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■自らはリユースへ、兄2人は飲食の道へ

――嵜本さんがリユースを本格的に仕事にしていこうと決心されたのは、いつ頃だったんでしょう?

嵜本:私には兄が2人いて、3人で「MKSコーポレーション」という会社を立ち上げました。サッカー選手を引退した頃です。これは将来、兄弟3人でビジネスをやっていくための会社であって、特に私は、具体的にどうしていくというアイデアがあったわけではありませんでした。

兄2人はリユースよりも飲食の世界に興味があったので、洋菓子の仕事を始めたんですね。一方で私は、リユース業界の面白さというものがわかり始めて来たところだったので、父のリサイクルショップを引き継ぐかたちで仕事を続けていました。だからMKSコーポレーションは、リユースと洋菓子という2つのビジネスで経営していたわけです。

幸いなことに、なんぼやは大阪から始まって、2年後には東京にも進出し、順調に規模を拡大していくことができました。それで洋菓子事業とリユース事業を別々に経営していくことになり、兄2人がそれぞれ洋菓子の会社(焼きたてチーズタルト専門店PABLOなど)を立ち上げ、私がリユースの会社を現在の「株式会社SOU」として設立したわけです。

――いわゆる「ブランド品」の買取専門店ということですね。

嵜本:はい。父親のリサイクルショップは厨房器具や家電が中心でしたが、たまにブランド品も依頼があったんです。ブランド品は高単価で、在庫スペースも少なくて済む。重くて大きい厨房器具に比べたら、夢のような商材だったわけです。

家電のマーケットが縮小していくことは分かっていましたから、リサイクルショップも今までのようにはいかなくなる。父親の理解を得て、2007年大阪の難波に念願の買取専門店「なんぼや」の1号店をオープンしました。

■急成長の秘密は「優れた接客」にあり

――SOUは現在、全国に39店舗(なんぼや32店舗、ブランドコンシェル6店舗、ZIPANG1店舗)、従業員300名を抱える規模にまで成長されました(2016年1月末時点)。それだけお客様から支持されているということでもあると思うのですが、何が強みになっていると思われますか?

嵜本:やっぱり、ひとりひとりのコンシェルジュ(商品買取の鑑定士)の接客の質だと思います。リユース業界って、買取価格にそれほど店ごとの差はないんですよ。どこのお店も同じ買取表を見て価格を決めていると思っていただいていい。熾烈な価格競争は競合同士で首を絞め合ってしまうようなものです。だから差別化をしていくなら、接客の質を上げて、価格以外のところでお客様に満足してもらうしかないんです。

たとえ他店より1,000円、2,000円査定金額が低かったとしても、コンシェルジュの人柄で品物を買い取らせていただけるような店作りを考えていかないと、リードすることはできないと思っています。実際、他店より数万円安かったとしても、「あなた(コンシェルジュ)が気に入ったからこの店に売るわ」という方はいらっしゃいます。

――リユースにおける“よい接客”とは?

嵜本:とにかく「モノ」だけを見て、第一声で査定金額を伝えるような接客はダメですね。お客様が何を知りたいかというと、金額そのものというより、どういった背景でこの査定金額が導き出されたのか。聞いて納得感が得られるような話を知りたいわけです。

ただし納得感を与えるためには、お客様と対話をしていかないといけない。どういう経緯でこの商品を持ち込むことになったのか、この商品にはどんなストーリーがあるのか、そういった情報をお客様から聞き出しておかないと、納得してはもらえません。

例えば、自分でコツコツお金を貯めて買ったバッグと、大して関心のない人からもらったバッグでは、同じ商品でも思い入れがまったく違います。後者では持ち込んだお客様自身が定価も知らないなんてことがあるわけです。

私はコンシェルジュに「自分自身が多くの利益をいただいても、お客様にきちんと満足していただけるような接客をしましょう」と伝えています。リユースの業界には「接客の重視」という考え方はありませんでした。とにかく1円でも高く買取金額を提示して売ってもらうことが常識です。でも私は、本当に目指すべきは逆だと思うんです。

これは誤解を生む言い方かもしれませんが、むしろ、買取金額は低く提示して、その代わりに自分(コンシェルジュ)という人間の魅力を買ってもらう。相場以上の価値をサービスとして提供することで、利益率を上げながらも、顧客満足度を高めていく。そのぐらいの意識を持って接客していかなければダメだと伝えているんです。

――それは嵜本さんがリユースの仕事を始めた頃の学びが活かされていますよね。ビジネスの成功を左右するのは結局、「人」なのだという。

嵜本:そう思います。だから、なんぼやはリピーターが多いんですよ。お客様にとってモノを売るだけの店になってしまったら、リピーターは増えない。コンシェルジュのひとりひとりに常連が付くような接客を目指したことが、弊社の成長を支えたと思っています。

(後編につづく)

<プロフィール>
嵜本晋輔(さきもと・しんすけ)
1982年、大阪府生まれ。株式会社SOU代表取締役社長。関西大学第一高等学校の3年時にガンバ大阪からスカウトされ、卒業後、関西大学に通いながらJリーガーとして活躍。2004年に戦力外通告を受け、JFL佐川急便SCに入団。引退後は父親が経営していたリサイクルショップで経営のノウハウを学び、2007年にブランド買取専門店「なんぼや」をオープン。2011年には株式会社SOUを設立。代表取締役社長に就任する。現在は「なんぼや」のほか、BtoBオークション事業の「STAR BUYERS AUCTION」、予約制の買い取りサロン「BRAND CONCIER」も運営する。
●株式会社SOU

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/村上悦子

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