「League of Legends」のオフライン大会で、所属選手たちのプレーを見守る梅崎伸幸さん(DetonatioN FocusMe代表)

「League of Legends」のオフライン大会で、所属選手たちのプレーを見守る梅崎伸幸さん(DetonatioN FocusMe代表)

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先日お届けした、日本初のプロゲーマーチーム「DetonatioN FocusMe」代表・梅崎伸幸さんのインタビュー後編です。前回はチーム設立の経緯、さらに梅崎自身のゲーム遍歴についてうかがいましたが、今回は、まだまだ日本には知られていない「e-Sportsの市場としてのポテンシャル」について、お話を聞きました。

(前編はこちら「好きなことで生きていくため月給制を敷く」)

■ついに日本もプロゲーマーを職業として認めた!

──3月30日には、e-Sportsの普及を目指す団体「日本プロeスポーツ連盟」が発足しました。梅崎さんも理事に名を連ねていらっしゃいますが、どういうことをする団体なのでしょう?

梅崎:プロリーグを主催していくほか、プロゲーマーの認定ライセンスを発行していきます。e-Sportsという名前は少しずつ一般にも浸透するようになりましたが、まだまだ「ゲーマーって、職業になるの?」と思っている人たちは多いです。認定プロゲーマーのような制度を作ることで、社会的な信用度を上げていきたいと思っています。そうすると、スポンサーも入りやすくなりますしね。

──ということは、e-Sportsの主な市場である海外では、プロゲーマーが職業として認められている?

梅崎:そうです。例えば、アメリカでは2013年に「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド。通称”LoL”)」というオンラインゲームの公式大会をプロスポーツとして認定し、出場選手に対しアスリートビザを発行しています。「LoL」の選手は、プロ野球選手やサッカー選手と同じように、れっきとした”プロスポーツ選手”として認められたのです。こうした流れは、ほかの国にも広がっています。

──日本でも、同じような発表がされましたね。

梅崎伸幸さん(DetonatioN FocusMe代表)

▼「法務省、『プロゲーマー』にビザ発行の方針」(2016/3/30 日本経済新聞電子版)
▼「“日本プロeスポーツ連盟”が発足 プロゲーマーのビザ取得やeスポーツライセンスの制度化を推進(1/2)」 (2016/3/30 ファミ通.com)

梅崎:国が動いてくれて、ようやく日本でもe-Sportsの選手に興行ビザを発行すると決まりました。これで一般的にも、「プロゲーマー=プロスポーツ選手」という認識が広がってくれればと思います。

──日本では「ゲームはあくまで遊びであり、大人が真剣にやるものじゃない」というイメージが強すぎますよね。

梅崎:そうなんです。テレビゲームを生んだ国なんですけどね。僕らもチームを立ち上げた当初は、世間の目をめちゃくちゃ感じました。「ゲームってスポーツなの?」みたいな反応が多くて、僕らがやろうとしていることに興味を持ってくれる人は少なかったです。

それが2015年の後半くらいから、大手のゲーム企業がe-Sportsの振興に乗り出してきたこともあり、e-Sportsやプロゲーマーという言葉がテレビや新聞に出るようになりました。DetonatioN Gamingへの取材依頼も急速に増えましたね。僕自身も3か月前に六本木を歩いていたら、「テレビに出ていましたよね?」と話しかけられました(笑)。

■韓国がe-Sportsの本場になった意外な理由

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──ちなみに、e-Sportsの本場といえばどこになりますか?

梅崎:タイトルによって微妙に異なるのですが、うちのチームが主にプレーしている「LoL」であれば、韓国が圧倒的です。NEXONやHangameなど、世界的に有名なオンラインゲームの企業を生んでいます。

──どうして韓国でそれほどオンラインゲーム市場が盛り上がっているのでしょう?

梅崎:1997年の通貨危機がきっかけだと言われています。当時、韓国の経済が大きく傾いて、国策として新しい産業に投資していこうとなりました。そのときに目をつけたのが、ブロードバンドだったんです。国中に高速回線を整えて、あらゆるところでインターネットにアクセスできるようにしたわけです。

さらにもうひとつ大きかったのは、韓国では日本のゲーム機の導入が遅かった。だから、韓国の若者たちにとってはテレビゲームというのは未知の文化でした。そういうユーザーの興味と、ブロードバンドを後押ししたい国の思惑が一致して、オンラインゲームが爆発的に普及したと言われています。

──その流れが今も続いていると。

梅崎:そうです。しかも国が後押ししているので、e-Sportsが始まった初期の頃から、韓国のスゴ腕ゲーマーはプロとして認められていました。「LoL」の世界では韓国のトッププレイヤーが、数億円規模の移籍金で、中国、さらにはヨーロッパやアメリカのチームに移籍するといったことも起こっています。

──ほかの国はいかがですか?

梅崎:ヨーロッパはシューテング系が強い印象です。アメリカはどんなジャンルでもプレイヤーが一定数いる感じですね。日本では、やはり格闘ゲームの競技人口が多いです。ただ、日本はやはり動く金額がまだまだ少ないですね。この1年でかなり伸びてはいるんですが。

■日本人プロゲーマーの平均月収は?

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「LOL」のオフライン大会で、所属選手たちのプレーを見守る梅崎さん。大会の賞金も、プロゲーマーの重要な収入源だ

──日本人プロゲーマーというのはどのくらいいるのでしょう?

梅崎:「スポンサーありで活動している」と定義すれば、ここ数年で3倍、4倍に増えました。しかし、すべてのチーム・選手がお金を稼げているかというと、まったくそんなことはありません。国内ではうちも含め、数チームくらいでしょうか。

──e-Sportsについて詳しくない人が誤解しそうなのは、YouTubeやニコニコ動画で、ゲーム実況をしている人たちのことです。彼らもここ数年で劇的に増えましたが、プロゲーマーとはちょっと違いますよね。

梅崎:彼らはプロゲーマーというよりも、プロゲームストリーマー(プロ配信者)ですね。プロゲーマーも配信をやりますが、その目的はスーパープレーを見てもらうことや、ファンとのコミュニケーションにあります。一方、配信者の方々は、あくまでエンターテインメントとして、ゲームを実況している姿を楽しんでもらっている。アスリートというよりも、タレントさんに近い立場だと思います。

プロゲーマーというのはあくまでも、競技で勝たないと意味がありません。どんなにキャラクターが魅力的なプロ野球選手がいても、実力が伴っていなければ選手としてやっていけませんよね。それと同じことです。

──では、そんなプロゲーマーの収入はどのくらいなんですか?

梅崎:ちゃんと職業として食べていける人は、格闘ゲームの人たちも含めると、おそらく50人くらいではないでしょうか。海外でバリバリに活躍している数人のトッププレイヤーは別として、「LoL」の場合は、平均月収が社会人の初任給~3年目くらいです。ただ、2014年は高卒の初任給にも達していなかったので、その伸び率も考慮してとらえてほしいですね。

■海外の企業はすでに日本のe-Sportsを狙っている

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──一方、海外では年収が億を超えるプレイヤーも誕生するなど、プロゲーマーが「子どもたちの夢の職業」になりつつあります。海外と日本のe-Sportsをめぐる環境は、何が違うのでしょう?

梅崎:もっとも大きいのは、スポンサーの数と質です。海外はe-Sportsがマーケットとして成り立っているので、企業としても、お金を投資した分の見返りがしっかり得られるのです。でも日本では、e-Sportsはまだまだ一部の好事家の趣味だと思われていて、スポンサーになっても、効果は薄いと見られています。だからe-Sportsをめぐる環境も充実していかないのです。

──例えば、海外では有名企業がプロゲーマーのスポンサーになったりしているのでしょうか?

梅崎:これは実際にある例ですが、ユニフォームはナイキやアディダス、飲料はレッドブル、さらにチームの移動車を日産が提供しているなんてこともあります。それだけの有名企業がスポンサーになってくれたら、資金が充実するだけじゃなく、単純にe-Sportsの社会的なイメージも良くなりますよね。僕らは日本も、そういう風に変えていきたいのです。

──実際にDetonatioN FocusMeにそういうオファーが来ていますか?

梅崎:海外の企業ですね。もうすぐ発表できると思いますが、ある有名ブランドからサポートの声がかかっています。それが正式に決まったら、日本でもe-Sportsを見る目がガラッと変わると思いますよ。

もちろん、日本の有名企業にもスポンサーを検討してほしいのですが、日本ではe-Sportsに限らず、そのジャンルが話題になってからでないと乗り出してくれません。一方、海外の企業は世界各国の盛り上がりを見ていて、日本のe-Sports市場もこれから絶対に伸びていくと確信しています。

スマートフォンやタブレット端末が普及して、パソコンの需要が年々減少していますよね。でも、なぜか、ゲーム用の高性能PCの売り上げは伸びているんです。つまり、日本でもオンラインゲームの市場は確実に広がってきている。だから海外の企業は、日本のe-Sportsがブルーオーシャンである今のうちに抑えておきたいわけです。

──海外の企業は日本のe-Sportsに何を期待しているのでしょう?

梅崎:企業の方と話していて感じるのは、若者との接点ですね。今の若者はお金を使わないと言われていますが、日々若い世代と接している僕からすると、彼らは浪費をしないだけで、好きなものや金額に納得できるものだったら、けっこう高くてもポンとお金を払います。ゲーム用のパソコンだって十数万円する。でも売れている。そういう若者たちと接点を持ちたいと考えているのだと思います。

──梅崎さんの目標とはなんですか?

梅崎:DetonatioN Gamingの代表として、このチームを世界大会の決勝トーナメントの大舞台に立たせることです。優勝とまでは言いません。数万人の大観衆の前で、日本人のチームがプレーを見せる。それだけでも、日本のe-Sportsが世界に追いついたということの証明になります。そうすることで、次の世代が胸を張って「職業はプロゲーマーです」と名乗れる環境を作ってあげたいのです。

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
インタビュー撮影/小島マサヒロ
画像提供/DetonatioN Gaming

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