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もはやビジネスでもスマホは欠かせないツール。しかし、ひっきりなしにメールは届き、LINEの未読もどんどん溜まってキリキリ舞い……。これで公私ともに充実した30代を送れるだろうか? 話題のニュースアプリ「ニューズピックス」編集長の佐々木紀彦さんに、あえて聞いてみました。

■簡単に手に入らない情報にこそ、価値がある

――佐々木さんはもともと、老舗メディアである「東洋経済オンライン」編集長でしたが、この7月に新興メディアである「ニューズピックス」へと移籍したばかりです。この転職はメディア業界で大きな話題になりました。

佐々木:自分の転職がニュースになるなんて、「なんで!?」くらいに思っていますよ(笑)。ただ、それぐらい既存メディアから新興メディアへの人材の移籍がなかったんですよね。これを機に、挑戦する人が既存メディアからどんどん増えていってほしいと思います。

――ニューズピックスについて、まだ知らない人のために説明をお願いできますか。

佐々木:簡潔にいうと、経済ニュース専門のキュレーションアプリです。特徴は業界の専門家や友人をツイッターのようにフォローできること。例えばライフネット生命の出口会長をフォローすれば、出口会長が面白いと感じたニュースがピックアップされてきます。そのフォローしている人によって、ユーザーのタイムラインにはキュレーションされたニュースと、その記事に対するさまざまなコメントが表示されるわけです。

――まさにイメージはツイッターのニュースアプリ版ですね。

佐々木:ええ。そして、その記事を自分もピックすることで、今度は自分のフォロワーにコメント付きで共有できる。現在は60社ほどの経済メディアから記事を提供してもらっているほか、各ユーザーが独自にピックしてきたニュースを読むことができるようになっています。あとは有料記事もあるのですが、こちらはこれからコンテンツを充実させていく予定です。

――ライフネット生命の契約者は主に30代が多いのですが、佐々木さんから見て、今の30代はどんな情報を求めていると感じていますか?

佐々木:ひとつあるのは、世界の最先端の情報だと思います。その一例として、『クーリエ・ジャポン』という雑誌が部数を伸ばしているんです。これは海外の新聞や雑誌の記事を翻訳してまとめている媒体で、出版不況の時代なのに売れている。今どきの読者は日本の情報だけじゃなく、『じゃあ海外と比べたらどうなんだ?』というところまで考えたいと思っていることの表れですよね。これは私たちにとっても方向性を示すヒントになっています。

――簡単に手に入らない情報だからこそ、お金を払って読みたいと思っている?

佐々木:そう思います。その意味では、ネットに無料のニュースがあふれている今だからこそ、本当の意味での「教養」が求められ始めているとも感じますね。ネットで効率良く情報を摂取して、軽いビジネス書を読んでいるだけでは通用しないし、本当にクリエイティブなものは作れないではないか――。そんな疑問を抱いている人が、若い世代にも増えている。