左から古川(ライフネット生命)、天野さん(ADKマーケティング・ソリューションズ)、安藤(ライフネット生命)

37歳大手ゼネコン社員が災難に遭い、目が覚めたらスライムに転生していた……!? 転生してからの人生(スライム生?)を描いた人気小説『転生したらスライムだった件』は、2015年には漫画化(現在も連載中)、そして2018年10月からはアニメ版の地上波放送、ネット配信が始まり、日本全国のファンを“捕食”中です。実は、ライフネット生命もそんな『転スラ』とコラボサイトをオープンしています。

そこでコラボ企画をライフネット生命に持ち込んできた、転スラ製作委員会の一員であり企業コラボレーションの仕掛け人でもある天野さん(ADKマーケティング・ソリューションズ)をゲストに迎え、ライフネット生命でこの企画を担当する、古川と安藤を加えた3人に、コラボ企画誕生秘話を語ってもらいました。

■ライフネット生命がアニメとコラボしたがっている件

天野さん(以下敬称略):ライフネット生命さんのアニメコラボといえば、『転生したらスライムだった件』(以下『転スラ』)の前にも一度、『ACCA13区監察課』(以下『ACCA』)とのコラボがありましたね。その企画は、普段は裏方の保険事務のお仕事をされている古川さんが社内で提案されたとかで。

古川:はい。たまたま社内で部署に関係なくチャレンジングな企画案を募集する、という取組がありまして、その時に案を出しました。事務部門にいて保険証券の作成も担当しているのですが、当初はお客さまが選んだ好きなアニメとコラボしたデザイン証券を作る、というものでした。その企画は早々ボツになりましたが、ある役員がその落ちた企画を拾い上げてくれて「これやったら?」と。ちょうどそのとき深夜枠で放映中だったオノ・ナツメさん原作の『ACCA13区監察課』が好きだったので、マーケティング部の担当に、ダメもとでコラボさせてください、ってメールをしてもらったんです。

深夜枠で放送されていたアニメ『ACCA13区監察課』とライフネット生命のコラボサイトは、「なぜ保険会社が興味を?」「しかも会長自ら出演させるとか?」「意味がわからない」などと業界内の一部ではちょっとした話題に。©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

天野:広告代理店の私の目線から当時を振り返ると、ある日、バンダイビジュアルさんから、「あの……ライフネット生命さんがACCAとコラボしたがっているんですけど?」と相談があったんです。意外な組み合わせに驚きましたけど、その一方で僕は、「ライフネット生命っておもしろい会社だな」と思っていたので企画のイメージはすぐに湧きました。『デイリーポータルZ』のハトが選んだ生命保険に入る企画に当時社長だった出口(治明)さんが出ているのを見た時に、「こういうのに出てくれる社長さんなんだ」と思って、勝手に出口さんが出てくる企画の原案を描いたほどです(笑)。


安藤:『ACCA』とコラボしたころ、私は入社したばかりで、アニメコラボの話は朝礼で初めて知りました。「保険会社なのにこういうことしてるんだ」と驚いたのを覚えています。まさか自分が企画に携わるとは思いませんでした……(笑)。

古川:『ACCA』とのコラボは証券作成とは違う方向のものができましたけれど、コラボサイトへのファンの方からのリアルタイムな反応は、すごく新鮮で感動でした。はじめてのことで戸惑いながらでしたが、本当によい経験をさせていただいたと思います。その後少し間が空いて、今度は『転スラ』コラボ企画を天野さんのほうからお声がけいただいたわけですが、どういった経緯でお声をいただいたんでしょうか?

天野:『転スラ』については、2018年10月のアニメ放送に向けてどう宣伝していこうかと考えていたんですよ。アニメコラボは最近増えていて、まずはカフェとコラボする、みたいな定型のフォーマットみたいなものもありますが、『転スラ』のスケール感や作品テーマを考えると、それは違うかな、と思ったんです。

『転生したらスライムだった件』とライフネット生命のコラボサイト。ライフネット生命の公式キャラクター「ラネットくん」が登場するオリジナルエピソードを読むことができる。©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会

古川:『転スラ』にはコアなファンもたくさんいますからね。

天野:そうなんです。そういう人たちをどうやって楽しませようかということを、放送が始まるまでの数か月間、考えていました。ただし、コアなファンだけの閉じた世界にはしたくなかった。ファンが「やっぱり俺たちの転スラだ」と思える納得感があるのは当然のこととして、ファン以外の人たちにも作品を知ってもらいたい。そこで、主人公のスライムが物体やスキルを体内に取り入れる「捕食」という作中のワードを、企業コラボの軸にしようと思ったんです。


安藤:ライフネット生命も他社さんも、リムル様(スライム)にみごとに捕食されてしまいましたね。私が大好きなのが、山梨県の老舗和菓子屋「金精軒」さんとのコラボです。天野さんが「お問い合わせフォーム」から連絡して、体当たりでコラボにつながったお話も伺って、ますます好きになりました。

古川:最初、ライフネット生命のサーバールームにスライムが侵入し、ウェブサイトを書き換えてしまう、という捕食案だったので、『それはやばい、冗談でもサーバーを乗っ取られるのはやばい』となって、パンフレットを捕食する方向になった、という……。

天野:他にもUHA味覚糖さんの「ぷっちょ」、ラーメンチェーン「幸楽苑」さんなどとのコラボも実現しましたし、諸事情で残念ながら実現しなかった会社からも、「おもしろそうだね」と興味はもってもらえました。ライフネット生命の社員さんたちの反応はどうでしたか?

古川:毎週月曜日の朝礼で、各部署が今やっていることを発表する場があるんですが、『ACCA』の時も『転スラ』の時も、パワポで朝礼用のプレゼン資料を作りました。交渉の過程から、コラボしてこうなります、というアウトプットまで。やっぱり「アニメとか自分の好きなことばかりやってないで普段の仕事をちゃんとしろ」みたいな空気を感じるじゃないですか(笑)。だからそこは背景をきちんと説明したかったんです。

安藤:最初は社員みんながキョトンとしていたのが印象的でした(笑)。

古川:そうそう。でも主人公のスライムが37歳独身、元ゼネコン勤務というところで『どっ(笑)』ってなって、そこでみんなも受け入れてくれたような気がしました。

天野:同じサラリーマンとして共感があったんでしょうね(笑)。

■お金を払っている人から「ありがとう」と言われる件

古川:アニメファンとして個人的にお聞きしたいんですが、世の中には多くのアニメファンがいて、アニメと携わる仕事をしたいと思っている人もたくさんいると思います。私はたまたまコラボを通じてその夢が叶った一人なんですが、それが本職の天野さんは「実はアニメに興味がない」ということを小耳に挟みまして(笑)。それでもコラボ実現に向けて一番汗をかかれていた。どういうモチベーションがあったんでしょう?


天野:そうなんです。携わる作品には思い入れがありますが、アニメが好きかと言われると、アニメそのものにはそこまで興味がないんです(笑)。ただ、私は学生時代に演劇をやっていたんですよ。

舞台を作るおもしろさを知っていたので、チームで働くことや企業の悩みに対して提案をする仕事が自分には合っているなと思って、広告代理店に就職しました。舞台を作るのに答えはありませんが、広告代理店の仕事も「答えのない仕事」なんです。顧客の要望や悩みに対して、いろんな表現方法で応えることができる。舞台に通じるものは感じています。

古川:舞台にルーツがあるという広告代理店の社員さん、というのも珍しいですね。

天野:私は広告代理店の仕事は、単純に企業の告知業務だけではないと思っています。取引先の企業によっては、「人をどう魅了するか」がゴールになることもある。今回はまさにそのような「楽しませたもの勝ち」「人々が笑顔になったら勝ち」という、分かりやすい世界だったと思います。

安藤:笑顔になったら勝ちって……。かっこいいです……。

天野:アニメの関連イベントで、私はスタッフパスを身につけていますが、帰っていくお客さまから「ありがとうございました」と声をかけられることもあります。入場料を払って、グッズを購入してくれた方が、いちスタッフの私に対して「ありがとう」とおっしゃってくれるんです。エンターテインメントのパワーを感じる瞬間ですね。

古川:私が初めて保険金をお支払いした時にも、それと似たような経験をしました。「ありがとうございます」とすごく感謝されて。「月々保険料を払ってくれているご契約者さまが入院したら、保険会社が払うのは当たり前。お客さまがそれをもらうのは当たり前」という認識で、むしろご契約いただいてありがとうございますという気持ちだったので、お礼を言われて一瞬理解できなくてとまどってしまいました。そのあと、「保険って人からありがとうって言われる仕事なんだ……」ということを強く実感して。誰かの役にたてた、という実感を得られる仕事ってすごいなと。

次回、「転スラ」とライフネット生命がコラボしたオリジナルストーリーの制作秘話をお届けします!


左から古川(ライフネット生命)、天野さん(ADKマーケティング・ソリューションズ)、安藤(ライフネット生命)

・転生したらスライムだった件×ライフネット生命
https://www.lifenet-seimei.co.jp/ten-sura/

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/香川誠
撮影/横田達也
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会
©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会