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インターネット上で、エンジニア、デザイナー、ライターなど200種類近い仕事のマッチングを行っているクラウドワークス。「人の役に立ちたい」と起業に踏み切った代表取締役 兼 CEO 吉田浩一郎さんは、これからの社会におけるクラウドソーシングの役割をどのようにとらえているのでしょう。ライフネット生命の社内勉強会(2014年10月開催)での熱いお話が続きます(前回の記事はこちら)

■クラウドソーシングとはスキルのシェア

20世紀は働き方の選択肢が限られる時代でした。就職できなければフリーターになるほかなく、いったんドロップアウトしてしまえば、二度と正社員には戻れない。子育てのために仕事をやめてしまうと、再就職を志しても、あるのはパートの仕事ばかり。しかし、そうした働き方は過去のものになりつつあります。

「2015年には正社員比率が50%を切ると予想されています。こうした時代に求められているのは、育児をしながら合間にクラウドソーシングで働けるようなスタイル。また、高齢化社会ではいかに介護をするかも問われてきますから、半日だけ働くという働き方を選択できる仕組みを用意しなければならない。そう考えています」

クラウドソーシングにおいては、住んでいる場所も年齢も問われません。鍵を握るのはスキル。世界中の個人のリソースが労働力としてシェアされるようになったのです。

「クラウドソーシングとはスキルのシェアそのもの。企業は登記簿や決算などで社会的信用が担保されていますが、個人の信用を推し量るものはいまだに履歴書どまりでした。でも、クラウドソーシングの時代では、個人の実績がネット上で貯まり、客観的な社会的信用を身につけられます。例えば、『食べログ』も評価が4を超えると、美味しい店だろうと人気が集まり、予約を取りにくくなりますよね。それと同じ現象が個人においても起きている。評価が高い人は企業から引っ張りだこです」

従来、個人が大企業から仕事を受注しようとすると、「取引するために法人化してほしい」、「与信がないと個人に仕事は出せないから傘下の企業に入ってほしい」等など、さまざまな足かせがありました。しかし、クラウドソーシングではそうしたハンデはありません。個人はスキルを担保に企業から仕事を受注できるようになったのです。

■わくわくしたいという気持ちが人を動かす

クラウドソーシングは企業にも多大なメリットをもたらします。人材を従量課金で気軽に借りられるようになったからです。吉田さんはこんな例を挙げてくれました。

「海外で人気が高い日本人アーティストが、CDジャケットの制作にクラウドワークスを利用したところ、予算7万円、納期2週間の案件で、100件を超える提案がありました。これは、従来の仕組みだったら到底無理。クラウドソーシングなら、最短15分でのマッチングも不可能じゃない。スピードが早く、コストダウンにつながります」

自社では解決できない問題をクラウドソーシングを利用して、解決に導く。そんな動きは世界各地で進行しています。NASAは、火星上陸のアイデアを世界中の技術者に尋ね、GEは航空機や医療の分野で世界の800人のエンジニアと共同作業を行っています。

国内では、ベビー用品メーカーのアップリカが10年後のベビーカーのアイデアを、1590年創業の扇子とうちわの老舗・伊場仙は需要が落ちる秋冬に向けた商品のアイデアを、クラウドワークスを通じて募りました。羽田─サンフランシスコ線の新路線就航を前に、販売戦略のアイデア募集をかけたのはユナイテッド航空です。

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