3人に1人は就労可能年齢でがんになる(*)時代。教育費や養育費がかかるお子さんがいるご家庭で、もし親ががんに罹患したとしたら、家計や子育てにはどのような影響があるのでしょうか。
*出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター

ライフネット生命保険では、一般社団法人キャンサーペアレンツと共同で、子育て世代のがん患者を対象にアンケート調査を実施しました。その結果、2人に1人が「がん罹患によって、子どもの教育計画に影響があった・今後ある」と感じていることが明らかに。具体的にどのような悩みを抱えているのか、たくさんのリアルな声が届きました。

【調査概要】
■調査タイトル:一般社団法人キャンサーペアレンツ×ライフネット生命保険共同調査
「子育て世代のがん患者における教育費に関する調査」
■調査対象:キャンサーペアレンツの会員(子どもをもつがん患者)
■有効回答:398名
■調査方法:インターネット調査(キャンサーペアレンツ『キャンサーベイ』を利用)
■調査実施時期:2019年1月

■数字で見る、がん告知を受けた親の切実な状況

今回のアンケート回答者の年齢は40代(58.3%)と50代(21.4%)が約8割を占め、全体の約95%が「がん罹患当時子どもがいた」と回答しています。

【現在の年齢】

【最初のがん告知(診断)を受けたときのご家族について/子ども】

最初にがん告知を受けた年齢も40代が55.0%と最も多く、次いで30代が32.9%となっています。

【最初にがん告知を受けたときの年齢/現在の年齢】

がん告知前後の世帯収入を比較した調査では、年収が「300万円未満」と「300万円以上600万円未満」の人で、「告知後収入が減った」という人の割合が高くなっています。

【最初のがん告知(診断)の“前”の「世帯」年収】
【最初のがん告知(診断)を受けた“後”、一番下がったタイミングでの「世帯」年収】

がん罹患後、金銭面の支援を受けたものを見てみると、「民間の保険会社からの給付金」が72.6%と最も多く、次いで「親からの金銭的な援助」が35.7%、「傷病手当金」が31.4%となっています。民間や公的な給付金だけでなく、「親」や「祖父母・親戚」など身内から金銭的な援助を受けた人も一定数いることがわかります。

【がんに罹患したことで、金銭面の支援を受けたもの】

がん告知後の家計の管理に関して、さまざまなエピソードがありました。

  • 子どもを大学に通わせるために、奨学金を借りた
  • 交際費や娯楽費、通信費(携帯電話、インターネット等)を見直した
  • 外食の回数を減らし、自炊を心がけた
  • 食費の支出が大きいが、子どもが食べ盛りだと抑えるのは難しい

親ががんになったということで子どもの生活に影響を与えたくないと思う反面、収入や罹患後の体調を考えるとなかなか望み通りにはいかない……。そんな親の葛藤が浮き彫りになりました。

■53%以上の親が、がん罹患の子育てへの影響に不安を抱えている

もう少し具体的に、がんに罹患した親御さんの子育てに関する悩みを見ていきます。

【がんに罹患したことで、子どもの進路など教育計画に影響はあったかどうか】
【影響があった(または今後影響があると考えている)のは、いつ頃か(第○子・時期)】

親のがん罹患が子育てに「影響があった」という人は22.1%、「今後影響があると考えている」という人は31.7%で、2人に1人が「子育てへの影響があった/今後影響があるだろう」と感じていることがわかりました。また、「影響があった/今後あるだろう」と考えている子どもの年齢は、第一子〜第四子のすべてで「13歳以上18歳以下」が最も多くなっています。

がんになったことが理由で、奨学金や教育ローンを利用したかどうかを聞いてみると……

【がんに罹患したことが理由で、子どもが奨学金を利用した経験があるかどうか】

【がんに罹患したことが理由で、教育ローンを利用した経験があるかどうか】


「奨学金を利用した」という人は11.1%、「教育ローンを利用した」という人は4.6%という結果に。

教育計画への影響、また今後の子育てへの不安についての親御さんの声をいくつか拾ってみましょう。

【具体的にどのような影響があったか】

  • 習い事、塾を辞めさせた
  • 進学を諦め、就職してもらった
  • 公立への進学を勧めた

【今後影響があると考えていること、不安なこと】

  • 子どもがやりたいことを我慢してしまうのではないか
  • まだ幼い子どもを公園や児童館に連れて行けない。保育園にも入れない
  • 収入を増やすために働かなければいけないが、体調が不安

親としては、親のことを慮るあまりに家庭の事情を優先して、子どもが遠慮をしたり我慢をしたりするというのは本望ではないはずです。一方、親への愛情から「自分が我慢をしなければ」と思うのもいじらしい子ども心……。親も子も、経済的な理由で治療や夢をあきらめることなく、生活を送っていくためには、やはり「がんになっても働き続けられる」ことが大切です。

ライフネット生命保険は、がんを治療しながら働くがん患者を応援する民間プロジェクト「がんアライ部」に取り組んでいます。「がんに罹患しても、家族や子どもに不自由な思いをさせたくない」「がん罹患前と変わらない生活をしたい」──そんな子育て中のがん患者の悩みに企業などが寄り添い、がんが原因で仕事や子育てを諦めることがない社会が実現されることを願い、これからも活動を続けていきます。

●がんアライ部公式サイト

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
協力/一般社団法人キャンサーペアレンツ

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