スーザン・ケイン氏が説く「内向型の人が秘めている力」(※)についての論考、そして「内向性」を活かしている組織・東京糸井重里事務所での取材など、ライフネットジャーナル オンライン編集部では、「内向性」に関するさまざまな事例の研究やインタビューを実施しています。
その活動の中で、身近な人に「内向性」についてアンケート調査をしてみたところ、ある大きな仮説が浮かび上がりました。それは、一概にすべての人が「内向性」に関する全ての特徴を備えているわけではなく、どうやら内向性にはいくつかの「タイプ」がありそうだ、という点です。
そこで本記事では、このあたりの経緯とその「タイプ」について考察してみます。
(※)スーザン・ケイン氏の定義では、外部からの刺激がある程度大きくなければ脳が活性化しないタイプが「外向型」、小さな反応で十分に活性化し、大きすぎる刺激には疲れてしまうタイプが「内向型」。外部とのコミュニケーションによって恐怖を感じる「内気」と、この「内向型」とは別物。
今回のアウトラインです(読了5分)
■アンケートから見えてきたこと〜内向性にはタイプがある〜
■仮説:内向性の5つのタイプ
①“邪魔されたくない”タイプ
②“親しい人とひっそり”タイプ
③“発言抑制”タイプ
④“聞き手”タイプ
⑤“少人数好き”タイプ
■なぜ人によって「内向性」のタイプが分かれるか?
それでは、本編です。
■アンケートから見えてきたこと〜内向性にはタイプがある〜
そもそも、この「内向性」についての調査をしたときに、最初に目に飛び込んできたのは、スーザン・ケイン氏の書籍の中で紹介されている、「内向性の人があてはまる項目」でした。
内向性の人があてはまる項目
(出典:スーザン・ケイン「内向的な人が秘めている力」) |
そこで、これらの項目に関して、編集部の身近な方々に、どの程度自分が当てはまるか10段階で評価するアンケート調査を行ったところ、意外な結果が出ました。
これらの項目のスコアは「一律に低い人」「一律に高い人」と分かれるのではなく、人によって「この部分が低い」「この部分が高い」という違いがある点が、編集部の予想と大きく違っていたのです。
つまり、「全方位的に内向的である」という人ばかりのではなく、実際には「人によって内向性を発動する場面」が違うということのようです。
この調査結果を基に「因子分析」という手法で分析したところ、「内向性」には大きく分けて5つの「タイプ」がありそうだということが見えてきました。
編集部では、さらにその5つの「タイプ」について、特に特定項目についてスコアが高い人にヒアリングを行い、その傾向をとりまとめてみました。
■仮説:内向性の5つのタイプ
①“邪魔されたくない”タイプ
●このタイプの人が高いスコアを付ける項目
「独力での作業でこそ最大限の実力を発揮する」
「他人と衝突するのは嫌いだ」
「仕事や作品が完成するまで、他人に見せたり意見を求めたりしない」
●具体的な特徴
よく「仕事は60点の段階で見せて、フィードバックをもらいながら改善するのがよい」と言われることがありますが、このタイプの場合、それが逆効果になることがありそうです。自分が手がけている仕事は、自分で納得が行くところまでは先ずやりきり、その後に他の人に見せたいというのが、このタイプの特徴です。
●苦手な外部刺激=未完成状態への介入
②“親しい人とひっそり”タイプ
●このタイプが高いスコアを付ける項目
「誕生日はごく親しい友人ひとりか2人で、あるいは家族だけで祝いたい」
「もしどちらか選べというなら、忙し過ぎる週末よりなにもすることがない週末を選ぶ」
「外出して活動したあとは、たとえそれが楽しい体験であっても、消耗したと感じる」
●具体的な特徴
このタイプの方は、往々にして「初対面の人たち」「関係性が薄い人たち」と一緒に時間を過ごすことを苦痛と感じたり、疲れると感じたりします。仕事であったり、特定の深いテーマを協同して取り組む場合にはそこに没頭することができるため問題ないのですが、「セミナーの後の交流会」や「部署を超えた全社でのパーティ」といった場面では、大きな負荷を感じてしまいます。
●苦手な外部刺激=初対面の人と接すること
③“発言抑制”タイプ
●このタイプが高いスコアを付ける項目
「考えてから話す傾向がある」
「物静かだ、落ち着いている、と言われる」
「ワークショップ形式とレクチャー形式なら、レクチャー形式が好きだ」
●具体的な特徴
俗に言う「口数が少ない」という方々が、このタイプになります。人によっては「お互いに言葉を交わし合いながら、インタラクティブに物事を考えていく」ということもありますが、このタイプの場合は、じっくりと自分の中で考えを反芻し、研ぎ澄まされた内容だけを発言します。「発言してこそ、会議に参加する意味がある」というスタンスは、必ずしもこのタイプにはあてはまらないかもしれません(この点に関する詳細は、前回記事をご参照ください)。
●苦手な外部刺激=当意即妙のやりとり
④“聞き手”タイプ
●このタイプが高いスコアを付ける項目
「集中するのは簡単だ」
「聞き上手と言われる」
●具体的な特徴
「聞き上手」であるこのタイプは、先ほどの「発言抑制」タイプとは似て非なる存在です。口数は多かったとしても、質問が多かったり、相手に対する興味を引き出したりする投げ掛けが多く、接する相手からすると「この人に聞いてもらうと、心地いいなあ」と思われやすいのが、このタイプの特徴です。ただ、その分自己主張する割合が相対的に少なくなり、周りから「イニシアチブが弱いなあ・・・」と受け取られてしまうこともあります。
●苦手な外部刺激=主導権を発揮すること
⑤“少人数好き”タイプ
●このタイプが高いスコアを付ける項目
「グループよりも1対1の会話が好きだ」
●具体的な特徴
このタイプの特徴は、多くの人との「場」を持つことが苦手であり、人との接点は1対1を好み、特定のテーマや、特定の興味関心などをベースに話を進めることが好きです。例えば、飲み会で8人以上の大人数になっても、隣に座っている人とだけ話をしたり、話題の合う人のところにすぐ移動したりするのが、このタイプです。「場の空気を読まない」などと、場合によっては思われてしまうのがこのタイプの大変なところです。
●苦手な外部からの刺激=多人数への対応
■なぜ人によって「内向性」のタイプが分かれるか? 考えてみた。
この調査・分析結果は、内向性そのものとどのような関係があるのか。編集部では、現段階で以下の図のように考えています。
つまり、先ほどの各タイプは、外界から本人に入ってくる「刺激」のコントロールの仕方に違いがあり、何の刺激を抑制するために何の「弁」を使うのかを表しているという考え方です。
初回の記事でご紹介したのは、「内向性」の高い人すなわち、自分の「扁桃体」というセンサーの感度が高い人は、それぞれの感度に応じて、外部から入ってくる刺激の量を少なくするよう調整しているというものです。
それに対して、今回の分析でご紹介した仮説である内向性の「タイプ」は、さまざまな外部刺激のうち、何を具体的にシャットアウトしているかという行動の現れではないか、ということです。
例えば、先程ご紹介した「タイプ①“邪魔されたくない”」の場合、何かを作っている途中で周囲にちゃちゃを入れられる「未完成への介入」という外界からの刺激をカットし、それにより自分への過度な刺激をコントロールをするという具合です。
ですので、内向性がとても高いタイプの人、言い換えると外界からの刺激をかなりシャットアウトしたい人の場合は、複数の弁を閉じており、先程挙げた5つの「タイプ」の多くに当てはまることになるのではないでしょうか。
以上、今回ご紹介した「タイプ」という考え方とアプローチは、あくまで現段階での編集部仮説にすぎません。
この仮説を脇に抱え、これからさらに、さまざまな方へのインタビューなどを交え「内向性」に関する深い検討を進めていきたいと考えています。
いかがでしたでしょうか?ご自分にはどれかあてはまりそうなタイプ、切り口はありましたでしょうか?
<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン編集部