今野:当社広報も頑張っているのですが、ベンチャー企業なのでテレビCMは出稿できませんし、仮にCMが出せたとしても、認知から購買までにタイムラグがありますから、それは投資の方が先行して経営を圧迫するリスクとなります。なかなかそこは踏み出せません。

14110402_1また、プロモーション活動においても、こちらで選り好みはできませんし、ビジネス紙にとり上げられてもリーチできる範囲はある程度偏っていきます。普段スクーターに乗っているお客さまに、ダイレクトに訴求することは実に難しいと思っています。

おそらくですが、大手メーカーさんが参入したときに、初めて電動バイクの認知が高まり、そのメリットへの理解が深まると思います。弊社の活動がきっかけになって、大手さんも含めた競争が起きてほしいですし、その中でチカラを発揮していきたいと思います。

──バイク市場が停滞し、特に都心部では駐車できるスペースも減ってきているなど、市場環境もよくないと思うのですが、御社はガソリンバイクに乗っている人を狙うのか、バイクに乗っていなかった新規のお客さまを獲得していくのか、どちらでしょうか。

今野:こういう問いにロジカルに答えすぎると、社長に「そこは、ベンチャーパワーで拡大するんだ」と怒られるのですが……(笑)。弊社では「コミューター」という通勤バイク(原付)を作っています。原付バイクに乗るモチベーションは「楽で便利」。ですが、1986年のヘルメット着用義務化で、気楽に乗れるものというところからハードルが上がり、一旦市場が落ちてきてました。その後女性ユーザーは、電動自転車の方が、ヘルメットも着用せず、気楽に安心してお子さまを運ぶことができるということで、原付の市場がさらに下がっていると認識しています。

一方、原付二種(排気量の50ccを超えるもの)については、少し伸びています。いわゆる景気が悪くなってきて、一家に2台あった車を1台売って、バイク通勤にシフトされたのではないかと。40代以上のお父さんは、若い時に中型免許を取得されている方が多く、新たに免許を取得する必要なく原付二種にも乗ることができます。

整理をしますと、原付(通勤バイク)は電動自転車にシフトし、車は原付二種にシフトしています。一方で最近ヤマハさんから前2輪、後ろ1輪の新しい形のバイクが出たのですが、あれば新規市場を生み出していると思います。
その新しいバイクはCMの効果もあり、お台場で披露イベントを行ったら来場者の約5割の方が免許を持っていなかったそうです。これは驚異的なことだと思います。

現在の当社の認知度からすると、まず着目すべきはビジネス市場のリプレースだと思っています。たとえば宅配ビジネスが伸びていることにあわせて、業務向けバイクの市場も伸びていると考えているためです。

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業務向けバイクの悩みの1つは騒音です。宅配店舗が住宅街にあるケースが多く、バイクの出入りが多くなるほど騒音問題は無視できません。従来の業務向け電動バイクのネックは1回の充電で走れる距離が短いことだったのですが、当社の新商品は1回充電して150キロ走れますので、そのネックは乗り越えられると考えています。
ここは確実に需要がある市場だと思います。

また、一般向けの電動バイクは、通勤通学にコストの面でも適していますし、iPhoneをつなげて走行データの記録などの情報をクラウドサーバーに上げることができるような新製品もありますので、そういったところからも興味を持っていただけると嬉しいです。

<クレジット>
取材・文/岩田慎一