写真左:芝山さゆりさん(株式会社インパクト代表取締役)、右:出口治明(ライフネット生命保険 会長)

独自の教育論で人財教育や女性の起業支援を手掛け、母親を応援するサイト「お母さんの心得」を運営しながら、低燃費住宅の会社の専務としても活動。セミナーで全国を飛び回る──。株式会社インパクト(2016年12月に株式会社WELLNESTに社名変更)の代表取締役・芝山さゆりさんのパワーの源はどこにあるのでしょう。比類のないトーク力を備えた芝山さんとライフネット生命会長の出口治明との楽しい対談が始まります。

■お母さんごと教育するとは?

出口:芝山さんは以前、ピアノの先生をされていたとお聞きしました。

芝山:そうなんです。小学校4年の時に自分には絶対音感があることが分かり、それで中学2年でピアノの教員免許を取りました。

出口:それはすごいですね。

芝山:たまたま自分の可能性を引き上げてくれるピアノの先生に出会えたのが良かったと思います。でも、ピアニストは毎日5時間のレッスンは当たり前でレッスンに耐える自信がなかったのでピアニストになる夢を諦めました。
そうしたら、父に「その次の目標は?」と言われたので、子どもに音楽を教えようと思い、そのまま音楽専科の先生になったんです。障がい児や多動症のお子さんをみていました。座って話が聞けないので、「ドレミファソ」で立って、「ソファミレド」で座ってもらうという具合に、音楽を使って、音と自分の体の動きを合わせられるようにしたんです。

出口:素晴らしい授業ですね。

芝山:お母さんたちともとても仲良くなりました。でも、人気が出すぎて、一部のお母さんから「自分の子供も育てた事ないくせに」とやっかまれることもありましたね(笑)。でもそれに対して納得する部分もありました。それが辞めた理由の一つですが、いつか自分の子育てをしたら教育の世界に戻ってこようと思いました。そして自分の子育ての経験をしてみてわかったのは、お母さんの教育の必要性でした。当時、厄介だと思っていた言葉でも、それがあったから今の考えがあるのだと思って、今では感謝しています。

出口:親も含めて教育するのは世界では常識です。お話をお聞きしていると、芝山さんはご自分で独自の教育論を構築されていたように思いますね。体を動かすことで学んでいくというか。

芝山:音を聞いて歌を歌うとみんな笑顔になる事がわかったんです。それで私は音楽を通した意識改革をさせようと思いました。人財教育でも、その人のリズムやモノサシを作って整えてあげる事が必要だと思っています。食事や運動、睡眠で体を整える事や、スケジューリングなどの自己管理が仕事の土台になるからです。

出口:どんな事を学んでそのような独自の考えに至ったのですか?

芝山:幼稚園を最初に作ったモンテッソーリ*のメソッドを全部頭にたたきこみました。気になった文献は必ず調べるようにしています。

*イタリア最初の女性医学博士であるモンテッソーリが保育施設での監督・指導を元に生まれた「モンテッソーリ教育法」のこと(日本モンテッソーリ教育総合研究所のウェブより)

出口:自分の頭で考えて自分の言葉で自分の意見を言うのが教育の目的のすべてですね。
人の意見はヒントにはなりますが、自分で考え、自分の言葉にして初めて消化できるんですよ。芝山さんはそういう素地があるから、お母さんがたも惹かれたんだと思います。


芝山:ありがとうございます。人の既成概念を取ってあげて、その人の潜在意識に眠った可能性を引き出して育てるのは楽しいです。そこには老若男女、どんな環境で育っていても、誰もが持っている可能性があります。

■頭のある人間は知恵を、体の強い人間は体を、お金のある人間はお金を使え

出口:芝山さんは、低燃費住宅を販売されている会社の専務をつとめられていますよね。これはどういうご縁だったんですか?

芝山:結婚して仕事もやめて、下の子が1才、上の子が幼稚園ぐらいになったとき、主人の仕事先の方から「あなたは営業できるから、家に籠るのはもったいない」と言われたんですね。そこでちょうど普及し始めた携帯電話の代理店を始めました。

ちょうど、携帯電話が無料で配られた時代で、私は販売インセンティブという言葉も知らなかったんですが、知り合いに営業にいったらどんどん加入してくれた(笑)。最初の月で何十万。マックスで月収7桁はあったかな。税理士さんからこれだけ稼ぐなら会社にした方がいいと言われて設立したのが今の会社です。

出口:商売の感覚も抜群なんですね。

芝山:タイミングがよかったんでしょうね。そのうち、インターネット代理店の業務もスタートさせて、全国に400店舗ぐらい展開しました。よく言われるのが、「芝山さんって品の良い優しそうな人に見えるが、しゃべると関西弁でノリがすごいですね」と(笑)。ギャップに驚かれるようです。私は講演でも何でもまず「私、主婦なんですよ」と始めて、そこから関西弁でセミナーさせてもらっています。「君、面白いね」とも言われて、それが縁で色々な方との出会いが増えていきました。


出口:その中のお一人が、現在の会社の社長さんですか?

芝山:はい。1,500人ぐらい入る会場で7人のスピーカーが呼ばれるというイベントがあったんですが、そこに私も呼ばれたときが初対面。「今度、会社を立ち上げたいから役員に入って」と誘われました。

出口:すぐ応じられたんですか?

芝山:いえ。2年間待ってもらいました。私は住宅の仕事の経験がないし、何ができるのかわからなかったからです。でもよく話を聞いてみると、人財教育をして欲しいという事でした。代表はいつか職人さんのマイスターの学校を作りたいと言っていて、私も学校をつくるのが夢だったので、そこは大きく共感できました。

マイスター学校のことや、代表の住宅の話を聞いてみると、その時に初めて住宅の既成概念を壊されました。ひとつは、木と、石と、土、紙の自然素材でできていて、地球環境に配慮した住宅である事。もうひとつは、ローンを組んで見栄を張って建てるのではなく、ドイツの100年持つ住宅から学んだ資産になる住宅だった事です。

代表は素晴らしい技術を開発しているのに、人にPRする力がなくて弱気になっていたので、「これを売ればいいんですね」とどんどん仕事を広げていきました。だから1期目からずっと黒字。事業が成功するポイントは3つだと思うんです。自己確信ができるか、会社の将来性はあるか、お客様を喜ばせることができるか。その目利きができていれば事業はうまくいきます。

出口:今日は、経営についても教えてもらっている気がします。

芝山:でも、3.11が起きたときにはコンサル事業の売上が大きく減りました。そこで、次は、人が来てくれるビジネスを目指そうと方針を切り替えました。

私が19才の時、幼稚園の教育実習で「頭のある人間は知恵を、体の強い人間は体を、お金のある人間はお金を使え。」と教えられましたが、当時は意味がわかりませんでした。

でも、38歳で代表に出会い住宅業界を知り、その言葉の本当の意味を理解できるようになりましたね。
代表には営業力があって、頭も技術もあった。知恵と強い体はあったんですね。そしてゼネコン出身で、豊富な人脈を持ち業界事情に通じた人材が投資をしてくれました。私はそれをベースに信用を作ることができた。その3人で低燃費住宅事業を起こして、初年度は役員3名、営業2人、設計2人、工務3人の合計10名で45棟売りました。2016年は100棟、今年は200棟は行きそうです。

出口:お見事です。

■お母さんが豊かになって輝ける社会をめざそう

出口:では住宅業界で働く中で、なぜお母さんを応援するサイト「お母さんの心得」を開設されたのですか?

芝山さんの会社が運営する「お母さんの心得」サイト。公式Facebookはすでに「いいね」の数が16万を超えている

芝山:巣作りはお母さんの役目ですよね。自分で子育てを経験してみて、必要だと思ったのがお母さんの教育でしたので、365日休まず働いているお母さんに元気になって欲しいと思ったのがきっかけです。現在販売している住宅について考えてもらうのであれば、お母さん向けにお話ししないと意味がないと思いました。低燃費住宅でしたら、電気やガスの光熱費が年間8万円で済むんです。そこで、お母さんには住宅が呼吸していることを理解してもらおうと考えました。電気の使用量が減って持続可能な社会になれば、日本は明るくなりますからね。お母さんが輝いて豊かになって子どもを育てましょうと、セミナー活動を全国行脚してやっています。

出口:スタートから1年10か月で、Facebookの「いいね」が10万に達したとお聞きしました。すごい数字ですね。

芝山:いま2年たちまして、16万人になりました。今は社員も全員で広げてくれています。

出口:ライフネットは開業8年でご契約者は14万人です。僕もずいぶん講演をしていますが、やはり、人に会うのは大事ですね。

芝山:そうですね。ただ、セミナーに100人来て頂いても、本当に伝播するのは10人、あとは共感止まりだと感じています。なぜそれが分かるのかといえば、アンケートの回答が通り一遍だからです。半年後に再度セミナーをやって、アンケートを見たところまた同じことが書いてある。でも、私がFacebookをやっているとお話をしたら、私のアカウントを見つけてメッセージを送ってくれる。そういう方々の行動力はすごいです。この方たちには直接メールを送っています。

出口:僕もツイッターやFacebookでメッセージが来たら必ず個人で返すようにしています。

芝山:講演のプロフィールに「先生」という肩書を一切入れません。先生ではなくお母さんの心でセミナーをするんです。私も以前は皆さんと同じ所に座っていたんですよと伝えたい。

出口:自分たちの仲間と思ってもらうことが大事なんですね。

芝山:元教師とかピアノの先生というと、お母さんの心に届かない。人の悩みの多くは、他人との比較から始まります。だから、私が直接、お母さんの方に入っていきたいと思っています。私はファンを作りたいんですね。セミナーや講演の2時間は一期一会だと思っています。

出口:本当ですね。講演は一期一会ですよ。いやあ、今日はとても勉強になりました(笑)。

<プロフィール>
芝山さゆり(しばやま・さゆり)
2008年に株式会社インパクトを設立し、独自の教育論でグルーブリーダーの育成から新人教育まで幅広く担当している。全国のお母さんを支援するwebサイト「お母さんの心得」も運営。低燃費住宅や住宅営業セミナー、コンサルティング会社のマングローブ・クリエーション株式会社の専務取締役としても精力的に活動している。
2016年12月に株式会社インパクトは株式会社WELLNESTに社名変更。社名の由来はWELL「良い」とNEST「巣」、WELNESS「健康であり続ける」を合わせた造語で、健康的な良い巣作りを応援したいという想いが込められている。2016年12月には同グループ会社の株式会社低燃費住宅改め、株式会社WELLNEST HOMEの代表取締役に就任。

<クレジット>
取材・撮影/ライフネットジャーナル オンライン編集部
文/三田村蕗子

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