嵜本晋輔さん(株式会社SOU代表取締役社長)。2月にお披露目する新社屋にて。

嵜本晋輔さん(株式会社SOU代表取締役社長)。2月12日にお披露目する新社屋にて。

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スポーツ選手のセカンドキャリアの問題がメディアで取り上げられることも増えてきましたが、元Jリーガーの嵜本晋輔(さきもと・しんすけ)さんは、アスリートのセカンドキャリア成功モデルと言っても過言ではない方です。

三浦知良選手に憧れてサッカー選手を目指し、2001年から2004年までガンバ大阪でプレーした経験を持つ嵜本さんは現在、株式会社SOUの代表取締役社長を務めています。ブランド買取専門店の「なんぼや」などを運営する、リユース業界で上位に位置する企業です。

「元カレが、サンタクロース」など、記憶に残る広告キャンペーンでも知られる同社の年間売上高は、なんと156億円(2015年)。ビジネスについて専門的に勉強したことのなかった元Jリーガーが、どうしてこれほどの規模のビジネスを立ち上げることができたのか?

嵜本さんが若くして引退を決めた理由から、驚異的な成長の秘密、さらには「成功する企業・失敗する企業」の見分け方まで伝授するインタビュー、その前編をお届けします。

■高校3年でガンバ大阪にスカウト、22歳で引退

――Jリーガーだった当時から、ビジネスについて勉強していたんですか?

嵜本:いえ、まったくそんなことはなくて。現役時代はがむしゃらに、サッカーで食べていくことしか考えていませんでした。セカンドキャリアについては考えたこともなかったですね。

――しかし、入団から3年で戦力外通告を受けてしまった。

嵜本:正直、サッカーに100%真剣に打ち込めていなかったんだと思います。私は高校3年生でスカウトされてガンバ大阪に入団したので、Jリーガーだったときは20歳前後の一番遊びたい盛りでもあったんです。だから今振り返ると、選手として結果が出なかったのも当然というか。

退団後は、2つ下のカテゴリーであるJFLの佐川急便大阪SCに在籍しました。普段は会社員として佐川急便で働きながら、選手として試合に出るという生活に変わったんです。グラウンドも芝生から土に変わりましたし、人生で初めての挫折です。

プロになった頃はそれなりに注目もしてもらって、鳴り物入りのような感じでした。でも一気に生活が変わって。プライドはズタズタになりましたね。会社員として働くのも初めての経験で、それまでお茶出しやトイレ掃除すらしたこともなかったですから。

――意地でもサッカー選手として再挑戦してやる! とはならなかった?

嵜本:プロの厳しさを知ってしまったからこそ、自分の限界もわかってしまったんです。だから、もう一度ドン底から這い上がっていくよりも、社会人としてビジネスの世界に飛び込むほうが、将来的にも自分にとってプラスの経験になるのではないかと思いました。

自分はずっとプロを続けられるほどの実力はない。いつかはビジネスの世界に行かなければならない。それだったら、ビジネスの経験を積むのは早いほうがいい。そう切り替えたんです。22歳のときでした。

もちろん、サッカー選手として挫折したことは、自分にとって大切な財産だと思っています。「戦力外通告を受けたときの挫折をもう味わいたくない」という悔しさをバネに、ここまでがんばって来られたようなものですからね。

■父親のリサイクルショップで経営のノウハウを学ぶ

――リユース業界に入ったきっかけは?

嵜本:元々、父がリサイクルショップを経営していたんです。佐川急便に在籍していたときから、将来についていろいろと相談はしていて、その中で、父からリユース業界の面白さというものを教えてもらっていました。

――リユース業界に感じた面白さとは何だったのでしょう?

嵜本:例えば、商品の買い取りです。入社当時は倒産した飲食店からの依頼が多かったんです。商売がうまくいかなくなったから、厨房器具や家電を買い取ってほしいという依頼ですね。それでいろんな飲食店を見て回ると、失敗する店の傾向がわかるようになってくるんです。

一方で、買い取った厨房器具を購入する店もたくさん見ることができました。そこは勢いのある、これから伸びていく店であることが多いわけです。つまり、リユースの仕事を通じて、ビジネスを成功させる基本的なノウハウも学ぶことができる。そこが面白かった。

――成功する店と失敗する店を分けるポイントって、どんなところにあったのでしょう?

嵜本:共通して言えるのは、「つぶれる店は店内が汚い」ということです。冷蔵庫を動かしたらゴキブリの卵が見つかるなんてことが、つぶれる店にはほぼ必ずあるんです。あとは買い取りにうかがった際に対応してくれた方が、感じの悪いスタッフであることも多い。成功している店は、この真逆なんです。

おいしい料理を出しているかどうかというよりも、結局ビジネスの成功を左右するのは「人」なんです。本当に基本的なことなんですが、基本的なことができない店は、やっぱり潰れていました。

これは店舗だけでなく、オフィスにも当てはまると思います。実際に今の自分のビジネスでも、当時いろんな店舗や企業のオフィスを見て感じたことが活かされています。

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