馬養(まがい)雅子さん(ファイナンシャル・プランナー)

年度替わりの近いこの季節、自身や家族の環境の変化から、保険の加入や見直しを検討している人も多いはず。しかし一口に「保険」といっても種類はさまざまで、それに代わる選択肢もたくさんあります。そもそも、それらがどのようなリスクに備えるものなのか、また、どのような人に必要なのか、今一度確認しておきたいところです。

そこで今回は、執筆活動でも活躍されているファイナンシャル・プランナーの馬養雅子さんに、お話をうかがいました。

■公的保障の薄いものほど民間保険の出番!

──お客さまのご状況によっても変わると思いますが、まず加入を検討すべき保険について優先順位をつけるとしたら、どのような順番になると思いますか?

馬養雅子さん(以下敬称略):結婚されてお子さんもいる方は、①死亡保険、②就業不能保険、③医療保険の順。お子さまのいないご夫婦の方は、①就業不能保険、②死亡保険、③医療保険の順になると思います。単身者の方は、死亡保険は必要ではありませんが、自分が働けなくなった場合のために就業不能保険には入っておいたほうがいいでしょうね。賃貸物件にお住まいなら、せめて家賃分だけでもと考えます。

──医療保険の優先度が低いのはなぜでしょう?

馬養:すでに公的保障が手厚いからです。医療費の自己負担は、年齢にもよりますが1割から3割。仮にその医療費が高額になった場合でも、高額療養費制度を利用することで、1か月の上限額を超えた額については後から手元に戻ってきます。保険の適用範囲内であれば一定額以上の医療費を負担することはないので、貯蓄でカバーできるという人も多いと思います。加入している健康保険によっては、自己負担がもっと低くなる場合もあります。

──死亡保険も同様のことが言えますね。

馬養:年金をちゃんと納めていれば、残された家族は遺族年金を受け取れますし、住宅ローンを組んでいる人は団信(団体信用生命保険)による保障で残りのローンが弁済されます。労災(労働災害)にはさらに手厚い保障があります。公的保障や団信などですでにカバーできている人は、ここをさらに厚くする必要はありません。

民間の保険はあくまで公的保障で足りない分をカバーするためのものだと考えておくといいでしょう。

──つまり、今の自分の状況から、公的保障のカバーが薄いものほど保険の優先順位が高くなるということですね。


馬養:そういうことになります。たとえば勤め先の健康保険に入っている人であれば、病気や怪我で就業不能状態になって勤め先から十分な給与が支払われなくなった場合でも、療養中の生活費を保障する傷病手当金を受け取ることができますが、国民健康保険にそのような手当金はありません。自営業の人は、就業不能状態になった時の手当てがないので、民間の保険でカバーしておきたいところです。

■すべての働く人に必要な「就業不能保険」で気をつけたいポイント

──就業不能状態に備える保険として、ライフネット生命では「働く人への保険2」を取り扱っています。馬養さんが考えるこの保険が特に必要な人は、自営業者や単身者ということですが、会社員の場合はどうでしょう?

馬養:前述の通り、公的保障の薄い部分なので、働いている限りは職種やライフイベントに関係なく必要な保険だと思います。そういう意味では、就職して最初に入る保険、人生で最初に入る保険といってもいいかもしれません。

──「働く人への保険2」は専業主婦の方でも入れます。

馬養:給付金の10万円が家事労働に見合う金額として妥当かどうかという議論はありそうですが、すでに公的保障の手厚い医療保険よりはこちらのほうがいいでしょうね。医療保険は、ご主人の保険でまかなえる場合もあるので、検討の際にはそこもご確認された方がよいかと思います。

──これから就業不能保険に入ろうとする場合、保障額は何を基準に考えるべきでしょうか。


馬養:自分の給料がいくらだから、ではなく、月々の保険料から考えたほうがいいと思います。この保険を給与保障と考えて、今の給与分をすべてカバーしようとすると、保険料が膨らんで家計を圧迫してしまいます。

死亡保険や医療保険に毎月2万円払っている人なら、死亡保険を減らして、その分を就業不能保険に回す。まだどの保険にも入っていないという人は、毎月の貯蓄を少し減らしてこちらに充てる。そのように、家計の支出バランスをよく考えて加入することをおすすめします。就業不能状態に備えるといっても、一方で老後資金を貯めておくことも大事です。本当に大変な障害をもったら、障害年金ももらえるので、給付金月額の設定を必要以上に高くしないことも、契約時に気をつけたいポイントのひとつといえます。

──保険期間(契約開始から満了までの期間。「働く人への保険2」では55歳から70歳の間で5年単位で設定可能)や免責期間(契約後、就業不能状態になっても給付対象にならない期間)は何を基準に考えるべきでしょうか?

馬養:保険期間については、配偶者が働けるかどうか、お子さんの教育費があと何年かかるか、といったことによっても変わってきますが、「子どもが高校を卒業するまで」「定年まで」といった節目で決めてもいいと思います。ポイントは、これが終身保険ではないということです。

就業不能といってもいつか終わりが訪れます。仕事に復帰するまでの一時的な保険と考えることもできます。免責期間は、これに代わる公的保障がない自営業者なら、少しでも早く給付が受けられる60日がいいと思います。会社に勤めている方なら180日で問題ないでしょう。そのほうが保険料も低く抑えられます。

■大事なはずの就業不能保険、もっと広がるには

──近年、各社から新しい就業不能保険が出てきましたが、このような業界の流れについてどう思われますか?

馬養:いいことだと思います。就業不能になるリスクはとても大きいにもかかわらず、これまで保険でカバーされていませんでしたが、ライフネットさんはじめ各社が就業不能保険の販売を始めたことで徐々に認知されつつあります。ただ、まだ十分に知られているとは言い難いのが現状です。

──就業不能保険の認知度が高まらないのはなぜでしょう?

馬養:一般の多くの方は、保険会社に言われて初めてリスクに気づきます。死亡や病気に対するリスクについては、これまで保険会社各社が生命保険や医療保険を扱ってきたことで認知されてきました。一方、就業不能になるリスクについては、それをカバーする保険がなかったために認知度が高くありません。

就業不能保険を扱う会社が今よりも増えれば、状況は変わってくるのではないでしょうか。掲載許可をもらう難しさはありますが、「この保険に入っていてよかった」という体験談の紹介が増えてくると、生活者はリスクを身近に感じやすいでしょうね。

──保険会社に改善してもらいたいことはありますか?

馬養:まずは分かりやすさです。就業不能保険は条件が複雑なので、分かりにくいという人も多い。条件を分かりやすくすることが、この保険を普及させる一つのポイントだと思います。

また、モラルリスクはありますが、精神疾患までカバーしてもらえるといいですね。保険会社にとってはリスクが高まるので保険料が高くなるかもしれませんが、実際に世の中では精神疾患で働けなくなる人がたくさんいます。そういうリスクがあることに気づいてもらうためにも、保険会社が商品として提供する意味があると思います。

(つづく)

<プロフィール>
馬養雅子(まがい・まさこ)
東京都出身、千葉大学人文学部卒業。法律雑誌の編集部勤務、フリー編集者を経て、2000年10月 CFP(サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー)の資格を取得。アドバイザーとしてFP業務をこなす傍ら、編集者時代のスキルを活かし、金融商品や資産運用などに関する書籍、記事を多数執筆している。著書は10冊にのぼる。オフィス・カノン代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。アマチュアオーケストラでビオラを弾く音楽家でもある。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/香川誠
撮影/村上悦子

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