新型コロナウイルス感染症の影響によって、収入の減少に悩む人も少なくありません。今回の相談者さんもその一人。もっと節約をすべきなのか、思い切って転職に踏み切るべきなのか。経済的な打開策を模索する相談者さんに、黒田先生がずばりお答えします。

【相談】
35歳の独身女性です。コロナ禍で収入が大きく減少してしまい、いま経済的なピンチに直面しています。貯金があるので、いまはなんとか生活できていますが、この状況が続けば、いずれは貯金も底をついてしまう。そう思うと、不安で仕方がありません。いまの仕事自体は嫌いではなく、職場の人間関係にも恵まれているので、できれば転職をしないで勤め続けたいと思っていますが、こんな私が現在の危機を乗り越える方法はあるでしょうか。節約をした方がいいのか、あるいはもっと条件の良い会社に転職を考えた方がいいのか。教えてください、黒田先生!(35歳・女性)

■さまざまな方法でリスクを分散するのが一番

最近、こうした相談を受ける機会が本当に増えてきました。多くの人が、コロナ禍で先の見えない状況に苦しんでいます。

そうした方に私からまず一言。コロナ禍を乗り切るというより、コロナ禍を前提とした生活設計を考えてみませんか。

ワクチンの開発等が進んでいるため、状況は改善するとは思いますが、コロナ禍前の生活にすんなり戻れるとは考えにくいですよね。仮に転職をしたとしても、現状より良くなるとは言い切れません。2021年のGDP(国内総生産)は、米国が6.9%増、中国が8.5%増と大規模な財政出動やワクチン普及を背景に急速に回復基調が続いていますが、日本の場合、5月中旬に発表された2021年1月~3月期の四半期別GDPは年率▲5.1%と、3四半期ぶりにマイナス成長に舞い戻ってしまっています。 多くの人が名前を知っているような大企業でさえも、業績悪化に苦しんでいる状態です。まさに一寸先は闇。「環境」を変えても、リスクはあるかもしれない、それなら「自分」を変えた方がいい。

つまり、劇的な改善方法はないのです。コツコツとした積み重ねで、この有事を生き抜くしかありません。収入を上げる、支出を減らす、貯蓄を増やす。さまざまな方法でリスクを分散することが、効果が小さいように感じても効率的な対策だと思います。今回は、「収入を上げる、支出を減らす」のポイントをお伝えします。「貯蓄を増やす」については、また機会を改めてお話ししましょう。

■資格や副業、給付金をチェックしてみて

まずは、収入を増やす方法とは、具体的にどんなものなのか。相談者さんは現在のお仕事については、内容にも環境にも満足しているとのこと。それならば、資格を取得するとか、実績を積み重ねて上のポストを目指すといった方法で、今のポジションでの収入アップにトライしてみませんか。手始めに目指しやすいのは、資格取得です。会社から手当の出る資格制度がないか、確認してみてください。

会社が認めているのであれば、無理のない範囲で副業を始めるのもいいですね。今や、本業以外にさまざまな収入源を手軽に持てる時代です。自分の好きなことや特技を生かして、収入を上げられる道筋をいまから探して欲しいと思います。たとえば、ハンドメイドなどの趣味をお持ちであれば、作ったものをフリマアプリで販売してみるのも選択肢の一つですよね。高齢化が進み、人生の中で働き続ける期間は以前よりも長くなっています。ずっと一つの仕事に就くとは考えず、そのときどきにあった仕事やキャリアを考えてみましょう。

ただし、注意が必要なのは、世の中にはうまい話は転がっていない、ということ。「これだけで年収が大幅アップ」「1日1時間の作業で収入が大きく増える!」といった話は、詐欺などを疑ってかかるのが正解です。年々、手口が巧妙になっているので、自分だけはだまされないという思い込みは捨てましょう。私も含めて、誰でもだまされる可能性がありますから、自分は大丈夫だと過信しないことです。

(画像はイメージです)

自治体が支給している、新型コロナウイルス感染症関連の給付金をチェックすることもお忘れなく。給付金を探すときには、問い合わせ先をわかりやすく集約しているウェブサイトも便利です。「収入が減ってしまい、月々の家賃の支払いが難しくなってしまった」「家計状況が厳しいため、学校の授業料の減免を申請したい」など、ご自身の困りごとに合わせて、支給の対象となりうる給付金を調べられます。ぜひチェックしてみてください。(参考:株式会社マネーフォワード「新型コロナウイルス 支援情報まとめ」

■現状を棚卸しして、メリハリのある支出の見直しを

次に支出を減らす方法ですが、これは現状の「困り度」によって異なります。いますぐの応急手当が必要なのか、予防策でいいのか。どれだけ経済的に逼迫しているのかを客観視した上で、対策を打ちましょう。

応急手当が必要な場合は、住宅ローンや生命保険などの固定費を見直します。住宅ローンの支払いについては、すぐに銀行に相談をしてください。そこまで逼迫していないのであれば、まずは現状の棚卸しをしましょう。自分はどれぐらいの生活費が必要なのか、どれだけあれば家計を回せるのかを可視化するのです。

生命保険の見直しは、ファイナンシャルプランナー(FP)など第三者に相談することをおすすめします。保障を減らそうと思っても、何をどう減らせばいいのか、なかなかさじ加減がつかめません。このさじ加減こそFPを利用するメリット。費用は多少必要ですが、長い目で見て相談してみてください。

保険相談サービスを利用するなら、複数の相談所に足を運んでみましょう。病気になったらセカンドオピニオンを受けるように、保険に関しても複数の第三者の意見を聞いて共通点や相違点を把握し、あなたにとって効果的な見直し方法を見つけてください。

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ちなみに、相談者さんは収入が増えたら支出も増やしていませんか? 一度、支出を増やしてしまうと、収入が減っても支出を見直せない人も多いのですが、それでは家計がもちません。

私の場合、自分のお小遣いは前年度の収入の一定の比率にする、と決めています。つまり、前年の収入が減ればお小遣いも減るし、収入が増えればお小遣いも増える。この方法なら無理がありません。お小遣いを増やしたければ、「よし、今年はがんばって稼ごう」というモチベーションにつながります。定率でのお小遣い管理、おすすめですよ。

ただし、支出を減らそうとするあまり、食費を減らしすぎないでくださいね。ここを削りすぎると体を壊してしまいます。夏場のエアコン代、通信費なども見直しやすい項目ですが、電気代がかかるからといって暑い日にエアコンをかけずに過ごすと、熱中症になりかねません。通信費も、現代ではライフラインの一つです。コロナ禍で人との接点が減っている中、電話やビデオ通話、SNSなどが心の拠り所になっている方は多いはず。QOLの維持のためにも、すぐに削る項目としなくても良いかもしれません。

変動費は手を付けやすく、削ればすぐに家計が楽になりますが、自分の心と身体に直結する項目を無理に削って健康が崩れてしまっては、元も子もありません。メリハリをつけた支出の見直しをおすすめします。

<プロフィール>
黒田尚子(くろだ・なおこ)。 1969年富山生まれ。立命館大学卒業後、1992年(株)日本総合研究所に入社。SEとしておもに公共関係のシステム開発に携わる。1998年、独立系FPに転身。現在は、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイトへの執筆、個人相談等で幅広く活躍。2009年12月に乳がんに罹患し、以来「メディカルファイナンス」を大テーマとし、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動も行っている。CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。
●黒田尚子FPオフィス

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル編集部
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子