長い夏休みの終わりに、学校へ戻ることが辛くなる子どもたちがいることは、テレビなどでも頻繁に紹介されるようになりました。学校へ行きたくないと悩んで、自殺にまで追い込まれる子どもがいることは社会問題の一つと言えるでしょう。学校という社会とうまくなじめず苦しむ子どもたちの声を紹介しているNPO法人全国不登校新聞社、編集長の石井志昂さんにお話を聞きました。
当記事はFMラジオJ-WAVE「JK RADIO TOKYO UNITED」の番組で、世の中をもっと楽しく、グッドにするためのアクションを紹介する『COME TOGETHER』より許可を得て加筆転載しています
■全国不登校新聞社とは?
不登校・ひきこもりの専門紙『不登校新聞』を発行している新聞社です。誤解されることも多いのですが、これは「不登校を治すための新聞」ではなく、不登校の人が学校へ行く・行かないにこだわらず、これからどう生きていくのかについて考え、多くの人の実体験を当事者やその親が知るための新聞です。
■発足のキッカケは?
20年前に起きた「9月1日の子ども自殺」がきっかけだと言われています。「学校へ行くか死ぬかしかない」と追い詰められた子どもに向けて発信したいと創刊されたのがこの新聞です。不登校の問題にかかわる人のあいだでは、夏休み明けの自殺は20年以上前から注視されていた問題なのです。
■石井さんが参加した動機を教えてください。
私自身が中学2年生のときから不登校だったことです。18歳のときに『不登校新聞』の創刊号の企画で取材を受け、以後はボランティアで取材する側にまわり、19歳からスタッフとして働いています。
■利用者(購読者)は、どんな人たちですか?
購読者は沖縄から北海道まで全国に3000人いて、読者の9割は不登校家庭の人です。
■どんな理由で、子どもたちは不登校を選択するのでしょうか?
文科省の実態調査によると、いじめを含む「人間関係」を理由に挙げた人が2人に1人です。ほかに多いのは先生や部活、勉強を理由に挙げる人です。勉強を理由に挙げた人は「勉強ができない人」ではなく、むしろ「勉強ができる優等生」ですが、親や周囲が期待すればするほど「自分はできない」と苦しむ人もいるのです。不登校とは、たくさんの理由が折り重なって、本人も「がまんにがまんを重ねたけど、もう学校へ行けない」という状態を指して言うのです。
■不登校新聞の記事の内容はどのようなものですか?
メインは「当事者の声」です。不登校のときに何を感じたのか、そして不登校を経て、いま何を感じているのか。ここに生きた不登校の姿があり、その姿から学ぶことが一番だと考えているからです。それらの当事者の声をメインに、ほかには親や精神科医ら専門家、さらに第三者の意見も掲載しています。そのなかには樹木希林さんの言葉などもありました。
■「不登校」の問題に、子どもはもちろん、親も悩むのだと思います。不登校という選択を、団体ではどのようにとらえていますか?
不登校は「甘え」や「怠け」だと言われてきました。本人も「自分は弱いダメ人間だ」と葛藤します。親も自分を責めます。「育て方が悪かったのかもしれない」「働きに出たのがよくなかったのかもしれない」などと思うのです。でも、そうではありません。学校へ行かないのには、その人なりの理由があります。
子どものころはすぐ言葉にできないかもしれませんが、学校へ行けないのは、その人がその人らしく生きていくために必要な理由があるからです。決して譲ってはならない理由があったからです。
学校へ行けないことを悪にするのではなく、その人がその人なりに生きていくための手段として不登校、つまり「学校外の道」があってもいいのではないかと私たちは考えています。
■この活動を通して発信したいことを教えてください。
いちばん伝えたいのは、創刊したときの思いです。学校だけが生きる道ではなく、不登校になったから人生が終わるわけではないということです。1000人以上の不登校、ひきこもりの人たちや、その家族の声を紹介する不登校新聞のウェブサイトをぜひご覧ください。そして同じ悩みを持つ人たちがいることを知ってください。
<インフォメーション>
NPO法人全国不登校新聞社
●http://www.futoko.org/