嵜本晋輔さん(株式会社SOU代表取締役社長)。2月12日にお披露目する新社屋にて。

嵜本晋輔さん(株式会社SOU代表取締役社長)。2月12日にお披露目する新社屋にて。

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三浦知良選手に憧れてサッカー選手を目指し、2001年から2004年までガンバ大阪でプレーした経験を持つ嵜本晋輔さん。そんな元Jリーガーは今、年商100億を超える企業の代表を務めています。

それがブランド買取専門店「なんぼや」などを運営する、株式会社SOU。2011年の設立から3期連続で前年比200%の成長を続け、リユース業界を牽引する企業となった同社の原動力とは何か?

「不景気の影響がない」という驚きのビジネスモデルの秘密に迫るインタビュー、後編をお届けします。(前編はこちら

■リピーターを増やすための近道とは?

――SOUは2011年の設立からわずか3年で売上高100億円を突破し、現在も成長を続けています。ビジネスとしてここまでとても順調かと思うのですが、壁にぶつかったと感じたことはあるのでしょうか?

嵜本:いや、毎日ぶつかっていますよ。数字に満足しているわけでは決してなく、もっと上を目指せると思っています。そのためにもお客様の満足度を上げて、リピーターを増やしていくことが重要です。

――リピーターを増やすために必要なこととは?

嵜本:店のリピーターというよりも、コンシェルジュ(商品買取の鑑定士)ひとりひとりのリピーターを増やしていきたい。これはあらゆる企業に言えることだと思いますが、営業マンは会社の名前で仕事をしているという意識がありますよね。でもそれでは、質の高いサービスは提供できない。

私はよく社内で、「目の前のお客様は自分にしか対応できないと思って接客してほしい」と伝えています。「なんぼやだから来た」というお客様よりも、「◯◯さんだから来た」というお客様が増えたほうが、満足度は高くなります。

今の時代、提供しているのが食べ物にしろ、洋服にしろ、商品にお店ごとの大きな違いはありません。では、どこで付加価値を提供していくのか? それは接客しかありません。「質の高い接客」というサービスを売っていくことが、リピーターを増やすための近道だと思うんです。

――なるほど。だからコンシェルジュによる「接客コンテスト」を行ったりしているんですね。

嵜本:そうです。「接客コンテスト」はコンシェルジュのモチベーションを上げるために、目標があったほうがいいと、2014年から始めました。リユース業界では初の試みです。接客にはマニュアル化できる「正解」はありません。100人のお客様がいれば、100通りのアプローチの方法があり得ます。だから個々のコンシェルジュが上を目指す意識を持つことが、サービス向上のためには必要なんです。

社員教育という意味では、もうひとつ、弊社が独自に取り組んでいることがあります。それは「STAR BUYERS AUCTION(スターバイヤーズオークション)」という、BtoBのオークション事業です。

■同業者はライバルであり、取引先でもある

――BtoBのオークションとは?

嵜本:なんぼやで買い取ったブランド品や宝飾品を出品するオークションで、消費者向けではなく、事業者向けに行っています。そもそも、なんぼやもブランド品の買い取りにのみ特化していて、一般向けの販売は行っていないんです。

――そうなると、商品の卸先はどこになるのでしょう?

嵜本:基本的には同業者です。みなさんが一度は聞いたことがある大手のリユース企業にも卸しています。オークションに参加されるのも、そういった同業者の方々が中心です。

――ほかのリユース企業は買い取りのライバルであり、取引先でもある。

嵜本:そういうことです。BtoBに特化したことが私たちの急成長の理由なんです。というのも、買い取りと販売の両方を行っているリユース業者では、店舗を維持していくのにかなりの負担がかかります。売り場も確保しなければならないですからね。しかしBtoBにはそれがない。あまり経費をかけずに、利益率の高いビジネスを展開していけるんです。

――では、なんぼやで買い取った商品が、隣のライバル店で販売されているということもあり得るわけですね。買い取りは消費者から行い、販売する先は同業者。その販路のひとつがオークションだと。

嵜本:ええ。ただ、ブランド品のオークション自体は他社も行っています。そのビジネスモデルは、出品者と参加者を募り、落札価格の数%を手数料として徴収するモデルです。しかし弊社では手数料ビジネスは行っていません。出品者はあくまで自社だけなんです。

――それはなぜですか?

嵜本:「STAR BUYERS AUCTION」は、利益を得るためというよりも、社員教育のために始めた事業だからです。というのも、会社の規模が大きくなり、コンシェルジュの数が増えるにつれ、彼らが「会社の仕事=買い取り」だと錯覚するようになっていきました。

しかし本当は、買い取った商品を売ることで、我々の仕事は完結するわけです。それなのに、商品が売れていく現場を知らないコンシェルジュが増えてしまった。

質の高い接客を実現していくためには、これではまずいと危機感を覚えました。どんな商品をどんな業者の人々が買っているのか知らないと、コンシェルジュの能力は向上していかない。

「STAR BUYERS AUCTION」とは、商品が売れていく過程をコンシェルジュに体験させるために作った場なんです。それにオークションなら、同業者である目利きのバイヤーたちが商品のどこを見て、どういう評価を下すのかもわかる。それを肌で感じることで、コンシェルジュの日々の仕事にも緊張感が生まれるのです。

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