社会全体で働き方の変化が起きている現在。ライフネット生命でも働き方の変化があり、多くの社員が自宅でリモートワークを行っています。メールやチャットツールなどを用いて業務に必要なコミュニケーションを取っていますが、新たな課題も浮かび上がってきました。業務に必要なやり取りは円滑に進むものの、オフィスでは見られた部署を越えての気軽なやり取りの機会が減少し、自身の関わっていない社内の動きが見えづらくなってしまったのです。

そうした中で社内に向けて積極的に情報発信を行っているのが、法務部の浅野です。浅野は2年前に定期育成採用で入社した社員。法務部として社内の書類や制作物の内容確認を担当する傍ら、社内SNSで社内の動きを紹介する情報発信を続けています。その発信形式は、かわいらしい絵柄で描かれた漫画。「あさの日記」と題されたその漫画にはファンも多く、他部署の社員も身近な存在に感じられると評判です。

今回は浅野が取り組みを開始した目的やきっかけと、今後の自己実現について話を聞きました。

■「楽しかったことを忘れたくない」から「人の魅力を楽しく伝えたい」へ あさの日記の始まり

──浅野さんのイラストはかわいらしくてとても素敵ですが、以前からイラストを描いていたんですか?

浅野:小さい頃から、イラストを描くことは好きでした。昔から好きなことは多くて、ギターだったりラジオだったりも好きです。

──多趣味なんですね! 普段からいろいろなことを発信している浅野さんのイメージ通りです。今描いているような日記風のイラストを描き始めたきっかけなどはありますか?

浅野:今のように、日常にあったことをイラストにし始めたのは、中学の頃からでした。

当時、毎日その日あったことを、文章で担任の先生に提出するという課題がありました。ある日、授業中にすごく面白いことがあったんですけれど、担任の先生の受け持ちとは別の教科で起きたことだったんですね。担任の先生にもこのことを伝えたい! と思い、けれど文章では上手く表現できなかったので、イラストで描いて提出をしてみました。注意されるかなとも思ったんですが、職員室で他の先生とも面白がってもらえたみたいで。

そのときの課題を褒められたことがきっかけで、印象に残った出来事をイラストにするのが習慣になりました。

「重い課題」で浅野が提出したプレゼンの表紙。かわいらしいイラストだが、内容はしっかりと自身を見直すものとなっている。

──この浅野さんを表すキャラクターが生まれたのはその頃からですか?

浅野:このキャラクターを使いだしたのは、定期育成採用の課題である「重い課題」*に取り組んだ時からですね。私の場合、重い課題はイラストと文章で作ったんですけれど、一番書きやすい自分の代理キャラとして生み出しました。その時限りのキャラのつもりが、今も使うことになるとは思いませんでした(笑)。

「重い課題」とは:ライフネット生命の定期育成採用の応募者が提出する課題の名称。「自分と正直に向き合い、表現する」ことを求められ、提示された3つのテーマについて自分なりの方法で表現したものを提出する。表現方法は自由だがクリエイティブコンテストではなく、あくまで応募者自身を深く知ることを目的としている。浅野が応募した際のテーマは「わたしの正直さ」、「わたしが応援される理由」、「わたしの弱さ」。

──私も一度、毎日日記を書こうと思ったことがあったんですが、何があったか忘れてしまって続かなかったんですよね。日常であったエピソードを漫画にするときは、記憶をもとにイラストを描いているんですか?

浅野:これは漫画にしたい! ということがあったら、その時にメモを取るようにしています。学生の頃は下敷きの裏にメモしたりしていましたね。

一番強いのは、「忘れたくない」って気持ちかもしれません。どれだけ面白いことでも、誰かが記録や記憶をしていないと忘れられてしまうじゃないですか。その時感じたことやあったことってその時にしかないものなので、忘れるのはもったいない、記録して取っておきたい、と思ったのが始まりですね。メモを取り続けていくうちに、周りの人の魅力に気付いてほしいという思いと、人に楽しんでほしいという気持ちも出てきたかなと。

社長の森が登場する回も。社内ならではのリラックスした雰囲気が伝わってくる。

浅野:中学の時の日記も、読んでいる間は先生に少しでも楽しんで元気になってもらえたらなという気持ちでいました。今は、一緒にライフネット生命で働いている人たちへ向けて、仕事で大変なことがあってもこれを見て笑って元気になってもらいたいな、という気持ちで描いていています。何かを作りたい、人の魅力を伝えたい、誰かを喜ばせたい……そういう気持ちが、私の原動力です。

法務部の社員一同が登場する回。チーム内の仲の良さがうかがえる。

──人の魅力やいいところを見つけていっていることが漫画からも伝わってきて、そうした素直な視点を持てることはすごいなと思います。

浅野:人の魅力については、昔から特に意識せず見つけられていたかなと思います。ただ、「こういうところが魅力的だよ」って言語化するのは苦手なので、今の漫画のようにあったことベースで表現をすることが多いです。

──浅野さんは、相手が喜ぶか、自分以外の人がどう思うかなど、他社の存在を意識した視野の広い考え方をされていますね。そういう目線を持つのはなかなか難しいと思いますが、どうやって培われたものでしょうか?

浅野:小学生から高校生の間にボーイスカウトをやっていて、学校外のいろいろな人と会う機会は多かったです。そこから「世の中にはいろんな人がいる」というのを、昔から知ることができていたのかなと思います。昔からどこに行っても面白い人に囲まれているので、私は人に恵まれているなぁと感じています。

──あさの日記を書いて、コメントや感想をもらったことはありますか?

浅野:はい、ありますね。コメントも結構もらいますし、オフィスですれ違い様に「いいねとかコメントはしたことないんですけど実はファンです」って声をかけてもらったこともあります。更新に間があくと「次はいつですか?」って連絡がくることもありますね(笑)。

部署をまたいだ日常のなにげない会話も。この回は数理部の社員・片切のイラストが似ていると話題になった。

■自分の性質を見てくれる人事部を信じて任せた配属先での業務風景

──浅野さんの描く社員はほっこりした絵柄でありつつ特徴を掴んでいますよね。浅野さんと同じ法務部の嵯峨さんはよく登場されますが、イラストの雰囲気がご本人そのままで(笑)。直接話す機会は少なくても、法務部の方たちがいいチームワークで働いている様子も日記からうかがえて、声をかけやすくなった気がします。

浅野:法務部っていうと、業務内容的に近寄りがたいイメージがあるかもしれませんね。そういうイメージが薄れたのならうれしいです!


法務部の嵯峨が登場したあさの日記抜粋。お茶目な人柄を感じられる。

──法務部で普段担当している仕事は、漫画のほっこりとした雰囲気とはまったく毛色の違うものですよね。法務部へ配属が決まった経緯について、よろしければ教えてください。

浅野:入社して研修期間を終えた後に各部署へ配属されるんですが、配属の希望を自分で出すこともできます。でも、重い課題や選考を通じて私のことを理解してくれている、そして各部署の特徴も知っている人事部に任せた方が、自分の性質に合う部署を見つけてくれるだろうなと、人事部に配属先決定をお願いしました。私はライフネット生命に「何をするかより誰とするか」が決め手になって入社したくらい、どの人も好きなので、どの部署に行ってがんばれるだろうなと思っていました。

法務部への配属と聞いた時、最初に感じたのはわくわく感でした。驚きや不満とかは一切なくて、自分が法務部に合っていると判断された理由がとても気になりました!

──「えー、法務なんですか!!」と驚いたりはしなかったんですね。配属理由は人事部から説明されましたか?

浅野:私は何かを作る分野が得意ですが、やはり保険会社として法律やコンプライアンスをクリアしたものでないと、表に出せませんよね。そのOKライン、NGラインをわかっていれば、今後クリエイティブに携わる立場になった場合にも役立つでしょう、ということでした。それは「なるほど!」と思いましたね。あとは「単純に浅野さんに合うと思った」とも言われました(笑)。ただ、法律などを専門的に勉強してきたわけではないけれど大丈夫かな? と、そこは最初ドキドキしました。

──実際法務部でお仕事を始めた時の感触はどうでしたか?

浅野:色んな部署と関わる仕事が多いので、部署や会社のこれからの動きが見えて楽しいですね! その分、他部署の状況に業務量が左右されることが多いところは大変だなと思っています。

──初めて文書のコンプライアンスチェックを浅野さんにお願いした時、初めてとは思えないほどしっかりとしたチェックだったのが印象に残っているんですよね。

浅野:初めてコンプライアンスチェックをしたときは大変緊張しました……。先輩社員の作った制作物に法務としてコメントをしていく仕事なので、先輩社員がそのコメントを見ますし、一生残る可能性もあるので、結構プレッシャーを感じました。いまだにそういう重さを感じることはありますね。

──でも法務部の皆さんからのコメントが少ないと、うれしいような寂しいような気持ちになるのが不思議です。あさの日記にもありましたが、契約書チェックも最近始められたんですね。

浅野:そうですね、3月頃から開始しました。固い文章を読むのが昔は苦手で、これまで契約書とはあまり縁がなかったんですよね。だから自分で確認をするときは自分用にイラストで図解したり……でも、以前よりは契約書特有の言葉にも慣れてきましたね!

法務部の業務に奔走する浅野の活躍が見られる回。

──そうなんですね! 契約書を見るようになって初めて知ったことや、驚いたことなどはありますか?

浅野:一番驚いたことは「契約書を作る目的」です。業務に携わる前は契約書がないと契約が結べないと思っていたんですが、実際は当事者双方の合意があれば口頭でも契約は成立します。だから、スーパーで物を買うときも、「500円で売ります!」「500円で買います!」というように合意しているので、売買契約が成立していることになるんです。そこにびっくりしましたね! ちなみに契約書を作る目的はいろいろありますが、一例としては「契約内容が明確になり、紛争を予防できる」「紛争が起きたとき、契約内容の証拠になる」「当事者に対する契約の拘束力を強める」などがあります。

契約書はうまくいっているときではなく、トラブルが起きたときに問題ない内容なのか考えることが大事です。少しの文章の違いでお互いの有利不利が変わったりするので、同じ条項でも書き方が変わって面白いですね。

■入社から2年、ライフネット生命で浅野が目指す自己実現

──浅野さんから見て、法務部はどんなチームですか?

浅野:この会社しか知らないのであくまでイメージなんですが、法務部というと規程に反しているものについては「これはダメです!」とピシャッとNOを突きつけるイメージがありました。けれどライフネット生命の法務部の場合、もちろんダメなことはダメと言いますけれど、実現するためにはどうしたら良いのかを一緒に考えて、寄り添っている感じがあるなと思います。

固い部署だけど柔らかくて、一人一人性格も違うし、得意も苦手もあるんですけど、それを掛け合わせることで相乗効果が出ているなって。私も固い文章を読み解くのはまだ苦手ですが、その分、苦手な人の気持ちがわかるので、わかりやすい言葉にかみ砕いて説明するのが得意です。自分の長所も短所も生かせる部署だなぁと思っています。

──法務部に配属されて2年が経ったとのことですが、他部署へ異動してみたいという気持ちはありますか? それともまだ法務部で業務経験を積みたいと思いますか?

浅野:そうですね、しばらく法務部にいたいなと思っています。他の部署に行くとしても、法務部出身ということで、法務の知見が求められる機会は多くなると思うんです。他の部署に行って、果たして今のままの自分で役に立てるのか? 求められることに対して経験が足りていないのでは? と感じています。単純に法務部のメンバーや業務が好きでもあり、まだまだ法務部にいたいです。

──浅野さんはこれから仕事でどんなことをしたいですか?

浅野:「何をしてるかわからない人だよね」って言われるポジションになりたいです! 名前が付けられないくらい、やりたいことをやり過ぎなくらい全部やって、精神的には「職業:自分」として生きていく! というようにありたいなと。役職にとらわれず伸び伸びとしつつ働きたいです。人とかかわることは好きなので、今みたいに人間観察をしつつ、新しい発見があるような過ごし方をしたいです。あとは法務部の皆とも、またオフィスで早く一緒に仕事をしたいなと思いますね。

新しいことへ次々挑戦する浅野。次はどのようなものを生み出してくれるのだろうか?

──新しいことを発見できる力が浅野さんにはあるので、周囲の人にプラスを与えられそうですね。今後も浅野さん目線を漫画で感じていきたいです、更新を楽しみにしています!


リモートワークを実施する場合、業務の進捗やタスクの抜け漏れがないかの確認が主なコミュニケーションとなってしまうことも多いでしょう。しかし社員同士で顔を合わせる機会が減るからこそ、社員の個性や魅力に着目することも大切です。勤務時間内の生産性を重視するだけではなく、社員同士が気軽に情報発信を行える環境が今以上に当たり前のものとなり、また、それを歓迎する風土が醸成されることで、より良い働き方が実現できるのではないでしょうか。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル編集部
文/年永亜美(ライフネットジャーナル編集部)