写真左:出口治明(ライフネット生命保険 会長)、右:平本清さん(株式会社21相談役)

写真左:出口治明(ライフネット生命保険 会長)、右:平本清さん(株式会社21相談役)

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ノルマは一切なし。会社立ち上げ時の方針は「内部留保も経常利益もゼロ*。」社長は4年で交代する任期制を敷き、利益はすべて社員と商品の値下げに還元して、給与・賞与はすべて公開する「丸見え経営」を貫いてきたメガネ21。設立者のひとりであり現・相談役の平本清さんと、日本で初めて「保険料の内訳」の公開に踏み切ったライフネット生命の出口治明との対談は、最初から最後まで「意気投合」「共感共鳴」の連続でした。商売の醍醐味、会社経営の極意について2人の会話が弾みます。

*現在は経営の安定化のため、内部留保を確保する経営を行っています。詳しくはこちらをあわせてご覧ください。

■一番大事なのはお客さまの満足

出口:平本さんのご著書、拝読しました。共鳴するところが多く、非常に勉強になりましたが、平本さんが会社を作られた動機が気になりました。

平本:ちょっと自慢話になりますが、高卒で入った前の会社で出世しまして、役員にもなり、これでもう将来安泰だと思っていたら、いわゆるお家騒動に巻き込まれたんです。解雇されたメンバー4人で作ったのがメガネ21。結局、前の会社の社員500人のうち、80人がいまの会社に集まりました。

出口:500人中、80人とはすごいですね。

平本:一度は、社員がばらばらになりましたが、最後はついてきてくれた。ただ、来てもらう(入社の)ときには電話をかけて、お金を持ってきてもらった。会社にお金がなかったので、資本金持参です(笑)。

出口:社員がお金も身体も持ってきたわけですね(笑)。

平本:そう。みなで会社を作りました。でも違和感はなかったですね。前の会社は、おやじさんが小さな眼鏡屋から始めましたが、松下幸之助さんにならって社員に株を持たせてくれた。だから、みな、自分の会社だという意識でがんばって会社を伸ばした。いま思えば、ほとんどブラック企業でしたが、給料はたくさんくれたからブラックじゃなかった(笑)。

出口:働いてそれを上回る給料をだせば、ある意味ブラックじゃないとも言えますね。精神論だけじゃ無理。がんばって働いて、それに見合った報いがあればモチベーションが働きます。

平本:メガネ21ではお客さんを大切にする、ということを徹底してやってきました。お客さんが高いメガネを前に躊躇していたら、「ご家族と相談してから決めた方がいいですよ」とお勧めする。一番大事なのは、お客さんの満足。自分の満足とか上司に褒めてもらう満足じゃない。

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出口:よくわかります。ライフネット生命もまだまだ小さい会社ですが、コンタクトセンターとウェブサイトは、HDI-Japanが主催する「HDI格付けベンチマーク(生命保険業界)」で5年連続、最高評価の3つ星を獲得しています。我々の店は電話とウェブですからね。お客さま目線でわかりやすいと評価されたことは一番の勲章です。

平本:お客さんの満足に、ネットも対面も関係ない。一緒ですよね。

出口:まったく同じです。しかし、ついついお客さまではなく、上司を見たり、いままでの業界のしきたりを見たりしてしまう(笑)。

平本:メガネ業界もそうですね。売上を上げる目的が自分の目先の評価を上げることになっていてはいけない。お客さんからすれば安い方がいいに決まってますから。お客さんが他店で購入されたメガネを持ってきて「フレームが壊れたから、使っているレンズを新しいフレームに入れてほしい」と言われても、「このフレーム、無料で直しますよ」と言っています。するとお客さんはびっくりされますね。「買った店では直らないと言われた」と。そして、ものすごく喜ばれる。そのお客さんは買った店には二度と行かないし、うちの店には、家族を紹介してくれます。ノルマでやったらいい商売はできません。

出口:良い商売というのは、目先で考えてはダメ。商売の基本は、哲学や、理念だと思います。

■「9割引より安い4割引」で客が戻った

出口:メガネ21では、商品はすべて定価の4割引を最低ラインとして販売されていますね。ライフネット生命も10年前に保険料を半分にして安心して赤ちゃんを産んでほしいという気持ちで設立しました。

平本:上場している同業の大手が「9割引」という宣伝を始めたのに対抗しました。本当に9割引で売ると、仕入れはゼロでもつぶれますから、なんでそんな嘘をつくのかと思いましたが、日本人はお祭が好きですからね。9割引と聞くとつい買ってしまうのは目に見えている。
こっちも祭をしなかったらつぶれると思って、「9割引より安い4割引」にしました(笑)。これだったらやっていけると計算して出した数字です。うちの会社の優秀な大学を出たスタッフは「数式が合わない」と言って反対していましたが、これでお客さんが戻りました。

出口:商売って、知恵だけじゃなくて人間の心理も読み込まないといけないですね。

平本:とんちですね。

出口:そうユーモアもいる。だから難しいけれど、面白い。商売は、ロジックも知恵もユーモアも対応方法もシステムとしてトータルで考えないといけません。新入社員までの全社員の人事評価や給料を、全て社内ウェブ上にオープンに掲示されていますが、この方針に反対はありませんでしたか?

平本:実施する前に「経理のスタッフは手間がなくなるし、全員給与は上がるよ」と言ったらみな賛成しました。もっとも、先ほど申し上げた優秀な大学を出たスタッフからは給与やボーナスをオープンにしたら、プライバシーの侵害になるんじゃないかと反対されましたが(笑)。

出口:ライフネット生命も保険料の内訳をすべて公開しています。きちんとお客さまに説明できるので、オープンにするほうがわかりやすい。

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平本:ただ、オープンにはしていますが、「間違っていたら直すので、自己申告でも他者申告でもいいから言ってほしい」と伝えています。「いつも正しい」評価は不可能だと思うんですよ。

出口:ここまで考えているんだから、もし間違っていたら言ってほしいという会社のスタンスが素敵ですね。

■会社を持続していくためのよいシステムとは?

出口:ところで、平本さんはどんな会社が良い会社だと思われますか?

平本:個人の価値観を否定しない会社がいいですね。

出口:同感です。価値観の押し付けほどいやなものはない。

平本:相性が合わない上司がずっと固定だったら困るので、うちの会社はギブアップOKとしています。本部が社員か上司のどちらを動かしたらいいかを考えます。

出口:お互いのためにそのほうがいいですね。

平本:前に、ギブアップが3回続いた人がいましたが、「今度ギブアップしたら、あなたがみんなと合わないんじゃないかと定義されることになりますよ」と言ったら静かになった(笑)。

出口:僕にとっての良い会社は、ワクワクして楽しい会社。朝起きたときに会社に行くのに気が重いというのはイヤですね。元気で明るく楽しくわくわくするのが最低条件です。

平本:僕は、つらいことがあったら言ってもらい、マイナスの部分を減らすようにしています。イヤなことをひとつずつなくしていく。違法だとわかっていても、有給はぜんぶ買取っているし、休んだら減額ですね。労働基準監督署から指摘されても、話をしたら問題はなかった。一般のメガネ店よりも本給は高くしているし、研修会や残業もなければ、朝会もやらないです。

出口:会社を持続していくために作られた全てのシステムが素晴らしい。組織を持続するために一番必要なことは何だと思われますか?

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平本:会社を個人のものにしないこと。分散するのが一番です。

出口:同感です。個人商店にせず、分散させることはとても大事ですね。優秀な人でも病気をすることがある。どのような太い木でも根っこがひとつだと枯れたら終わりですが、根が枝分かれして無数にあれば半分になっても大丈夫ですからね。ひとりの人間で代を背負うという風に考えないで、機能を分けた方がいい。Aの機能はA君、Bの機能はB君、という具合に。

平本:内部だけじゃなく、銀行や内装業者も仲間にするのがいいと思います(笑)。

出口:なるほど。そのためにも御社では人事も経営指標も全部オープンにしているんですね。そうやって、パワーが特定の個人に集中しないよう分散しつつ、次の世代を育てている。

平本:ええ。親ができるのは、一生懸命子育てすることだけ。あとは子どもが自分で選択して進んでいく。経営も同じです。時間とともに世の中は変わる。それに合わせて経営方針も変わるのが当たり前なんです。

出口:本当にその通りだと思います。世の中の変化に合わせて経営方針は変わっていく。仕事を分散させて後継者を育て、臨機応変に経営していくのが一番ですね。

<プロフィール>
平本清(ひらもと・きよし)
1950年、広島県呉市生まれ。高校卒業後、広島最大手のメガネチェーンに入社し、役員に上り詰めるも社長交代劇に巻き込まれ、86年に解雇される。同じように解雇された同僚4人で「メガネ21」を設立。内部留保はゼロ、給与・賞与をすべて公開、社長は4年の任期制、ノルマなし、経営情報の社員への開示、社員からの直接金融、ウェブ上での全社員参加の経営会議など独自の経営手法を取り入れ、グループ売上84億円、100店舗以上を展開する企業に育て上げる。現・相談役。著書に、『丸見え経営』(ソフトバンククリエイティブ)、『会社にお金を残さない!』(大和書房)など。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/三田村蕗子
撮影/横田達也

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