私たちが支払っている社会保険料や税金が、年々増え続けていることを知っていますか?
財務省が公表している「租税負担率」と「社会保障負担率」を合計した「国民負担率」を見ると、昭和45年は「24.3%」、平成27年は「43.4%」と、私たちの負担率はここ数十年で約1.8倍に増えていることがわかります。※国民負担率(対国民所得比)の推移(出典:財務省)
高い社会保険料を支払っているだけで、使ったことがなかったり、そもそも社会保険のしくみをよく知らないために、もらえるはずの給付をもらえないなど、損をしている可能性もあります。
社会保険について概要を知ることで、賢く活用できるようにしたいですね。このコラムでは、その社会保険の「基本のキ」をご紹介したいと思います。
■そもそも社会保険制度とは?
社会保険とは、病気などで医療機関にかかったときに使用する「健康保険」や、老後生活のための「公的年金」などがあります。
職業や雇用形態によって、制度が異なりますので、ご自身の職業に関連する社会保険を確認してみてください。
会社員 | 会社員 | 会社員の配偶者 (被扶養者) |
自営業 | パート・ アルバイト |
健康保険 | 協会けんぽ 健康保険組合 |
協会けんぽ 健康保険組合 (保険料なし) |
国民健康保険 | 国民健康保険 ※1 |
介護保険 | 介護保険 (40歳以上) |
介護保険 (40歳以上、 保険料なし) |
介護保険 (40歳以上) |
介護保険 (40歳以上) |
年金保険 | 国民年金 厚生年金 |
国民年金 (保険料なし) |
国民年金 | 国民年金 ※1 |
雇用保険 | 雇用保険 | なし | なし | 雇用保険 ※1 |
労災保険 | 労災保険 | なし | なし | 労災保険 |
※1 2016年10月からパート・アルバイトなどの短時間労働者も一定の条件により協会けんぽまたは健康保険組合および厚生年金保険の被保険者となります。
※2 一定の要件に該当した場合、パート・アルバイト労働者について雇用保険が適用されます。
■健康保険は病気やケガの保障だけではありません!
病院にいくと健康保険証の提出を求められるので、健康保険制度は病気やケガのみと思っている方が多いのではないでしょうか。
実は、病院や薬局以外でも使える制度があることをご存じですか?
<傷病手当金>
会社員の方であれば、病気やケガのために4日以上会社を休業し会社から十分な報酬が受けられないとき、1日につき標準報酬日額の3分の2相当の額が最長1年6か月支給されます。
※会社員、パート・アルバイトのみ
<出産育児一時金>
被保険者およびその被扶養者が出産したときに1児につき42万円が支給されます。
<出産手当金>
被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかったとき、出産の日以前42日から出産の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2相当の額が支給されます。
※会社員、パートアルバイトのみ
<埋葬料>
被保険者が業務外の事由により亡くなったとき、亡くなった被保険者により生計を維持されて、埋葬を行う方に「埋葬料」として5万円が支給されます。
このように、健康保険制度には病気やケガ以外にも支給されるものがあります。
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なお、これらの制度は加入している保険制度にもよりますが、原則ご自身で申請しないと支給されません、忘れずに申請しましょう。
■公的年金は老後の生活費だけではありません!
厚生年金保険および国民年金は老後の生活費のためだけに、保険料を支払っているわけではありません。
若い人でも突然の事故などにより、障害状態になったときの保障や、亡くなったときに遺族が受けとれる保障があります。
公的年金の給付は次の3種類です。
<老齢給付>
65 歳以降、国民年金から「老齢基礎年金」を受け取ることができます。一般に「年金」というと、この「老齢基礎年金」をさすことがほとんどです。受け取る年金額は、保険料を納めた期間に応じて変わりますが、20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた場合、平成28年4月分からの給付は満額で780,100円を受け取ることができます。
また、厚生年金に加入したことがある方は、「老齢厚生年金」も受け取ることができます。
厚生年金は、収入に応じて受け取る年金額が変わります。
<障害給付>
病気やケガで障害が残ったときは、年齢に関係なく、国民年金から「障害基礎年金」を受け取ることができます。厚生年金に加入している場合は「障害厚生年金」が上乗せされます。なお、障害基礎年金は障害状態やお子さまの有無や人数などによって、受け取れる年金額が変わります。
<遺族給付>
一家の働き手が亡くなったとき、子のある妻および夫は、国民年金から「遺族基礎年金」を受け取ることができます。亡くなった人が厚生年金保険に加入している場合は「遺族厚生年金」が上乗せされます。なお、遺族基礎年金は、お子さまの有無や人数、配偶者の年齢などによって受け取れる年金額が変わります。
年金制度について詳しく知りたい方は日本年金機構のホームページをご覧ください。
これらの給付は保険料を滞納していると、当然受給することができません。国民年金には、支払が困難な場合は一定期間支払を猶予してくれるたり、免除してもらえたりする制度もあります。
保険料の猶予や免除を受けていても、条件を満たすことで給付を受けることができますので、支払が困難なときでも、必ず役所等で相談するようにしてください。
<クレジット>
文/ライフネットジャーナル 編集部