こんにちは。ライフネット生命の新卒5期の板東です。
突然ですがこの度、中国の深圳(しんせん)へ武者修行に行ってまいりました。

武者修行といいますのも、よくある表敬訪問旅行……というものではなく、自分自身で企業にアポイント取得、建設的なディスカッションのための資料作成、ローカルの交通機関を使って企業に訪問し、訪問した企業から得た学びを深夜までチーム内でディスカッションし、自社事業に貢献できる情報収集・発見をするという趣旨のツアーでした。

そのツアー内容について全3回分けてライフネットジャーナルでお伝えしております。
第1回では、多くの日本人にとって馴染みがない深圳について、色々な側面からご紹介いたしました。(深圳サバイバルツアー体験記(1) 未来都市深圳〜入門編
第2回の今回は、日常の決済シーンを詳しく紹介することによって、キャッシュレスな生活の雰囲気をお伝えします。また、深圳は中国のシリコンバレーと言われるように、日々たくさんのサービスが生まれています。日本にはないサービスもいくつかありますので、深圳の最新サービスについて、私が深圳で感じたことを感想としてお伝えします。

■未来感のある日常風景

タイトルにあるように、深圳はQRコードの街です。
日常生活の決済がすべてQRコードでできてしまいます。
もう少し詳しく紹介します。

これはタクシーに乗って支払をするときの日常的な光景です。タクシーの運転手は、乗客に自分のQRコードを向けて、乗客はこのQRコードを自分のWechatpayやAlipayで読み取って、支払いをします。所要時間は10秒ほど。

現金で支払うと「お釣りがない」と嫌な顔をされるか「現金久しぶりに見た。」という反応をされます。「現金を久しぶりに見た。」と、言われてしまうと、自分が過去から来たように感じてしまいますね。
実際に中国の若い人に聞いてみると、ここ1~2年ほどATMに行っていないそうです。

これは露店なのですが、食べ物の近くに紙に印刷されたQRコードがあるのがわかりますか?
露店でも決済はQRコードなのです。

これは地下鉄に乗る風景です。
改札に自分のQRコードをかざすと、改札が開き、ホームに入れます。

これはAlibaba資本のスーパーです。セルフレジでもAlipayが使えます。

これは自販機です。これも自分のQRをかざすと飲み物が購入できます。
ちなみに私のAlipayの調子が悪く、購入を断念しようとしたら、店員さんが自分のAlipayで購入して、私にプレゼントしてくれました。深圳の人、優しくないですか?

レストランではこのようにQRコードがテーブルに貼ってあります。
これを自分のWechatpayやAlipayで読み取ると、メニューが表示されて、店員さんに声をかけなくても食べ物を運んできてくれます。食べ終わったときには、アプリから決済して完了です。

中国ではWechatpay、Alipayの2つQRコード決済アプリが主流です。
レストランはAlipay、タクシーはWechatpayを使うシーンが多いです。
ユーザーは、だいたい二つのアプリをインストールしてあって、支払先に応じてアプリを使い分けます。

ところで、世界各国のキャッシュレス決済の状況が気になったので調べてみました。
以下は「キャッシュレス・ビジョン(経産省、2018年4月)」のデータですが、日本は18.4%です。
中国を調べてみると全国平均で60%。意外にも韓国が89.1%とキャッシュレスが世界で一番進んでいました。
韓国のキャッシュレス決済の比率が高い理由は恐らくクレジットカードが一般的だからです。

「中国がこんなにキャッシュレスなんだ」と裏付けるために、グラフを調べていたら、中国全国平均では60%しかありませんでした……。
ちなみに私の体感値では、深圳は99.9%がキャッシュレスでした……!

各国のキャッシュレス決済の比率(2015年)

出典:経産省 「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月)

■お財布を無くすよりも困ること

そして中国では、財布を持たない人が増えており、スマホがあれば、お財布を持つ必要がない、と考える人が多く、財布を無くすよりもスマホの充電がなくなることが、中国人にとっては一大事になっているそうです。

この写真、何に見えますか?

これはスマホ充電器とぬいぐるみが合わさった製品です。
こんな製品が出てくるのは面白いですよね。

また、これは街中でよく見かけるスマホ充電サービスです。
後ほど紹介しますが、Alipayの芝麻信用という信用スコアが一定以上あると、無料で使うことができます。

ところで深圳はイノベーションの街です。
日本にはない、色々な便利サービスがあります。
そんなサービスを体験してきたので、一部ご紹介いたします。

■無人コンビニ「Easy Go」

深圳と言えば、無人コンビニ。
このコンビニのドアにQRコードが貼ってあるので、自分のwechatpayでスキャンするとドアのロックが開きます。

全ての商品に薄いRFIDタグがついています。

出口の前には写真のようなセンサーが設置してあります。

このセンサーに商品を近づけると、瞬時にWechatpayに請求がきます。

支払いボタンを押すと、決済が完了し、ドアの外に出られます。

案内をしてくれたスタッフの方は私と同じくらいの年齢の方でした。
日本の若い方がソフトウェアで起業することは珍しくありませんが、無人コンビニというハードを持ち、在庫リスクのあるビジネスにチャレンジしていることに、私は驚きました。

若い人がとにかくリスクを取って、ビジネスを前進させているのです。

なぜか深圳にいると楽観的になってしまうのが不思議です。
まるで深圳という急成長の街が、人間に魔法をかけているように思えます。

■シェアリング自転車「Ofo」

中国ではシェアリング自転車がとても一般的で、街中の人々が利用しています。
シェアリング自転車は、現代中国新四大発明のうちのひとつです。
(古代中国四大発明は「紙、印刷術、羅針盤、火薬」ですが、現代中国新四大発明は「スマホ決済、ネット通販、シェア自転車、出前アプリ」と言われています。)

写真はシェアリング自転車ので有名なOfoのアプリを起動したときのスクリーンショットです。
黄色のマークは自分の近くにある自転車のアイコンなのですがアプリを立ち上げるのが不要なくらい、たくさんあるのがわかると思います。

 

街を歩くと、このように自転車が止まっています。

自転車の鍵にあるQRコードを読み取り、認証が完了すると、自転車の鍵が開く仕組みになっています。

利用を開始するとアプリ内にタイマーが起動し、1時間以内なら1元(約17円)で利用可能です。

乗り終えたら、自転車をロックして、好きなところに乗り捨てていけます。

気軽に使えてとても便利なサービスです。

■デリバリー&リアルスーパー 「盒马鮮生」(ハーマーシェンシャン)

「盒马鮮生」は、リアル店舗をもつAlibabaが出資しているスーパーです。

日本でいえばデパートの地下にある食品売り場のようなイメージでしょうか。

輸入品や高品質な食品が売っています。

中国と言えば食品安全問題が気になりますが、最近の中国人の食に対する意識は非常に高く、価格が高くても安全な食べ物を購入する人が増えているそうです。

「盒马鮮生」では、水槽に入った生きた海老や蟹を自分で生け捕りにして、すぐに調理をしてもらうことができます。

また、レジはセルフレジとなっており、Alipayで支払ができます。

驚きなのは、アプリから注文したときです。

アプリからの注文を受けると、お店では写真のバッグに店員さんが商品を詰めます。

そのまま、天井にあるベルトコンベアで店外に運ばれていき、デリバリーされていくのですが、お店から3km以内だと、30分で届けてくれるそうです。

中国では出前サービスを利用することが非常に一般的です。

日本で出前サービスを利用するときは、食べたいものを売っているお店のアプリや電話で注文をしますよね? しかし、中国ではこの出前アプリを開くと、複数のお店から注文することができるのです。

注文後は、写真に写っているような人たちが、各お店に行って、品物を受け取って集約してから、ユーザーに届けてくれます。支払はもちろん、AlipayやWechatpayで完結できます。

とても便利ですよね。

■ブロックチェーンレストラン

次も面白いのですが、ブロックチェーンレストランというサービスを紹介します。

現状実験店舗1店での運用のようですが、簡単に言うと、お店の売上を、その時間帯働いている従業員にリアルタイムで分配する仕組みがあるレストランです。

たとえば、1000円のカレーを店員さんが販売したとすると、500円が原価、300円がお店の利益、200円が従業員の給与、という風に分配されます。従業員は、自分の販売実績データを蓄積して管理することができます。そうすればスキルが見えにくいサービス業の従業員でも、自分の実力や信用を、ブロックチェーンの履歴が証明してくれるという訳です。

実はブロックチェーンはリアルタイム計算にはあまり向いていない側面があり、計算に多少時間がかかることが難点なのですが、改ざん不可という特徴を活かして、試験的に導入されています。

※当社キャラクターのラネットくんとずいぶん離れた2ショット

■農業ドローン

最後に深圳らしい、とても驚いた便利なドローンをご紹介します。

航空写真で自分の農地をクリックしながら、縁取りしていくと、後はドローンが自動運転で農薬を散布してくれます。

燃料が無くなりそうになると、ドローンが自ら燃料補給をしに返ってきます。

実は競合にあたる企業が日本にあるのですが、深圳の製品は価格がその5分の1だそうです。

また1台のドローンで5人分働き、農薬も40%削減可能とのことで、人間よりも効率的に仕事をすることができます。「機械がやれることは機械にやらせる」という中国政府の方針があり、ドローンを使う農家に補助金が出るそうです。

この農業ドローンは日本でも普及しそうだなと感じました。

(つづく)