石田健一さん

石田健一さん

社会人になると、営業や会議、交渉にプレゼン、社内のイベントから飲み会まで、ありとあらゆる場面で「もっとしゃべり上手だったらな……」とため息をつく場面も少なくないのではないでしょうか。

話し方のスキルをあげるために、さまざまな本や講座がある中で、その逆張りをいく『しゃべらない仕事術』なる書籍が注目されています。その著者である石田健一さんは、大手メーカーでトップクラスの営業成績を納めたり、さまざまなヒット広告を世に送り出した華やかな経歴の持ち主ですが、意外なことに、ご自身はどちらかというと内向的で、しゃべるのも苦手で、仕事がうまくいかない経験から大事なことを学んだと言います。

「しゃべらない」でうまくいく「仕事術」とは何なのか、その発想の原点と、「しゃべらない」仕事術の基本について、お話をうかがいました。

■しゃべっても説明しても伝わらなかったのはなぜか

──石田さんは、以前いらした大手消費財メーカーで、営業や広告宣伝のお仕事を担当されていたそうですね。いずれも「しゃべり」が得意でないとうまくいかないイメージがありますが。

石田:広告の仕事や宣伝の仕事柄、会議やプレゼンが多く、しゃべる機会が多いんですよね。私はどちらかというと内向的な性格で、会議やプレゼンといった場で自分の意図がうまく伝わらない、思うように話ができない、ということが多々ありました。

なかでも一番ショックだったのは、大型新製品の担当になったとき、意気込んで何週間も前から準備してプレゼンに臨んだのですが、1時間くらい説明をしたところで、役員から発せられた最初の一言が、「そもそもこの企画の意味はなんだね」でした。これにはガクッと崩れ落ちそうになりました。

──そのプレゼンの時は、どんな準備をされていたんですか。

石田:プレゼンの流れやストーリーなどを何日も前から考え、時間内に収まるように準備をしていました。よくプレゼンのノウハウ本に書いてあるような、基本的なことです。ただ、やはり今思えば、企画への強い想いがあるからこそ、伝える情報量も多かったし、「本当に言いたいこと」が何か、整理ができていませんでした。

自分の話したいことが優先で、要は聞く側の立場を考えられていない。人は基本的に、話を聞くより自分のことを話したい、伝えたいものです。聞く側は本当に必要な情報以外、受け取らないとまず認識すべきなのです。

■しゃべりが下手でも、できることはたくさんある

石田:結局、一生懸命しゃべって、いろいろ説明をしたものが伝わらない。そこでふと立ち返ったときに「そんなにしゃべることが必要なのか?」と思ったのです。それまでは、できるだけ多くしゃべろうとか、説明しようとしていました。これだけ努力して話しても、「一体この企画は何だ」ということになると、これは自分のやり方自体考え直したほうがいい、と思うようになりました。

──その挫折経験が、ものごとを違う視点からとらえるきっかけになった、と。

石田:そうですね。コミュニケーションでいうと、「しゃべること」はたとえ自分が苦手だとしても重要なことには変わりません。会社の先輩や社外の方も含めていろいろなアドバイスをもらうことで、それまで自分がやってきた、一生懸命しゃべって伝えるのとは違うやり方があるということに気付きました。

あと、もともと人を観察するのが好きなほうで、うまくしゃべれなくても、人をよく観察して何かに気づくとか、別の角度からやりようがあるのかな、とは考えていました。

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