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高校生の交換留学において長い歴史を持つ国際組織AFS。日本における活動を担っているのが公益財団法人AFS日本協会です。平和の実現には欠かせない「地球市民」を育成するには何が必要なのか。ホストファミリーの役割とは……。AFS日本協会の理事長・熊平美香さんとライフネット生命会長兼CEOの出口治明の熱く楽しい対談が続きます。(前編はこちら)

■ホストファミリーは完全なるボランティア

出口:いままでにAFSを通じて留学した学生の数は全体で1万9千人ぐらいだとお聞きしましたが、AFSを通じて海外から日本にやってくる留学生はどれぐらいいるんでしょうか?

熊平:およそ1万6千人です。年間400名ほど来日していますので、その数だけホストファミリーもいらっしゃいます。

出口:家庭で留学生を受け入れると、いろいろ勉強になることが多そうですね。やはりAFSで留学をしたOB、OGの方が多いんですか?

熊平:そうでもありません。むしろ少ないくらいですね。子どもを留学させたので、その後に自分たちも留学生を受け入れるようになったというご家庭もありますが、お友達からのご紹介やインターネットで情報を得た方など、留学経験がないご家庭が大半を占めています。留学に行きたかったけれど行けなかったという人もいらっしゃいますね。

出口:ホストファミリーはボランティアなんですよね?

熊平:ええ、まったくの無償で、完全なるボランティアです。お子さんと同じように、留学生を家族の一員として扱うことと、3食と寝る場所を提供することが条件です。外国語が堪能である必要はまったくありません。留学生がどんどん日本語を覚えていきますから。

■家庭の中で異質の文化に触れあう機会が生まれる

出口:留学生の食事や生活習慣、宗教など、日本人には理解しづらいことも多いとは思いますが、僕はそうした話題についてお互い踏み込んで話をした方がいいと思っています。よく、外国人に政治と宗教の話をしてはだめだと言われますが、これはとんでもない誤解です。

僕は以前、ロンドンに3年間駐在しましたが、向こうの人はこうした話題が大好き。日本の経済人は宗教とか政治の話がきちんとできない。だから外国人は日本人のレベルに会わせて、ワインや音楽の話ばかりしているんでしょう(笑)。突っ込んだ話をしないと国際理解などできません。ホストファミリーになったら、宗教や政治の話をどんどんして理解を深めた方がいいと思いますよ。

熊平:留学生とうまくいっているホストファミリーはそうですね。そこを腫れ物扱いしていると、双方にストレスが出てきます。

出口:理解できないなんてことはないんですよ。それぞれ形が違うだけ。例えば、ムスリムは断食をしますが、日本の坊さんも断食をしますしね。

熊平:ムスリムの留学生を受け入れるホストファミリーでは、お祈りの時間や場所、断食月の過ごし方などを事前に相談して、できる形ですりあわせをしながら生活しています。

出口:その方が勉強になっていいですね。僕は中国の人とも共産党の話をたくさんしますよ。向こうも平然と返してくる(笑)。

熊平:日本にいると、異質の文化に触れあう機会がなかなかないですからね。家庭の中でそれができるのがホストファミリー。いまAFSでは、異文化理解教育として研修プログラムを作っていますが、ホストファミリーにも学びの機会だととらえてもらえるようなプログラムにしていきたいと考えています。

写真左:熊平美香さん(公益財団法人AFS日本協会 理事長)、右:出口治明(ライフネット生命会長兼CEO) 出口の著書「日本の未来を考えよう」にあるデータを紐解きながら対談は続きます

写真左:熊平美香さん(公益財団法人AFS日本協会 理事長)、右:出口治明(ライフネット生命会長兼CEO)
出口の著書「日本の未来を考えよう」にあるデータを紐解きながら対談は続きます

■全家庭から留学生を出し、全家庭が留学生を受け入れる!?

出口:ホストファミリーはお子さんがいない家庭でも大丈夫そうですね。もし制約があるとすれば、留学生のための部屋など物理的な要素でしょうか。ただ、日本の家はよく「うさぎ小屋」と言われますが、マンションの平米数を見ても実は小さくないんですよ。日本の家は意外に広い。庭はそう広くないかもしれませんが、部屋自体が狭いことは決してない。単なる思い込みです。

熊平:そうですか、そのデータは意外でした。いまは共働きのホストファミリーも増えていますし、働きながら自分の子どもを育てているのであれば、留学生が一人増えてもあまり違いはないですよね。留学生も日中は学校に通っていて、部活を終えると帰宅が午後6時ぐらいになりますし。案外、忙しい親の方が段取りが良かったりしますね。日中、家にいるといろいろなことが気になってきますし、忙しくて子どもに目が届かないぐらいの方が楽かもしれません(笑)。

出口:留学生の受け入れをもっと気軽に考えた方がいいですね。

熊平:ええ。子どもが小さいときから留学生が家にいると、見えてくる世界が明らかが違ってきます。ニュースの受け止め方も変わりますね。これからの日本人は日本のことばかり考えていては、仕事を得るのも難しくなる。私としては、留学生を日本の全家庭に置きたいぐらいです(笑)。

出口:それはいいアイデアですよ。全家庭から海外で学ぶ留学生が出て、全家庭が海外からの留学生を受け入れるのが理想的です。

■こどもたちが地球市民になれば、戦争もなくなる

熊平:子どもたちが「地球市民」にならなければ、地球のいろいろな問題を解決できません。国や地域によって文化や政治が違っていても、協調できる部分があればそれを受け入れる寛容性を持ち、異質な意見に耳を傾け、自分の考えをきっちりと述べることのできる大人になってほしい。それが私たちの願いです。

出口:外国人との触れ合いは考え方の鍛錬になりますよね。「地球主義」や「地球市民」という言葉を使うと「まず日本人が先だろう」などと言い出す人がいますが、これは大いなる間違いだと。良い例がフランスとドイツですよ。2つの国は80年の間に3回、戦争を繰り返しました。ところが1963年に、フランスのドゴール大統領と西ドイツのアデナウアー首相が協議をして、エリゼ条約を結んだんですね。

これ以降、フランスとドイツの国境の村が姉妹都市になった。それもすごい数です。2,000近い村が姉妹都市になり、若者が交流するようになった。その数はドイツとフランスを合わせて800万人ですよ。ここまでいくと、ケンカがなくなり、戦争もできません。日本もこのエリゼ条約を見本にした方がいい。

熊平:AFSも同じです。終戦の2年後にアメリカで交換留学制度がスタートし、最初の交流でドイツからも留学生を呼んでいますから。

出口:そう。争いがおきないようにするには、友人をつくることが大事なんですね。

<プロフィール>
熊平美香(くまひら・みか)
1985年に青山学院大学法学部卒業。1989年にハーバード大学経営大学院でMBAを取得。金融機関金庫設備の熊平製作所・取締役経営企画室長などを務めたのち、日本マクドナルド創業者・藤田田に弟子入りし、新規事業立ち上げや人材教育の事業に携わる。AFS日本協会理事長のほか、エイテッククマヒラ代表取締役、クマヒラセキュリティ財団 代表理事、Teach For Japan 理事などもつとめ、社会的起業家育成、学校教育の格差是正、女性の起業とキャリアアップの支援など教育の幅広い分野でイノベーション活動に取り組んでいる。 2013年に『学習する組織』を形成するリーダー育成、および組織開発支援を展開するAMBITIONERS LABを設立。

<クレジット>
取材・撮影/ライフネットジャーナル オンライン編集部
文/三田村蕗子

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