高橋佳吾さん(写真中央。JAMMIN合同会社 創業メンバーと)

「子どもの教育、貧困、災害といった、多くの人が共感する社会問題には寄付金が集まりやすいのですが、ひきこもりやホームレスのような賛否両論ある問題は、ほとんど寄付が集まりません。僕らは、どんな社会問題も等しく重要だと考えています」と語る、チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」のCOO高橋佳吾さん。インタビュー後編では、JAMMINの中心にある理念について、高橋さんにお話をうかがいました。(前回から読む)

■「困っている人」と「解決に向けて活動する人」が存在する活動は、分け隔てなく応援していきたい

 ──JAMMINさんは、毎週さまざまなNPOにきちんとヒアリングをしてTシャツのデザインを考えているわけですが、その工程はすごく大変ではないですか?

JAMMINのサイトでは、毎週コラボするNPOについて取材記事が掲載される

高橋:そもそもアパレルを売るために始めたわけではないので、NPOさんの話を聞くのは本当に「やりたいこと」に近い活動。だから全然苦ではないんです。「そういう社会課題があるのか!」とか「そのアイデア面白い!」とか、毎週驚きの連続で勉強になることばかりです。 デザイナーの日高も、毎回異なった社会課題というテーマを与えられて、自分の頭の中でその活動をアパレルデザインに変換して楽しんでやってくれています。

──コラボするNPOを選ぶ時、どのようなポイントに注意しているんですか?

高橋:基本的に、素晴らしい活動をされているNPOさんだったらどこでもいいと思っています。僕らのスタンスとしては、例えば飢餓に苦しむアフリカの子どもたちを救うNPOさんも、ひきこもりの子どもを持つ親の会を主催しているNPOさん、どちらもすごいと思うんですよね。

団体の規模にも、ジャンルにも、そこに優劣はありません。困っている人がいて、それを解決しようとしているなら、みんな応援したい活動です。

チャリティーTシャツは注文を受けて1枚ずつ自社工場で印刷するため、在庫リスクを抱えずに済む

一般的な企業のCSRは、国際協力や子どもといった「分かりやすい」テーマに集中しやすい傾向があります。そしてそうしたテーマの方が「売れる」「共感される」のも事実です。でも実際には、世の中がどんどん複雑になってきて、知られていない問題や生まれたばかりの社会課題がまだたくさんあります。

僕らの活動は、カッコいいアイテムを作るだけではなくて、社会課題や解決に向けて活動するNPOを、ひとりでも多くの人に伝えられるようにすることも、ひとつの大事な目的だと思っています。

例えば、若者の性教育を行う「ピルコン」というNPOさんがあります。若い子たちは「性」とか「セックス」について知れるのは、アダルトビデオくらいしかありません。学校の先生が教えてくれるわけでもない。そのまま大きくなってしまいます。

その点、ピルコンさんの性教育は「エロ」でない方法で、女の子の体を守るための知識を教えています。ピルコンさんとコラボした時、中絶経験がある方がSNSでシェアしてくれるといった反応もあり、テーマとして取り上げた甲斐があったなと考えています。

──活動に優劣をつけない、選別しないからこそ、社会の多様性をちゃんと反映できるんでしょうね。

高橋:そうですね。先ほどCSRの話を出しましたが、NPOさんから話を聞くと企業のCSR担当者が強く賛同してくれても、上層部から反対されるケースも少ないそうです。例えば、「ニートや引きこもりなんて自分のせいじゃないか。なぜ会社が支援しなければならないんだ」というように。決してそれだけではなく、引きこもりになる原因には「病気」や「怪我」もあり、そこから戻れないのが現実なんですけどね。

これは、日本の分野別の個人寄付額をまとめたグラフです。教育・研究、国際協力、緊急災害支援などといった多くの人が共感する社会問題には、100億円単位の寄付が集まっています。一般企業のCSRは、ブランディングやイメージ戦略が重要ですから、こういった問題を扱う大手のNGOさんやNPOさんに協賛する傾向があるのは当然だと思います。

一方、一般的に賛否両論がある社会課題である権利擁護、雇用促進など(ホームレス、ひきこもり、障害者の性支援等)は、ほとんど寄付がありません。 JAMMINは、そういった理解されにくい問題にも積極的にスポットを当てて、いわば自己責任、という「思考停止」になってしまっている状態を少しでも揺り動かせればと思っています。

■小さなNPOを世の中に広く伝えたとき、自分たちの活動に意味があると思った

──今までコラボしてきたNPOの中で、最も印象深いものは?

たったひとり、娘を守りたいとNPOを始めたお父さんに、共感の輪が広がった

高橋:NPO法人レット症候群支援機構さんです。体の機能が徐々に衰え、最終的に目を動かすことしかできなくなってしまう、原因不明の難病です。なぜか女の子にしか発症しないそうです。

代表の娘さんがレット症候群にかかってしまい、パパである谷岡さんが中心となり、レット症候群の原因究明を通じて、同じ病に苦しむ子どもたちを助けようと活動されています。

活動の規模はそんなに大きくはなかったのですが、活動を知った時、私たちは彼の活動をぜひ多くの人に知っていただきたいと思い、コラボをお願いしました。すると、「こんな病気があったなんて知らなかった」「パパがんばって!」とSNSで反響を呼び、寄付金額も、世界で知られた著名なNGOさんと同じくらい集まりました。これによって、自分たちのやっていることはすごく意味のあることだったんだなという手応えができました。

団体規模の大小を問わず、1週間という短い期間を設け、素晴らしい活動を紹介することは、ニーズがあると思いましたし、今後もこのような事例を増やしていきたいと考えています。

■子どもが生まれてから「子ども過ごす未来」をリアルにイメージするようになった

──プライベートなお話になりますが、高橋さんはお子さんが生まれてから、お仕事に対する考え方に変化はありましたか?

高橋:最初は子どもを作る予定もなくて、夫婦二人で京都へ移住しようとしていたのですが、2013年末には妊娠がわかりました。そして、ECサイトを始めたのが2014年4月、ひとり目の子供が生まれたのが2014年7月だったので、当時はそれなりに大変でした。食べていけるかどうかも分からなかったですし、今も単身赴任中なので義理の父・母に迷惑をかけています。

子どもが生まれる前からずっと「生き甲斐」を感じられるような仕事をしたいと思っていました。例えば途上国の人が感染症のリスクを減らせるような井戸を掘って、村の人に感謝されて、その報酬で暮らしていける。そんな仕事をしてみたいと思っています。

しかし、いざ子どもが生まれると、自分のことよりも、「この子が大人になった時に、日本はどうなっているのだろう」と未来のことを考えるようになりました。うちには娘が2人いるのですが、「娘たちが社会に出る時に、女性が働きやすい世の中になっていれば暮らしやすいだろうな」と思ったり。

そういうリアルなイメージをするようになって、NPOさんの活動に、今まで以上にシンパシーを感じるようになりましたし、新しい視点・視野が身についたなという感覚があります。

──お子さんが生まれてから、リスクや備えを意識することはありますか?

高橋:とにかく健康で過ごすということですね。期初に事業計画を立てる時も「健康第一!」という話をした記憶があります。基本的にJAMMINのメンバーは、ほとんど残業しないようにしています。相方の西田、デザイナーの日高、ライターの山本、そして私と4人という少ない人数でやっている以上、お客さんに迷惑をかけないようにすることが大事です。

だから、なるべく無理をしない。週に一度は工程会議をして、全員のスケジュールをオンラインのカレンダーで共有して、必要な仕事を就業時間内で終わるような段取りを決めてから仕事に取りかかるように意識しています。もし、今後会社が大きくなったとしても、このスタンスは変えないと思います。

ただ、どうしても自分でコントロールできるものとできないものがあります。例えば、事故などは基本的にコントロールできないものです。そういうリスクをカバーするために保険があると心強い。僕も、子どもが生まれてから生命保険に入りましたし。

■NPOの成功も、ビジネスの成功も、本質は同じ

──さまざまなNPOを取材していく中で、学んだことはありますか?

高橋:一番思うのは、NPOの経営もビジネスと同じだということです。民間企業でもNPOでも限られた人数や資金を使って、目的を達成することに本質的な違いはありません。ただ、僕らの世代はテーマが社会的なもの、社会問題に向いているだけだと思っています。

社会課題のテーマにもよるのですが、寄付をしていただいて、現地の活動に使うというものがモデルとして多かった。ただ、今はNPOがお客さんを見つけサービスを提供し、その対価を受けて成長する、という事業型のNPOさんも増えています。そういう意味では、NPOとベンチャー企業とソーシャルビジネスの垣根は今、ほとんどなくなってきているのではないかと思います。

──最後に、今後の目標は?

Tシャツだけでなく、普段から毎日使えるマグカップなども販売中

高橋:僕らは「毎週100万円の寄付を集める」という目標を目指すと同時に、ファッションブランドとして一人前になっていくことも実現していきたいと考えています。今は「チャリティーTシャツをやっている“ちょっと変わった”ネットショップ」と認識されていると思いますが、次のフェーズでは、チャリティー抜きにしてファッションブランドとして見ていただけるようなモノ作り・ブランディングをしていきたいと思っています。

JAMMINの規模が大きくなれば、集まる寄付も比例して増えていくので、「NPOさんの良さを伝える」という基本はぶれることなく、事業としての成長を目指します。

<プロフィール>
高橋佳吾(たかはし・けいご)
1983年名古屋生まれ。名古屋工業大学在学時に、ラッパーのJay-Zが行っていた社会貢献活動に衝撃を受け、一生の仕事にしようと決意。開発コンサルタントであるパシフィックコンサルタンツへ入社後、日本国内の上下水道計画、東アジア地域の水道開発計画に従事。会社の同期だった西田太一氏とともに、2013年JAMMINを設立。
●JAMMIN

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/森脇早絵

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