今日も街のどこかで、目の見えない人に寄り添って活躍している盲導犬。4月の最終水曜日が「国際盲導犬の日」と定められているのをご存じでしょうか? この日は世界各国で盲導犬の理解を深めてもらうべく、呼びかけなどの活動が行われる日です。

一方で、社会の中で盲導犬と生活していると、さまざまな問題にも直面するようです。今回は盲導犬のお仕事の内容と、盲導犬を見かけたときに気を付けたいことについて見ていきましょう。

■視覚障害者の社会活動を支える盲導犬

公益財団法人日本盲導犬協会によると、盲導犬の役割は「目の見えない人・見えにくい人が安全に歩くためのサポートをすること」です。

盲導犬の歩行は、

  1. 角を教える
  2. 段差を教える
  3. 障害物を教える

という3つの基本的な仕事で成り立っています。盲導犬ユーザーは目的地までの道のりを考えながら指示を出し、盲導犬は放置自転車などの障害物や階段がある際にユーザーに教え、安全な歩行をサポートしています。

1978年に道路交通法が改正され、道路上で盲導犬を連れている目の見えない人・見えにくい人の安全を確保することが定められました。その後、2002年には「身体障害者補助犬法」が制定され、道路だけでなく、不特定の人が利用する施設等でも身体障害者が補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)を同伴することを原則として拒んではいけない、と明記されています。
盲導犬を含む身体障害者補助犬はこれらの法律により、障害者の身体の一部として、日常生活の補助、そして障害者の社会活動を助ける重要な存在として認められています。

■もっと自由に外出したい──受け入れ拒否の実態

しかし実際には、公共施設や飲食店などで、盲導犬ユーザーの利用が拒否されるケースも少なくないようです。

認定NPO法人全国盲導犬施設連合会が、加盟している盲導犬育成8団体の全ユーザーを対象に行ったアンケートでは、2019年1月からの1年間で受け入れ拒否を経験したユーザーは52%に及びました。

拒否に遭った場所は、飲食店が最も多く、病院、交通機関の順に続きます。中でも飲食店で受け入れ拒否を経験した人は77%と多く、拒否の理由としては、「犬はだめ」「犬アレルギーや犬嫌いの利用客に迷惑がかかる」などが挙げられています。交通機関や飲食店の利用が制限されると、視覚障害者の社会活動は大きく制限されてしまいます。

身体障害者補助犬法が2003年に完全施行され、さらに障害者差別解消法が2016年に施行されましたが、盲導犬の受け入れ拒否がなくなっているとはいえないようです。

公益財団法人日本盲導犬協会では、盲導犬の受け入れ拒否をなくすため、「前例がない……」「受け入れ方がわからない……」という事業者などに向けてセミナーを行っています(ウェブサイトでは、具体的にどんな問題が起きているのか? 「盲導犬受け入れ拒否対応事例」が公開されています。受け入れ拒否発生から、事業者側がどのように盲導犬ユーザーを受け入れるようになったのか、経緯を具体的に説明しています)。

また、厚生労働省のホームページでも、盲導犬などの補助犬の同伴を受け入れるための事業者へのアドバイスが公開されています。

■盲導犬を見かけたら、こんなことに気をつけて

では、もしも私たちが日常生活の中で、お仕事中の盲導犬と出会ったら、どうすれば良いでしょうか。

賢くて、優しい顔つきの、盲導犬。見かけると「優秀だなあ」と思うと同時に、かわいらしさから、つい構ってしまいたくなりますよね。しかし、そうした行動は、盲導犬の仕事を邪魔してしまうかもしれません。

盲導犬ユーザーが安全に出歩くために、公益財団法人日本盲導犬協会では、以下の行動を取らないように注意喚起しています。

  • 声をかけたり、じっと前から見たり、口笛を鳴らしたりしない
  • 食べ物を見せたり、あげたりしない
  • 盲導犬をなでたり、ハーネスを触ったりしない
  • 自分のペットと挨拶させようと近づけたりしない

こうした行動を取ってしまうと、盲導犬の集中力が切れてしまい、盲導犬ユーザーが安全に歩行できなくなってしまう可能性がありますので、決して行わないようにしましょう。

私たちが盲導犬ユーザーを街中で見かけたとき、まずできることは、盲導犬が集中して歩行を補助できるよう、見守ること。

もし盲導犬と視覚障害者の方が、道に迷っているなど、困っている様子を見かけたら、いきなり腕や肩に触るのではなく、「お手伝いしましょうか?」と、一声かけてみてください。

盲導犬は信号の色を判断することができません。盲導犬ユーザーは、車の音や周りの様子などから安全を確認し、横断してもよいかを判断しています。信号待ちをしている盲導犬ユーザーを見かけたら、「赤ですよ」「青になりましたよ」などと声をかけることで、大きな安心につながるそうです。

盲導犬との歩行は、視覚障害者の方の自立や社会参加につながります。誰もが、行きたいところに自由に行けるように、社会全体で考えていきましょう。

<インフォメーション>
公益財団法人日本盲導犬協会
認定NPO法人全国盲導犬施設連合会

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
写真提供/公益財団法人日本盲導犬協会