ライフネット生命の「ライフネットジャーナル オンライン」とサイボウズの「サイボウズ式」とのコラボレーションにより、ライフネット生命保険とサイボウズで育児休暇を取得した男性社員4名による座談会が開催されました。
(前編「正直、男性が育児で休むって不安ですか?──ライフネット生命×サイボウズ式座談会」はこちら)
座談会の後編となる今回は、育休中の生活スタイル、さらには、育休を経験したことで変わったことについて、語り合っていただきました。
(サイボウズ式で配信中の「すみません、育休前は『早く帰れて、楽でいいじゃん』って思ってました」も合わせてご覧ください)
■育休とは“休み”なのか?
サイボウズ・華山:私は3人の子どもがいるのですが、2人目までは育休を取得していなかったんですね。だから1人目、2人目が生まれてからも、朝は7時前に家を出て、8時30分には会社に着く。帰りもけっこう遅くて、21時、22時が多かった。仕事がバタバタしていたのもあったのですが、基本的に家事はすべて妻にお任せでした。
土日はカレンダー通り休みだったので、子どもの遊び相手をしたり、お風呂に入れたり、着替えをさせたり、そういったことはしていましたが、1日の流れにおける家事のルーティンについては、全然わかっていない状態だったんです。
1人目のときは妻が里帰りしての出産だったので、実はちょっと家事の大変さを舐めていました。でも2人目のときにすごく苦労して、それで3人目が生まれるとなったときに、これはもう自分も手伝わないと無理だと。妻に頼んで、家事の引継書を作ってもらいました。
──引継書ですか?
華山:妻が入院したら、2人の子どもの面倒を私だけで見なければならないので、1日の家事の流れを教えてもらったんです。まず赤ちゃんの泣き声で起こされて、朝ごはん作って、洗濯を始めて、すると次の子が起きだしてきて……と一連の流れを体験入学みたいに教えてもらいながら、育休前に実際に体験してみました。そうしたら、朝の4時に起こされてから、夜の22時くらいまで本当にノンストップで家事をしなければならないんですよ。
妻がすごいなと思ったのは、朝起きたらまず赤ちゃんのミルクを作るためにお湯を沸かして、今度は余ったお湯で洗濯用の洗剤を泡立てて……と、やることすべてムダがない。そういったことを「体験入学」では教えてもらいました。
ライフネット・肥田:いや、すごいですね。うちはまだ1人目だからか、正直、育休中はけっこう暇でした。むしろ、何か手伝わせてよって自分から言い出すくらいでした。
ライフネット・加納:基本、男性は赤ちゃんの世話ってあんまりできないと思うんですよね。おっぱいもないし、泣き止ませるのだって、ママに比べたらそんなに得意じゃない。だから僕らができるのは、赤ちゃんの世話以外の周辺、つまり家事ですよね。
肥田:僕は1か月半も育休を取得したので、家事をやる気満々だったんですよ。でも、その張り切り方の方向がちょっと間違っていたんです。
例えば、お風呂の時間が17時だとすると、15時くらいから時間をかけてお風呂を掃除したくなるタイプなんですが、張り切るところはそこじゃないと言われるわけです。家事にはスケジュールというものがあるんだから、そこでムダなやる気を出すんじゃないと。だから、僕は自分が思った以上に時間ができちゃったんですね。気合を入れた割には必要とされていないというか。
──その間は何をしていたんですか?
肥田:なので、仕事のメールをけっこう返していました。
加納:そんな感じはしました。肥田さんのメールは長かったもん(笑)。
肥田:ただ、それは育休が必要ないって意味ではなくて。やっぱり第一子だから、僕も初めての経験ばかりですけど、奥さんはもっと不安なわけです。実際にあったケンカで、赤ちゃんが泣いていたんですね……でも僕には理由がわからなかった。それで奥さんに任せようとしたら、「私もわからないわよ」と。
お互い初めてなんだから、わからないことだらけなんですよ。互いにわからないなりに、一緒に乗り越えていくっていうのが大切だったのかなと思います。育休を取得していなければ、そういった子育ての悩みの共有は無理ですからね。
サイボウズ・木地谷:私は2週間休んだんですけど、里帰り出産だったので、ずっと奥さんの実家にいるわけです。ご飯はお義母さんが作ってくれるし、家事もやってくれる。だから私も肥田さんと同じで、ほとんど手伝うことがなかった。でも、まさにおっしゃるように、奥さんが不安を感じているときに側にいることが重要ですよね。
■家に仕事を持ち込む派? 持ち込まない派?
──みなさんが育休を取得したことで、その後の生活スタイルに変化はありましたか?
加納:時間の管理をかなり意識するようになりましたね。というのも、私は育休中に上の男の子の面倒を見るのが担当になっていたんです。正直、僕はすごく育休を満喫していました。上の子を保育園に送ったら、空いた時間はジョギングをしたり、雑誌を読んだりして、保育園が終わる時間になったらお迎えに行く。せっかく私が休みなんだからと、2人で遠くに遊びに行ったりもしていたんですよ。
そんな生活を送っていたら、上の子も楽しかったみたいで、2週間が経って育休が終わったら、「今日は帰ってこないの?」という電話がバンバン掛かってくるようになったんです。それでちゃんと定時に仕事を終わらせて、約束した時間に帰らなくちゃ、という意識が芽生えたんです。残業は、明らかに育休から戻って減りましたからね。そのぐらい時間に対する意識が高まりました。
肥田:僕は1か月半の育休のおかげで、奥さんから「もっと働きなさい」じゃないですが、「本当に困ったときは呼ぶけど、会社にこれだけ良くしてもらったんだから、ちゃんと返してきなさい」と言われています。やっぱり、出産直後の期間を一緒にいられたのは、お互いにとって代えがたい経験だったんです。
あとは家に帰って部屋の中がきれいだと、感謝するようになりました。僕らが帰ったときにきれいな状態を維持していくって、すごく大変なことですよね。前は洗濯物が干したままだったりすると、「畳んでおけよ」って思ったりもしたんですが、今はむしろ、「自分がやっておきます」と思える。家事のどこで力尽きたとか、家の状況を見ただけでわかるようになったので、「おつかれさまです」と思えるようになりました。
華山:私はとにかく、「家に仕事を持ち込まない」と徹底するようになりました。でも、それは「終わるまで帰らない」という意味ではなくて、どれだけ頑張っても1日ではやり切れない状況もあるので、だったら終わりの時間をきっちり決めて切り上げる。そういう意識に変わりました。
3人目の育休のときに、子ども2人分の育児と家事をするだけでもどれだけ大変かわかったんですよ。妻の大変さがわかるから、仕事で疲れたとは言わないようにしようと。私は自転車で帰るんですけど、そこで「あー、疲れた!」とか一人言いながらすごいスピードで走ってます(笑)。でも家に帰ったら「ただいま!」と切り替えて、弱音は吐かない。
肥田:すごく徹底していますね(笑)。
華山:そうですね。意識して徹底しています。だって、3人分の育児を想像するだけで、自分に毎日できるだろうかって思いますから。
木地谷:僕はたまに仕事を持ち込んでしまうことがあります。前は家でやらないという意識が強くて、けっこうズルズルと帰宅時間が遅くなったりしていました。でも今は効率化を意識して、本当に今やらないといけないのは何か、考えてこなすようになりましたね。それでも終わらない時は切り上げて、残った分は家で子どもが寝たあとにやる。そうはいっても、家に仕事があふれているわけではないですけどね。
──徹底した効率化という意味では、華山さんと同じですね。
木地谷:そうですね。あと、以前は「仕事が終わらないから遅くなる」と就業時間を過ぎて連絡することも多かったのですが、そういうのはできるだけなくしていこうと思っていて。仕方なく遅くなってしまうときも、お昼や夕方の時間帯など早めに伝えるようにしています。
急に「遅くなる」と言って、奥さんを困らせないように考えるのは、自分でも変わったところかなと思いますね。
■全員一致で育休取得を薦めます!
──実際に育休を取得されてどうですか? ほかの人にも薦めますか?
加納:必ず薦めますね。それはなんでかというと、やっぱり生まれたばかりの子どもとしっかり触れ合う機会って、人生でそうないじゃないですか。それだけ限られた経験と仕事のどっちを選びますかと言われたら、子どもを選んだほうがいいなと思いますね。
それに仕事としても、私は今年で40歳なんですが、後輩に任せる年齢になってくるわけです。育休を取得しようと思ったら、必然的に引き継ぎをしなければならないので、「仕事の任せ方」を覚えるいい機会にもなるんですよ。
肥田:加納さんの発言に加えると、育休は平日の日中に会社の外で何が起こっているのか知ることができる機会でもありますよね。僕らが働きながら見る世の中といったら、オフィスと営業先のことしかわからない。でも、育休期間は「平日の日中って、世の中はこうやって動いているんだ」とわかって、すごく新鮮だったんです。
僕は業務上、世の中の変化を常に見ていなければならない。それにライフネット生命のお客さまって、主に30代、40代の子育て世代なわけです。でも、いざ自分が子育て世代になっても、父親側からの視点しか持てなかったら、お客さまのことは極端な話半分しかわからない。例えば、平日にお母さんたちは何をしているのか、スーパーにお買い物に行ったときにはみなさんのリアルな金銭感覚ってどうなのか、そういったことを知ることができたのは仕事をしていくうえでも助かりました。今でも、チラシアプリは毎日みるクセが残っていて、「卵1パック100円」とか特売情報みるとテンションが上がりますよ。
華山:私も薦めます。育児に積極的に参加することが前提ですが、育休を取ることで家族に対して危機感を持てるようになりますね。もし妻が倒れてしまったら、子どもたちはどうなるか、自分には何ができるのか、そういったことを具体的に想像できるようになるんです。今も考えただけで冷や汗が出ますけど、「じゃあ、どうする? 何を変えていかなければならない?」など、でもきっと大丈夫だろう、おいおいでいいかと後回しにしがちな、万が一の事態に早めに手を打てるようになると思います。結果的に家族を助けることにもなるので、育休取得を良い機会にしてほしいですね。
木地谷:みなさんと同じ答えになってしまいますけど、僕も薦めます。生まれてすぐの子どもと関わる経験って、本当に大切ですよ。私は2週間で育休を終えたのですが、奥さんはもう2週間里帰りしていました。それで2週間ぶりに子どもと会ったら、自分の育児に対するブランクをすごく感じたんです。
2週間前までけっこうスムーズにお風呂に入れられていたのに、今はちょっと自分でも動くようになったし、なんだか体つきも違う。そんな些細なことですが、これは生まれたばかりの頃に関わっていなかったら、多分、気がつかなかったんですよ。子どもの日々の成長に育児の手が追いつかない不安とかも、わからなかったと思います。
そうすると、ただでさえ奥さんとは子どもと関わっている時間が違うのに、さらに関われなくなってしまう。たった2週間でも生まれたばかりの頃にしっかり関われていたから、その流れで今も育児に参加できているというのは感じますね。
■子育て中の女性に「申し訳ない」
──自身が育休を取得したことで、同じ職場で妊娠していたり、子育て中だったりする方への接し方は変わりました?
華山:実際に子育てに参加したからこそなんですけど、妊娠がわかったあとに、その人がどうしたいのかってことを尊重できるようになりました。ギリギリまで働きたい人もいるでしょうし、早く休みたい、あるいは、働き方を変えたいという人もいる。「妊娠したからこういう風にしてください」じゃなくて、その人の選択を尊重してどうチームでカバーしていくか。それが大切だと思っています。
肥田:僕は産休から明けて、子育てしながら働いている方へのイメージがすごく変わりました。早退するのだって遊びに行くわけじゃなくて、お子さんを迎えに行って、そのあと家事をして、洗濯や掃除もして……って、やることがたくさんあるから早退するわけですよね。帰っても休めるわけじゃなく、むしろもっと大変なことが待っている。子育てしながら働いている方って、帰っても働いているようなものだと思うんです。
だから送り出す立場の僕も、「がんばってください」というか、「こっちでやれることは任せてください。だから、いってらっしゃい!」みたいな気持ちに変わってきました。そこはもう、一気に見る目が変わりましたね。むしろ、今までわかっていなくて申し訳ないと思います。働いている女性に「早く帰れていいな」とか思っている、以前の僕のような人を変えるためには、絶対に育休取得が広がったほうがいいと思いますね。
<クレジット>
取材・文/ライフネットジャーナル オンライン編集部
撮影/村上悦子