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積極的に人と話すのが得意ではない、内向的な性格の人にとって、ビジネスの現場でツラいなと思う瞬間も多いもの。特に「会議や飲み会がいつまで経っても苦手だ」という人は少なくないのではないでしょうか。

書店に行けば、そんな内向的な人に向け「コミュ力をアップする!」ことを謳ったビジネス書がずらっと並んでいます。しかし、本当に内向的な性格は、ビジネスにおいて“不利”なのでしょうか? むしろ、その内向性を“強み”と捉え返すことはできないものか。

人付き合いが苦手な人に向けたコミュニケーション術を説いた書籍『飲みの席には這ってでも行け!』などの著書がある、言語学者で明治大学法学部教授の堀田秀吾さんに、「内向的な人の会話術」についてうかがいました。

■内向的な人は「優れた聞き役」を目指せ!

堀田秀吾さん

堀田秀吾さん

「意外に思うかもしれませんが、内向的な性格は決して人より損をしているわけではありません。自分自身が内向性の利点をしっかりと認識したうえで行動すれば、むしろ強みに変えていけるのです」

そう堀田さんは言います。しかし、内向的な性格に利点なんてあるのでしょうか。

「まず内向的な人は、物事を冷静に、俯瞰して見ることができます。思い付きをすぐ口にするのではなく、よく考えてから話す。だからこそ考え込んでしまって、話すタイミングを逃してしまうわけですよね。また、内向的な人の特徴として、飽きっぽくなく、ひとつの物事に集中できるタイプだとも指摘されています。

これらは内向性の良い面です。ただ問題は、周囲がその資質に気が付いてくれるか。もし効果的に周囲にアピールできれば、内向的な人は『引っ込み思案な人』から『思慮深い人』へと評価が変わり、信頼されるようになるでしょう」

必要なのは、「コミュニケーションのテクニックをいかに身につけるか」ということより、「内向性の良いところを、いかに表現していくか」だと堀田さん。そのための方法とは?

「考え方を逆転させてみましょう。話すことが苦手なら、優れた『聞き役』を目指すのです。ポイントは『笑顔』と『傾聴』です」

傾聴とは、相手の話によく耳を傾けること。人というのは基本的には「話したがり」な生き物であり、常に聞き役を求めています。内向的な人は、そこに自分の役割を見出せばいいのです。

「良い聞き役になるためには、相手に敵意がないことを示すのが第一条件。だから『笑顔』で接するのが重要なのです。そして『傾聴』については、僕は3つの『あい』が必要だと考えています。それは「相づち」、「合いの手」、「愛情」です。

相づちや合いの手については、心理学の実験で、会話を盛り上げる効果があると実証されています。ただし、『へ~』とか『ほ~』といった適当な受け答えはNGです。心がこもっていない相づちや合いの手は、相手に『こいつは俺の話をつまらないと思っているな』と受け取られてしまいます。だから話し相手への『愛情』が良い聞き役には欠かせないのです」

会話の基本は、相手に「こいつは話を本当に面白いと思って聞いてくれているんだな」といかに思わせるか。しかし、内向的な人は物事を俯瞰して見る癖があるため、しばしば“上から目線”だと批難されてしまうことがあります。

そういう誤解を避けるためにも、話し相手への関心を示すことが大切なのです。

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