認定NPO法人かものはしプロジェクト ウェブサイトより

「子どもが売られる問題をなくし、すべての子どもが未来への希望を持って生きられる世界に──。」

2002年に設立された認定NPO法人かものはしプロジェクトは、インド、そして日本で「性的搾取を目的とした人身売買」をなくすために活動しています。

「性的搾取」? 「人身売買」? 日本で暮らしているとまるで現実味のない話ですが、世界では100万人*もの子どもたちが、「商業的性的搾取」の被害に遭い、将来の夢や希望を奪われているのです。

*出典:ILO 2017年 Global Estimates of Child Labour RESULTS AND TRENDS,2012-2016

かものはしプロジェクトは、2025年までにインドでの「性的搾取を目的とした人身売買」をなくすという目標のもと、人身売買の被害者が自分の人生を取り戻すための「サバイバー(人身売買の被害に遭い生き延びてきた人たち)に寄り添う」活動と、「人身売買ビジネスが成り立たない社会の仕組みをつくる」活動に取り組んでいます。活動により少しずつ、確実に世界を変える努力をしているかものはしプロジェクトを、寄付やイベントへの参加など、さまざまな方法で支援することができます。

■100万人もの子どもが「商業的性的搾取」の被害に遭っている

2002年、3人の大学生によって立ち上げられた認定NPO法人かものはしプロジェクト。設立から2018年度までは、カンボジアで「子どもが売られない世界をつくる」ためのさまざまな活動に取り組みました。その活動の内容と、成果を簡単にご紹介します。

かものはしプロジェクト創業者の3人。左から本木恵介さん、村田早耶香さん、青木健太さん
Photo by Natsuki Yasuda

活動を開始した当時のカンボジアでは、地方から都市部に出稼ぎに来たまだ幼い少女たちが、大人に「良い働き口を紹介してあげる」などと言葉巧みにだまされて売春宿に連れて行かれ、暴力をふるわれる“最悪な形態の児童労働”が横行していました。

そこで、かものはしプロジェクトは、「警察の加害者逮捕件数を増やすための警察訓練事業」と「女性たちが出稼ぎに行かなくても良い労働環境を農村に作るコミュニティファクトリー事業」という2つの事業に取り組みました。

1つめの「警察の加害者逮捕件数を増やす」ためには、カンボジア警察による、子どもを働かせている売春宿のオーナーの取り締まりや児童買春をした客を逮捕するなど、法執行を強化する必要がありました。それまでカンボジア国内では国の予算が少ないがために、警察官が能力を上げるための研修への予算は十分に割かれず、警察官への法律への理解や取り締まりを行う能力を向上させるための教育が十分には行われていませんでした。

かものはしプロジェクトでは、カンボジア警察官が意識と能力を上げるための研修・実習などのプログラムへ資金を提供しました。その結果、2001年から2010年までに性犯罪の摘発件数は増加、「売春宿で明らかな未成年者を働かせていると警察にばれたら罰せられる、リスクの高い商売である」という認識を広めることにも繋がりました。

2つめの「女性たちが出稼ぎに行かなくても良い労働環境を農村に作る」事業では、「コミュニティファクトリー」と呼ばれる、い草を用いた雑貨の工房を、カンボジアの農村に設立しました。ファクトリーでは教室や託児所も併設され、女性たちに安定した収入だけでなく、識字教育やコミュニケーションスキルなど、生きる力を身に着けるための教育を提供しました。

カンボジアのコミュニティファクトリーで女性たちの手によってつくられた商品のブランドは、現在は「SALASUSU」と名づけられ、日本からも購入することができます。

ファクトリーの先輩とおしゃべりをしながら、い草を選別するスウーン・サールーさん

SALASUSUのトップ画面

カンボジア国内で、児童買春を取り締まる法律ができたり、取り締まりが強化された結果、売春宿に売られる子どもの数は激減しました。また、経済成長により、危険な出稼ぎにでる子どもの数も減りました。そのため、コミュニティファクトリーが設立10周年を迎えた2018年、カンボジア事務所は、かものはしプロジェクトから独立しました。現在は、「カンボジアの女性たちの人生の旅を応援する」という新しいコンセプトのもと、日々の活動を継続しているそうです。

2018年7月6日、カンボジアのコミュニティファクトリーにて、現地で働く女性たちとかものはしプロジェクトのスタッフのみなさん(「カンボジアからのOkun」認定NPO法人 かものはしプロジェクト ウェブサイトより)

■インドでの取り組み

カンボジアの児童買春の被害状況が落ち着きはじめた2010年、他国に展開することを模索しはじめ、2012年、インドでの活動が始まりました。

2019年現在も継続中のインドでの活動は、「サバイバーに寄り添い、共に声をあげる支援」「社会の仕組みを変える支援」の2つがメインになっています。

インド国内では、売春宿から救出された「サバイバー」が生きづらい状況が長年続いています。インドはまだ女性蔑視の文化が根強く残っている部分があり、未だに「売春から戻って来た女の子なんて汚らわしい」と考える風習があります。やっとの思いで救出されて自分の村に戻ることができても、家族や親戚、周囲の住人からは受け入れられず居場所がない、という状況になることもありました。

そこで、かものはしプロジェクトでは、インド国内のNGOと共同で、人身売買の被害が起きているムンバイから救出され、西ベンガル州に戻ってきたサバイバーの少女たちの精神回復のためのカウンセリングなどの心理回復支援を行っています。また、裁判で証言をし、自分を売ったトラフィッカーと呼ばれる仲介人を有罪にするための裁判支援の活動に取り組んでいます。

認定NPO法人かものはしプロジェクト ウェブサイト「今すぐ支援する」より

売春宿の中で少女たちは、自分の心と身体を切り離すことで、なんとか苦痛を紛らわせようとします。救出後、その分離を回復してもらいます。また、精神回復することで、裁判で加害者を前にしてもはっきりと証言できるようにすることが重要なのです。

また、インドでは少女たちをムンバイの売春宿のオーナーに売り渡す「トラフィッカー」と呼ばれる仲介人が、なかなか有罪にならない状態が続いていました。地方の農村と児童買春が行われている主要都市ムンバイでは州が異なるため、州同士での連携がうまく行われず、被害者の救出が遅れたり、加害者の処罰ができていませんでした。かものはしプロジェクトは、被害者が保護され、加害者が処罰されるように、州をまたいでの犯罪が取り締まられるように、インドで活動している団体への支援を通じて、取り締まりの強化を支援してきました。

■日本で活動を支援するには?

東京・恵比寿にオフィスを構えるかものはしプロジェクトは、説明会やさまざまなイベントを開催しています。支援の方法は「サポーター会員」としての寄付、読み終えた本の寄付(『ほんのかけはし』)、そしてボランティアやインターンとしての参加などがあります。

「サポーター会員」になることで参加できる説明会やイベントもありますので、ぜひご検討ください。

時として2万円、3万円程度の金額で売られてしまう危険にされている、インドやカンボジアの多くの少女たち。卑劣な命のやり取りをなくし、すべての少女たちが生きる希望を持てる世界にするためには、その現状を知り、できることから行動に移していくことが大切です。

<インフォメーション>
●認定特定非営利活動法人かものはしプロジェクト
●SALASUSU
●ほんのかけはし

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部