写真左:岩瀬大輔(ライフネット生命保険 社長)、写真右:川村元気(映画プロデューサー、小説家)

写真左:岩瀬大輔(ライフネット生命保険 社長)、写真右:川村元気(映画プロデューサー、小説家)

みんなが知りたいお金の話、知っておくべきお金の話。岩瀬大輔が「お金のプロフェッショナル」の方々に、直接インタビューしてまいります。今回は、最新小説『億男』が話題の映画プロデューサーであり小説家の、川村元気さんに「お金と幸せ」についてお話を伺いました。(前編はこちら)

■人はなぜ宇宙へ行くのか――最大サイズから調べる発見方法

岩瀬:『億男』には、偉人たちの金言がたくさん散りばめられています。その中で特に好きな言葉はありますか?

川村:どれもいい言葉なんですけど、実はピンと来たものはありませんでした。例えばチャップリンの「人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ」という言葉も、なかなかいいセリフだとは思うんですが、言葉そのものより、チャップリンがどんな気持ちでこんなことを言ったのかということに興味が湧きました。
調べてみると、チャップリンは若い頃に9億円の契約金を手にして大金持ちになっていたんですね。そんな彼がどうして「ほんの少しのお金さ」という言葉を残したのか。その部分を小説というかたちで突き詰めていったんです。他の金言も同じで、言葉そのものより、それを言った人間の背景を知ることのほうが興味深いし、勉強になるんじゃないかと思って、小説の中に取り入れてみました。

岩瀬:億単位の大金を得ることって、ほとんどの読者が実感できないことですよね。あえてそういう設定の物語にしたのはなぜですか?

川村:未知のことを知るには、話のサイズを大きくするのが早いと思ったんです。なぜ人間は宇宙へ行くのか。それは宇宙を知りたいからではなく、我々がなぜ生まれてきたのかを知りたいからですよね。お金のことも、サイズの大きい話を調べれば、本質がわかるような気がしたんです。

貧乏も大金持ちも経験もない人がいくら「お金より心の豊かさのほうが大事だ」と言っても、きれいごとにしかならない。両方を経験しているからこそ、本当のお金の意味が見えてくると思います。みんな、お金のない状態、もっと欲しい状態というのは知っているけれど、「ものすごくある状態」というのは知らないですよね。120人に取材したのも、その人たちの目にこの世界がどう見えているのかを知りたかったからです。

■お金のことを知りたいなら、まずは重さとサイズを調べよ

15011301_2

岩瀬:『億男』で、お金が無限にあったら何が欲しいか、何をしたいか、書かされるシーンがありますよね。もしあれと同じことをやらされたら、僕は困りますね。「男にしては珍しい」なんて言われるくらい物欲がなくて、車も腕時計も持っていないんです。

川村:僕も物欲はあまりないですね。よく「持ち物を見せてください」っていう雑誌の取材依頼が来ますけど、全部断っています。人に見せるようなものを持っていないので(笑)。

岩瀬:お金との向き合い方や物欲が人によって大きく違うのは、何が関係していると思いますか?

川村:これというのを挙げるのは難しいけど、親の影響は間違いなくあるでしょうね。

岩瀬:確かに。僕は中二の時に5,000円くらいのジーンズが欲しかったんですが、親に「高いから駄目」と言われたのがお金の原体験になっています。でもそれが今どう影響しているのかはよくわからない。川村さんにはどんな原体験がありますか?

川村:いろんな人から「お金を触ったら手を洗いなさい」と言われたことですね。あれって過剰だと思いません? 電車の手すりのほうがよっぽど汚いのに、みんな必要以上にお金を汚いものだと思い込んでいるような気がします。
日本の文化の中に、「お金は怖いもの、汚いもの」といったネガティブなイメージが植え付けられているから、お金のことを話題にするのが苦手だという人が多いんだと思います。僕自身、お金の話題はすごく苦手ですし。

岩瀬:苦手なことをあえて小説にしたんですね。

川村:『世界から猫が消えたなら』は、死というものが苦手だから書いたものだし、『億男』はお金が苦手だから書いたものです。

岩瀬:それはどうしてですか?

(次ページ)一万円札をみんなの前で破いてわかったこと