白河桃子さん(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授)

白河桃子さん(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授)

最近、あちこちで女性の社会進出が議論される一方、「どうやら、若い女性たちに専業主婦願望が広まっているらしい」という話も聞かれます。女性のキャリアをめぐり、まったく正反対に感じるふたつの意見が、同時に話題となっているのはなぜなのか?

昨年12月に『専業主婦になりたい女たち』を上梓したばかりの少子化ジャーナリスト、白河桃子さんに聞いてみました。

■日本は今もずっと「専業主婦の国」である

――近年、「いつかは専業主婦」という女性が若い世代に増えていると言われています。その背景には何があるのでしょうか。

白河:前提として、専業主婦世帯は日本ではすでに少数派です。反対に共働き世帯の比率は増え続け、2013年の時点で58.6%を占めています。また女性の雇用も増加し、2013年の女性の労働力人口は2,804万人と前年より38万人増えています(厚生労働省「国民生活基礎調査の概要」「働く女性の実情」より)。

しかし、それでも日本は未だに専業主婦の国と言えます。まず、共働き世帯の女性たちの半数以上がパートなどの非正規雇用であり、どちらも正社員の夫婦は15%ほどに過ぎません。さらに未婚女性の考え方も根本的には変わっていない。就職してバリバリに働いても、「自分はいつかは養ってくれる人と結婚できる」という考え方が根強いのです。

――「いつかは養ってもらう」という願望は、実際には共働き世帯が増えている現状と正反対ではないでしょうか。

白河:いや、共働き世帯が増えていることこそが「専業主婦願望」が広がっている原因でしょう。かつてはキャリア女性が少数派でしたが、今や専業主婦こそが得難い存在になっています。共働き世帯のほとんどが、一回仕事を辞め子育て後に子どもの教育費や生活費のためにパートに出ている兼業主婦です。女性だって働くことから逃れられない。だから希少なものにあこがれるわけです。

――まだ意識のうえでも、「仕事と家庭は両立するもの」になっていない?

白河:ええ。主な子育て世代である20代、30代のほとんどは、専業主婦(5歳時点)の家庭から生まれています。仕事と家庭を両立する女性のロールモデルが身近にいないまま育っているので、具体的にイメージできないのです。

それに、日本の場合は「母親」へのプレッシャーが大きすぎます。あらゆる場面で良妻賢母であることを求められるだけでなく、子どもに何かがあればすぐに「母親の責任」を問われる。男性に比べて、女性はバリバリ働きながら子どもを育てることに対するハードルが高過ぎるのです。

だから、子を持つことで「これだけのプレッシャーを負うなら、働くという苦役から解放されるのは当然じゃないか」と願う女性は減らないのです。むしろ、増えているといっていいでしょう。

――確かに……。育休や産休制度を用意する企業も増えていますが、その一方で、実際に休む女性に対する風当たりが強いという話も絶えません。

白河:安倍政権が「女性活躍推進」を掲げるようになってから、多くの企業が女性を積極的に登用したいと考えています。しかし日本では企業がいくら制度を整えても、風土がないとちゃんと機能しないんですよ。

■本当に必要な女性のキャリア教育とは

──制度が用意されているということは、産休も育休も権利のはずです。しかし実際には取得することで軋轢(あつれき)を生むケースも多い。

白河:団塊世代が築いた「専業主婦の核家族」という形態があまりにも成功したモデルだったので、未だにそれが日本のスタンダードだと考えられているんです。だから、社会の隅々までそれを前提にした価値観が浸透してしまっている。

キャリア教育も、女性向けが行われるようになったのは最近のことです。しかし、そこではやたらと「輝く」とか「意義のある」といったキラキラした言葉ばかりが飛び交う。何か現実から遠い、夢のような話として女性のキャリアが語られてしまうのです。

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