝量が増えるため汗をかきやすく、つわりによって体内の水分が出ていきやすい状態です。
・【休養も大切】:体調が優れない時は休みましょう。
妊娠中は妊婦さんと赤ちゃんの健康が第一です。運動をすることで体調が悪化する場合もあるため、無理は禁物です。
・【時間帯】:夜間は避け、日中に行うようにしましょう。
運動をする場合は、医療機関の受診が可能な日中(午前10時~午後2時が望ましい)に行いましょう。
お腹の痛みや張り、出血などいつもと異なる症状がある際には、早めにかかりつけ医を受診しましょう。
■妊娠中の旅行や温泉は?
・旅行
経過が順調で妊婦検診でも問題がなく、医師から許可を得ている場合は旅行にいくことも可能です。
より体に負担がかかりにくい時期としては、妊娠16〜27週の安定期となります。
ただし、旅行先の環境や移動手段、移動距離によっては、安定期でも避けた方が良い場合や注意が必要な場合があります。
また、新型コロナウイルス感染症の流行が収束しない昨今での旅行は、移動中や旅行先での感染の危険性や緊急出産、医療体制が不安定な地域もあることを踏まえると、控えることをおすすめします。
万が一、旅行に行く必要がある際は事前に医師に相談し、十分にご家族で話し合った上で決めましょう。
・温泉
昔は妊娠中の温泉浴は禁忌とされていましたが、2014年に温泉法が改正になってからは妊娠中でも温泉に入ることができるようになりました。
ただし、妊娠初期や臨月などは体への負担が強くなったり、浴場での転倒などによる危険性もあったりと、注意が必要なこともあります。
そのため、温泉に入る予定があるときは母子健康手帳を持ち歩くようにしましょう。また、入浴時はなるべく1人で入らないようにすることも大切です。
<参考文献>
・日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 28 No. 1, 「妊婦スポーツの安全管理基準(2019) 」日本臨床スポーツ医学会 産婦人科部会,2020(閲覧日:2022.9.3)
・日本温泉気候物理医学会雑誌第83巻第3号「妊婦の温泉浴の安全性の検討」岩永成晃,宮田昌明,早坂信哉,2020(閲覧日:2022.9.3)
<クレジット>
著作/ヘルスケアテクノロジーズ株式会社
文/看護師・保健師 浅野玲 (ヘルスケアテクノロジーズ株式会社所属)