少子高齢化の進展で現役世代の公的年金はさらに厳しくなることが予想されています。そんな中、賢く私的年金を準備できる個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」がこの1月から変わりました。どこが変わったのか、メリットやデメリットは何かをファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんに聞いてみました。

■老後を支えてくれる「3つのお金」を知っておこう

──今年1月から個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を利用できる人が増えましたが、どのような制度でしょうか。

竹川:iDeCoのことをご説明する前に、まず知っておいていただきたいのは、老後のお金についてです。私たちの老後を支えてくれるお金には①公的年金、②退職給付制度、③私的年金の3つがあります。

ひとつ目の公的年金は、国から受け取る年金です。日本では20歳以上60歳未満の人はすべて国民年金に加入することになっていて、老後に年金(老齢基礎年金)を受け取ることができます。会社員や公務員はさらに厚生年金にも加入しているので、老後にはその分(老齢厚生年金)も上乗せして受け取ることができます。

2つ目は会社から受け取るお金です。具体的には「退職一時金」や「企業年金」です。お給料の後払いといった性格のもので、個々の会社が独自に運営しています。
企業年金には確定給付型と確定拠出型があります。前者は従業員が受けとる金額が確定しているタイプ。会社が掛け金を出して、運用も会社が行い従業員に支払います。後者は会社が出す掛け金の金額が決まっていて、運用は従業員(加入者)が行うタイプ。運用成績によって受け取る額が変わってきます。

3つ目は自分で準備する「私的年金」です。自分でお金を出して、老後に向けて年金資金を作っていきます。

以前の日本は公的年金や企業の退職給付制度が手厚く、この2つが老後の生活の大きな柱になっていました。ところが少子高齢化の進展などで、この2つが以前ほど強力な柱とは言えなくなっています。そこで重要になっているのが私的年金です。大企業に勤める会社員に比べて公的年金や企業年金の少ない中小企業の社員や自営業の人はなおさらです。

──私的年金を効率よく準備するにはどうしたらよいのでしょうか。

竹川:もっとも優先して利用したいのが「iDeCo」です。これまで「iDeCo」に加入できる人は自営業の人や勤務先に企業年金のない人に限定されていましたが、今年(2017年1月)から範囲が広がりました。公務員や専業主婦も含めて、60歳未満であれば、ほぼすべての現役世代が加入できるようになっています。

■「iDeCo」のメリット・デメリットは?

──「iDeCo」とは、どのような制度ですか。

竹川:加入を希望する人は、利用する金融機関(運営管理機関)を自分で選んで口座を開設します。そして、その金融機関が取り扱う預金や投資信託などの中から運用する商品を選択します。あとは、毎月の掛け金で自動的に選んだ商品を買い付けて運用を行い、将来受け取る年金を作っていきます。

「iDeCo」の最大のメリットは税制上の優遇があることです。とくに、①掛け金を払うとき、②運用している間、それぞれの段階で優遇が受けられます。

──具体的には、どのような優遇が受けられますか。

竹川:まず、掛金を払うと税金が安くなります。掛金は毎月5,000円以上1,000円単位で設定でき、上限額は立場によって異なります。たとえば、自営業なら月額6万8,000円、企業年金のない会社員は月額2万3,000円が上限です。支払った掛け金は、全額を所得から差し引くことができます。その結果、その年の所得税や、翌年の住民税が安くなります。たとえば課税所得300万円の会社員(扶養家族無しの場合)が年間27万3,000円の掛け金を支払うと、所得税と住民税の支払いが1年間で5万5,200円安くなります。10年なら55万2,000円、20年なら110万4,000円にもなりますから大きいですね。

また、投資信託などでお金を運用して利益が出ると、利益に対して約20%の税金が差し引かれます。「iDeCo」ではこの税金がかかりません(*)。本来、税金として差し引かれるはずのお金まで再投資できるので、効率的に資産を増やすことができます。

仮に毎月2万3,000円を30年間積み立てると、元本は828万円です。運用収益が年3%だったとして一般の金融商品で運用すると、20%の源泉税が徴収されるので30年後の元本と運用益の合計は約1,209万円です。一方、税金の差し引かれない「iDeCo」なら、約1,340万円。その差は約131万円にもなります。

最後に、受け取るときです。「iDeCo」で積み立てた資金は将来、一時金や年金で受け取ることができます。受取時は非課税ではありませんが、一時金で受け取る場合には、受け取った金額から「退職所得控除」を差しくことができますし、年金で受け取る場合には「公的年金等控除」を差し引くことができます。とくに一時金で受け取るときの「退職所得控除」は手厚いので、全額を非課税で受け取れる人もいます。ただし、退職一時金やほかの企業年金が手厚い人は税金がかかることもあるので、受取時期や受け取り方法などは検討する必要があります。

*積立金の全額に、一律1.173%の特別法人税が課税される「特別法人税の課税」は平成28年12月に発表された「平成29年度税制大綱」において、平成31年度末までの特別法人税の凍結が予定されていることが公表されている

──通常の金融商品で運用をするよりも「iDeCo」で運用をした方が税制面で断然有利なのですね。逆にデメリットはありますか。

竹川:「iDeCo」で積み立てたお金は、原則、60歳まで引き出せません。これをデメリットと考える人もいますが、私はメリットのひとつだと思います。なぜなら、人間は弱いので、運用がうまくいって利益が出ているときや生活が少しキツイ場面では「一部解約して使ってしまおうか」という気持ちになることもあります。頻繁に引き出してしまうと「老後資金がたまらなかった」ということになりかねません。途中で引き出せないのは老後資金をつくる意味でむしろプラスと考えたほうがいいですね。

掛金は1年に1度変更することもできます。家計に余裕があるときは頑張って上限までかける、教育費負担の大きい時期には掛金を減らすという具合に、ライフステージに応じて柔軟に設計することもできます。

『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』竹川美奈子著(ダイヤモンド社)

 

<プロフィール>
竹川美奈子(たけかわ・みなこ)
LIFE MAP,LLC代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト。出版社、新聞社勤務を経て独立。2000年ファイナンシャル・プランナー資格取得。金融商品・サービスについて投資家目線に立った情報発信を行う。投資信託やETFをはじめ、最近ではiDeCo(イデコ)に関するセミナーの講師も数多く務めている。『はじめての「投資信託」入門』『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』(ともにダイヤモンド社)、『臆病な人でもうまくいく投資法』(プレジデント社)など著書多数。

<クレジット>
文/向山勇

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