LOVE & Co. 理事・山下恵子さん

地域の野良猫を保護し、里親の元での安全な生活につなげる活動を行っている、一般社団法人LOVE & Co.。理事の山下さんへのインタビュー後編では、保護したい野良猫を見かけたらどうするべきか、そして意外と知られていない野良猫を取り巻く過酷な環境についてお伺いします。(前編はこちら)

■できる限り個人で、責任を持って保護を

──いま住んでいる地域にとても野良猫が多くて、見かけるたびに「ちゃんとご飯食べているのかな?」「安全に休める場所はあるのかな?」と心配になります。そういう野良猫を保護したい、と思ったら、LOVE & Co.さんにどのように相談すればいいでしょうか。

山下:保護依頼は頻繁に来るんですが、うちはもうすでに保護できる数が限界なので、できる限り、個人でがんばって欲しいと伝えています。「助けたい」という気持ちがある方には、保護の仕方や保護したあとどうするべきか、などのアドバイスをしています。

先日猫の保護の仕方についてのワークショップを開催したんですが、保護したい猫がいる方がたくさんいらっしゃいました。捕獲器の設置の仕方や、設置する際の注意点など、実際に個人で保護活動をしていらっしゃる講師の方に解説していただきました。とても好評だったので、年内にもう一度開催する予定です。オンラインで配信して、たくさんの方に見ていただけるようにしたいと考えています。

──野良猫の捕獲は慣れている方でも難しいですよね。

山下:そうですね。ここにもいるんですけど、人の顔を見ただけで「シャー」って威嚇する子もいますし(笑)。

保護猫・チヨ子ちゃん(#loveandco_chiyoko)の「シャー」顔がモチーフになった、その名も「LOVE ME CHIYOKOLATE」

保護猫たちの個性が光る、代表・今村さんデザインのオリジナルグッズ

──一人ひとりが知識として、どういう風に保護したらいいかを知って、実際にやってみないとわからないですよね。

山下:そうですね。野良猫って本当に環境が過酷で、長生きもできないですし、できる限り保護して里親さんを探して、安全なおうちに住まわせてあげたいです。車も危ないし、野良猫をいじめたり、虐待したり、猫を嫌いな人もいるので、そういう人からも守りたいというご相談もあります。

──猫が嫌いな人や、アレルギーを持ってる人もいますけど、うまく共生できたらいいですよね……。

山下:それに、野良猫を減らしたいという思いもあります。保護猫を家族に迎えるという選択肢をもっと広めたいです。

大将くん(#loveandco_taisyo)はまだまだお昼寝中……。(前編でも寝姿を披露しています)

■保護猫ならではの魅力、そして注意すべき点とは?

──実際に保護猫を飼うとき、ペットショップで買う猫とは違うオススメの点や、逆に注意してほしい点はありますか?

山下:まずはオススメの点から。例えば、だいたい保護されている猫って、子猫もいますがほとんどは大人猫。だいたいどんな猫なのか、性格がわかっているので、「こういう猫がいいな」という理想がある方とマッチングしやすいです。ペットショップなどでは本当に小さい子猫が売られているので、見た目とか、独特の可愛らしさに惹かれて飼い始めたものの、成長したら手に余って捨ててしまう、というケースも少なくないんです。

逆に気をつけてほしいのは、脱走。野良猫は外の世界を一度知っているので、ちょっとした隙間から脱走してしまいます。今年も何件か、里親さんのお家から脱走したり、一時預かりボランティアさんのお家から脱走したり、というケースが続いていて……。幸い、みんな戻ってこられたんですけど、そこだけは本当に気をつけていただきたいです。

──LOVE & Co.さんのウェブサイトにも書いてある、里親の条件にも「生涯室内飼いをしていただける方」という条件がありますよね。

山下:昔はお家を自由に出入りして飼うこともありましたが、やっぱり病気や怪我、事故もありますし、どういうきっかけで安全な室内に戻ってこられなくなるかわからない。野良猫が暮らしている環境の厳しさを知っているだけに、危険の多い外には二度と出て欲しくないんです。

オフィスの奥の部屋にいた勝新くん(#loveandco_katsushin)と目が合いました。ちょっとお耳がぺとーんとしています。知らない人にびっくりしたかな、ごめんね。

──なんとなく猫って自由気ままにに出入りする、そういう飼い方のイメージが強かったんですが、外の環境はそれだけ危険が多いんですね……。

山下:外は過酷です。私自身、以前多摩川沿いで、ホームレスの人と一緒に暮らしていた猫たちに餌やりをしていたんですが、夏は洪水で川が氾濫しそうになって川辺の木に登って避難したり、冬は雪が降って極寒の中寒さをしのいだり。命を落とす子もいます。ありがたいことにその猫たちはみんな保護して、里親さんが決まりましたが、「脱走しないで!」と願っています。

──見かけるたびに心配になってしまいます……。野良猫を見かけたら、ご飯をあげたほうがいいんでしょうか?

山下:ご飯をあげるなら、地域猫としてちゃんと手術をするか、可能であれば自分で保護して、室内飼いしてほしいです。ただご飯をあげ続けるのは、繁殖のお手伝いをしているようなものなので。でも、あげたくなっちゃいますよね。私もよく葛藤します。

──そうなんですね。「正しい野良猫の付き合い方」というような情報発信が必要ですね。

山下:地域の方の理解を得られていないと、トラブルになることもあるので、例えば私が行っていた多摩川では、事前に行政の了解を得ていました。そうすれば知らない人から「こんなところで餌をあげるな」と言われても「行政の了解を得ているので」と胸を張って活動できます。必要な手続きなどを自治体のウェブサイトから調べたり、区や地域で活動している方にコンタクトを取ったり、検索すると色々出てくるので、まずは自分で調べてみてください。

インターネットの情報は何が正しいのか、わからなくなる時もありますが、なるべくたくさん情報を入手して、そこから自分で判断していただいて、それでもわからないことがあれば、ぜひ私たちに相談してください。

──かわいいからと無責任に繁殖させるようなことはせず、また、猫を好きな人ばかりではないことも念頭に、自治体・住む人・猫たちがそれぞれに心地よい距離感で暮らしていける、そんな環境を作れるといいなと思います。願わくば、みな、安全な屋根の下で生きていければいいですが……。まずは、LOVE & Co.さんのグッズを買って、微力ながらお手伝いをと思います。本日はありがとうございました。

<インフォメーション>
一般社団法人LOVE & Co.
LOVE ME SHOP

<クレジット>
取材・文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
撮影/横田達也