■グローバル展開も視野に。フォトサービスの今後の可能

──結婚式のあり方については、今後どうなって欲しいと考えていますか?

藤井:やっぱり、結婚って「絆を深めるもの」なのかなって思っています。2人の絆や家族の絆、友達や仲間との絆というのもありますよね。それをより濃く感じられる瞬間が結婚式だなと。でも逆に言えば、絆を感じられれば、今の結婚式の形だけでなくてもいいんじゃないか。特別だから、一生に1回のものがあってもいいし、節目節目で絆を感じられる機会があってもいいと思うんです。あり方は多様化していくと考えています。

──フォトウェディングをきっかけに、いろんな人生の節目を写真に残すということを、イメージとしてお持ちだと思うんですが、藤井さんが「人生の節目を大事にしたほうがいいんじゃないか」と思うようになったきっかけっていうのは、何かありますか?

藤井:「こうしたいな」と思った時にそれができたり、「こうしたいな」って思うきっかけ作りをしたいという思いが元々の考えとしてありました。選択肢を広げる、価値観を広げるということに重きを置いていたんです。たまたま、リクルート時代にゼクシィに配属されて、ずっとウェディング業界に携わってきたので、結婚という人生の節目となるイベントに対して、選択肢がもっと増えていけばいいなと思うようになりました。

──選択肢を増やしたいという考えは、リクルートで働く前からあったんですか? それとも働いていくうちにできていったんですか?

藤井:働く前からありました。中学の時に海外に住んでいた経験が根本的なところにあって。自分の価値観が広がったのは、たまたま海外にいたからだけど、そういう機会がまたあったらいいなって思っていたりとか。偶然与えられた環境ではなく、「そうしたい」と思った時に、それができる選択肢を増やしていきたいなと、漠然と思っていました。

──中学生の頃から持っていた考えを、大学生、社会人になり、実現していく中で、改めて喜びを感じる瞬間とかはありましたか?

藤井:ウェディングとかアジアっていうのは、自分の経験の中で「点」としてずっとあったんですが、その「点」が「線」で繋がって、今のサービスが生まれたと思っています。それは色々なご縁、人と人との繋がりのおかげが大きい。だから、人や新たな価値観との出会いは大切にしたいし、出会えた時にはやっぱり喜びを感じますね。

──今後、ユーザーに対してどのようにフォトウェディングをアプローチしていきたいと思っていますか?

藤井:やっぱり、自分たちのプラットフォームを、わかりやすく、使いやすいものにしないといけないなと思っています。ウェディングで良い写真を撮りたいと思った時に、うちのサービスを想起してもらえるように。プロダクト作りが最初にあって、その上でどんな人に何を伝えて、どのように知ってもらうきっかけをつくっていくのか。地道なPRももちろんやっていきたいですね。

──さらにその先には何か考えていますか?

藤井:結婚式だけでなく、プロのフォトグラファーさんに大事な節目に撮影してもらうということを、広めていきたいと思っています。例えば、母の日にお母さんと一緒に家族写真、とか。お気に入りのフォトグラファーさんを見つけるというスタイルが、日本ではメジャーではなかったと思うんですが、やってみるとすごく良い経験になると思うので、普及したら素敵だなと思います。

あとは、グローバルに通用できるサービスにしていきたいとも思っていて。今回はウェディング写真っていうところから入っているのが、ユニークポイントだと思っています。それを、世界中のどこにいても、写真を撮りたいと思った時に、現地のフォトグラファーをすぐ予約できるような形にしていきたいです。日本だけじゃなく、日本に来た外国人だけでもなくて、世界中の人たちに使ってもらえるサービスを目指したいですね。

──本当に、どこでも。来た人にも、行った人にも繋げられるように、ということですね。

藤井:写真だと、そこがやりやすいなと思っているんですよ。結婚式に限ってしまうと、国とか文化の違いで、壁もあると思うんですけど。特にアジア圏でいうと写真の撮影って、そんなに国の隔たりがないというか。みんな良い写真を撮りたいっていうのが、一番のモチベーションで共通しているから、プラットフォームとしてはグローバルに展開しやすいんじゃないかと思っています。

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自身のアジアでの経験をもとに、日本でフォトサービスの事業を立ち上げ、世界中への展開を考えている藤井さん。日本におけるフォトウェディング、ひいては写真文化がどのように変化していくのか。今後の藤井さんの活躍に注目です。

<プロフィール>
藤井悠夏(ふじい・ゆか)
シリア生まれ、日本育ち。中学時代はドバイ在住。2006年株式会社リクルートに入社。ゼクシィ営業部で2007年に年間MVPを受賞し、2010年に退職。その後ベトナムに渡り、現地法人にてベトナム人向けウェディングポータルサイトの立ち上げ事業責任者を務める。事業譲渡後、日系ブライダル企業の事業立ち上げ支援のために2013年にシンガポールへ移住。ブライダル関連のコンサルティングのほか、日本でウェディングフォトの撮影を希望するシンガポール人に日本の提携企業を紹介するサービスを行う。2014年10月、日本に帰国。株式会社Famarryを創業。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン編集部
文/志村優衣