写真右から3番目、田中美咲さん(一般社団法人防災ガール 代表理事)。メンバーたちと。

写真右から3番目、田中美咲さん(一般社団法人防災ガール 代表理事)。メンバーたちと。

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防災をオシャレでわかりやすく、若者の防災意識変えていく。そんな目標を掲げ、立ち上がった防災ガール。代表理事の田中美咲さんは、大勢のボランティアの機動力を駆使しながら、精力的に事業を推進しています。情報発信から商品開発、防災の基本アクションの設定、国民運動への働きかけまで、多彩なプロジェクトを同時進行する田中さんのポジティブなお話が続きます。(前編はこちら)

■普段から持ち歩きたくなる防災グッズを作ろう

──防災ガールでは具体的にどんな事業を進めていますか?

田中:ひとつは、防災に関する情報をわかりやすく発信すること。インフォグラフィックや写真を使って、楽しく理解してもらうのが狙いです。それから、防災グッズの開発ですね。これまでの防災グッズって、銀色に赤い文字が入った「非常用持ち出し袋」というように、機能性はあるけれど男性的で、身近に置きたいと思うものではないじゃないですか。タンスの奥底に隠したくなる防災グッズじゃ意味がない。もっと身近にそなえたくなる、むしろプレゼントしたくなるくらいの防災グッズを作らないとイメージが変わりません。

──最初に作った防災グッズは何ですか?

田中:最初は、高知県で、次に巨大地震が起きると津波の被害があるかもしれないということで、地元の広告代理店の方からお声掛けいただいてグッズを開発しました。帰宅困難になったときに役に立つ折り畳めるパンプスや、ヘアゴムとヘアピンといった女の子にとって必要なアイテムをポーチサイズにまとめた防災ポーチ等です。

女性の小さいバッグにもすっぽり入るおしゃれな軽量ポーチに、なんとホイッスル・ライト・ブランケット・マスク・長期保存ウェットティッシュからヘアゴム・ヘアピンまで入っている、オリジナルグッズ

女性の小さいバッグにもすっぽり入るおしゃれな軽量ポーチに、なんとホイッスル・ライト・ブランケット・マスク・長期保存ウェットティッシュからヘアゴム・ヘアピンまで入っている、オリジナルグッズ

──どれも普段から持ち歩きたくなるモノばかりですね。

田中:それが大事なんです。普段使いできないものは、緊急時にも使えないですからね。今度、あるメーカーさんと手を組んで、災害時に利用できる下着なども開発する予定なんですよ。災害時は男性の下着だとS・M・Lくらいのサイズ変化で済みますが、女性の下着の場合、サイズがそれぞれ違うんです。例えば、支援物資で自分にぴったりのものが届かなかったり、替えがないなどみな苦労するんですね。でも、そうしたことは男性にはわからないじゃないですか。そこで、ちょっと何かをプラスすることでその人の身体のサイズに合うようになる下着や、いつのまにか防災をしていたと気づくような新しいグッズを作ろうと目論んでいます。

■自分たちの力量の中で、やりながら最善を尽くす

──位置情報ゲームを活用した避難訓練も面白い試みだと思いました。これも田中さんのアイデアですか?

田中:基本的に私がアイデアをあげ、ざっくりとしたマニュアルを作り、そこにボランティアメンバーから率直なレスポンスをもらって、ばんばん直していく形です。防災ガールは全国にメンバーがいるんですが、地方に住む子からは「これはうちの地域ではできない」とか、子育て中のママから「子どもがいたら無理」のような感想をストレートにもらえるんですよ。私が企画にかける時間は30分くらいですが、こういったメンバーの声を聞いて高速で直していきます。

──スピード感がすごいです。

田中:スタートアップですから(笑)。スピード感や人を巻き込む方法はサイバーエージェントにいたころの経験が役に立っていますね。でも、ビジネスのやり方は全然違うので、私たちの力量の中で、やりながら最善を尽くすしかないと思っています。

スマートフォンで行うオンライン・位置情報ゲーム「イングレス」で、オンライン・オフライン連動の避難訓練を体感

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──お手本にしている会社はありますか?

田中:海外のスタートアップでイケてるところを参考にしたり、後は、社会起業家育成のプログラム「SUSANOO」を運営する孫泰蔵さんのお言葉にインスパイアされています。

──2016年度末までに防災ガールを通して防災のアクションを少しでも起こした人を16万にするとか、東京五輪までにはFacebookページを10万いいね!を超える、という目標も明確でいいですね。

田中:事業計画を立てても、スタートアップの場合、やっていくうちに変わっていくので、目指していて気持ちがいいもの、共感してもらえるものを掲げた方がいいと思いました。みなが理解できることを目標にした方ががんばれるし、周りも応援したくなりますよね。

■防災の基本軸を定めて、全国的なムーブメントを起こしたい

──いま進めているプロジェクトを教えてください。

田中:2015年の1年間、NTTタウンページ社と連携して、全国の防災プレーヤーの方に会いまくりました。そこでわかったのが、みなが同じようなことをしていて、昔ながらの防災の教材をいまだに使っているということ。熱量のある人が真ん中にいるけれど、若者の巻き込み方がわからず、単に共感して「そうだよね」「防災、大事だよね」という共感で終わっている。防災に関する講演会もさまざまところで実施されていますが、頭打ちになっていて、集客やPRができていません。どこもすばらしい方ばかりで、とりくみも素晴らしいのに、これでは、お金も体力も消耗する一方。なので、防災ガールで防災の基本アクションを作り、国や行政といっしょに国民運動型のプロジェクトを立ち上ようと思っています。

──それは国や行政からのオファーですか?

田中:こちらから提案にしに行きました。助成金の枠があったわけじゃなくて、直接ご連絡させていただいて、いきなり。「ちょっと聞いてほしいことがあるんですけど」とか言って。

──直談判なんですね。圧倒的な行動力です。

田中:幸い、各省庁で防災ガールのことを知ってくれている方がいらっしゃるので、「最近、こういうことをやろうとしているのですが、一緒にやりませんか」と相談して、「さらに、これとこれをやって欲しいと思っています!」と投げて帰ってきました(笑)。今のままでは、防災に取り組まれている方や組織はバラバラで、横のつながりがなく、何を基準に発信したらいいのか誰もわからない状況なんですよ。だから、「防災とは何ぞや」というものを一度決めて、国や行政からはトップダウンで、私たちNPOや民間からはボトムアップで発信するような構造が必要だと思っています。中心で基本のロゴやデザインデータを作り、どんどん全国で使ってもらい、基本アクションを推し進めるための企画や講演を各地で実施していく。基本軸が同じになれば、全国的なムーブメントになるし、知見も貯まっていくと思うんです。

■生き抜く力、それこそが「そなえ」

「撮影者が写真に写らない」ことがないよう、災害時に活躍するかもしれないドローンで集合写真を撮影

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──最後にお聞きします。田中さんにとっての「そなえ」とは何ですか?

田中:生き抜く力、でしょうか。防災だけやっても仕方がないし、これがあればいいということでもない。どんな問題があっても解決する力、乗り越える力が「そなえ」になるんだと思います。私たちは毎日、リスクとともに生きていて、いつ何が起きるかわからない。でも、解決する方法を探ろうとして、問題自体もある意味楽しめることができる人が増えてくれば、それは日本の「そなえ」にもなるんじゃないかな。

──「生き抜く力」。力強い言葉ですね。

田中:「ああ、もうダメ」とか「もう死ぬ」とか口に出せる人はまだいいと思います。気にすべきは口に出せない人たち。ダメだと思っているだけでは何も解決しません。いつか解決できると思って解決策を探し求めるとか、各ジャンルに詳しい友人を作っておくとか、そういうことがとても大事。「そなえ」というのは物理的なモノだけじゃないですよね。

──そういう人が増えれば日本も変わりそうですね。

田中:ええ。新しい社会を作っていかないと、日本は変わらない。日本を変えるために、全国共通のプラットフォームを作って、若い人の意識から変えていきたいと思います。

<プロフィール>
田中美咲(たなか・みさき)
1988年奈良生まれ、横浜育ち。立命館大学産業社会学部卒業後、株式会社サイバーエ ージェントに入社。ソーシャルゲームのプランナーとして活躍した後、福島に移住。情報による復興支援を行う公益社団法人助けあいジャパンに転職し、福島県庁や8市町村と連携した復興支援事業プロジェクトマネージャーとして現地雇用創出・事業推進に携わる。2013年3月防災ガールを設立。2015年3月に一般社団法人化を果たし、代表理事に就任。世界防災ジュニア会議(減災産業振興会主催/第3回世界防災会議パブリックフォーラム)グッド減災賞優秀賞

<クレジット>
取材・撮影/ライフネットジャーナル オンライン編集部
文/三田村蕗子

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