社会保険労務士(社労士)でもあるファイナンシャル・プランナーの中村薫先生の「だれも教えてくれなかった社会保障」シリーズ。今回は国民年金について。私たちが支払う保険料の割引制度について教えてもらいましょう!


今回のポイント

  • 口座振替やクレジットカード払いもできます
  • 保険料を前払いすると割引があります
  • 最も割引額が大きいのは口座振替
  • 受け取る年金を増やしたいなら「付加年金」を活用

自営業であったりフリーランスで企業に属さずに働いていたり、学生の人、そして配偶者は国民年金の保険料を自分で支払う必要があります(会社員や公務員の方で、勤務先を通じて厚生年金に加入している方は、自動的に国民年金にも加入することになり、保険料は給与天引きで支払います)。

国民年金には、支払方法や支払回数によって、保険料が割引される制度があり、ご自身が選んだ払い方によって割引額が異なります。今回はまず、自分に合ったお得な払い方について確認してみましょう。

※専門的な用語をできるだけわかりやすい用語に置き換えています。また、詳細な説明を省略しているため、すべての要件などまで触れていません。

■口座振替やクレジットカード払いもできます

令和2年度の国民年金の保険料は月16,540円と定められています(保険料は物価や賃金の変動によって、毎年変わります)。
毎月払い、半年払い、年払い、2年払いなどがあり、支払方法は以下の3種類があります。

  • 現金
  • 口座振替
  • クレジットカード

現金払いの場合、4月に「領収(納付受託)済通知書(以下「納付書」)」という振込用紙のようなものが郵送されてきます(納付書が郵送される時期は場合によって異なります。詳しくは日本年金機構のウェブサイトを確認してくださいね)。

毎月払い用・半年払い用・年払い用の中から、自分が払える金額を選んで使ってください。

支払いは銀行や郵便局はもちろん、コンビニやPay-easy(ペイジー)払いも可能です。
仮に1年払いを選んだ場合は1回で支払いが済んでしまいますから、月払いや半年払いの納付書は処分して構いません。

口座振替やクレジットカード払いの場合は、口座振替のスケジュールや引き落とし金額に関するお知らせが届きます。引き落とし日までに口座にお金を入れておくことを忘れずに!

■保険料を前払いすると割引があります

国民年金の保険料は、「前納」といって、半年分や1年分、もしくは2年分など前倒しで払うと割引されます。前納する額が大きいほどお得度が増す仕組みです。それぞれの支払い方法ごとに、割引額を確認してみます。

【現金もしくはクレジットカード払いの場合】
月払いの場合、1年間で支払う保険料の合計額はどちらも198,480円ですが、前納すると以下のように割引があります。

前納の保険料と割引額(現金、クレジットカード払いの場合)※令和2・3年度の保険料で計算

  保険料 割引額
月払い
(1年分)
16,540円
(198,480円)
──
半年前納
(1年分)
各98,430円
(196,860円)
各810円
(1,620円)
1年前納 194,960円 3,520円
2年前納
(1年分)
383,210円
(191,605円)
14,590円
(7,295円)

※2年前納の場合、令和3年度分の保険料の合計は199,320円です。

2年分をまとめて払えば約15,000円程度の割引があると考えると、手元の資金に余裕がある場合は長期の前納を選ぶと良いですね。ただし、病気やケガ、災害などの際の生活基盤の維持に必要な資金を削ってしまっては本末転倒です。学費や自動車購入といった大きな出費の予定がある場合は、無理のない範囲で支払ってくださいね。半年分程度の生活費を含めた予備費を残しておくように心がけましょう。

【現金で2年分の前納をしたい場合】
現金払いの場合、2年分の前納のための納付書は郵送されてきません。年金事務所へ電話して納付書をもらってくださいね。

なお、前納には期日があり、それを超えると前納できなくなるので気をつけてください。

【クレジットカード払いで支払いたい場合】
毎年2月末までに、年金事務所へ申出書を提出する必要があります。
クレジットカードでの支払方法に変更したい場合は、年金事務所の窓口に行ったり、郵送で書類を送ったりする方法があります。手続きには1カ月程度かかることがありますから、日本年金機構のウェブサイトで必要な書類を確認してくださいね。

■最も割引額が大きいのは口座振替

現金払いとクレジットカード払いの割引率は同じですが、口座振替で支払うと、月払でも割引があり、半年、年払い、2年払いはさらに割引額が増えます。

口座振替の保険料と割引額

  保険料 割引額
現金月払い
(1年分)
16,540円
(198,480円)
 ──
月払い
(1年分)
16,490円
(197,880円)
各50円※
(600円)
半年前納
(1年分)
各98,110円
(196,220円)
各1,130円
(2,260円)
1年前納 194,320円 4,160円
2年前納
(1年分)
381,960円
(190,980円)
15,840円
(7,920円)

※早割(当月保険料を当月末引落し)で納付した場合

ただ残念なのは、令和2年度分の半年前納(前期)、1年前納、2年前納の受付は、令和2年2月末ですでに終了しています。来年からは!という人は来年2月までに手続きをしておきましょう(今からしておくと安心ですね)。
令和2年度後期の半年前納の受付は8月末までです。4月に納付書が届いていたけれど口座振替に切り替えたい!という場合は、間に合うように手続きをしましょう。

■受け取る年金を増やしたいなら「付加年金」を活用

「付加年金」という制度があります。これは保険料を毎月400円多く払うと、年金が200円増えるという制度です。「なーんだ、たいしたことないじゃん」と思わないでくださいね、計算してみましょう。

上乗せされる年金の金額は、「200円×付加保険料納付月数」です。
例えば、20歳から60歳までの40年間、毎月の保険料を400円多く払った場合、付加年金の額は96,000円となります(※200円×付加保険料納付月数480月(40年分)=96,000円)。
この96,000円が毎年、65歳から受け取る老齢基礎年金に加算されます。

  • 支払った金額(20歳から60歳までの40年間、毎月400円多く納めていた場合)
    付加保険料400円×480月(40年分) = 192,000円
  • 受け取る金額
    付加年金額96,000円×老齢年金の受給年分

ですから、受け取ることができる付加年金額が192,000円以上であれば、自分が支払った金額以上に老齢年金を多く受け取れる可能性があります(この場合だと、付加保険料を納めた分については2年間分で元が取れる計算になりますね)。

他にも上乗せした年金を受け取る方法としては、国民年金基金に加入するという選択肢もあります。なお国民年金基金に加入すると、付加年金制度は利用できないのでご注意ください。
掛金はグッと高くなりますが、税制メリットもある制度です。

 

今回は国民年金の保険料の割引をメインにお伝えしました。
次回は「保険料の免除」制度について紹介します。長い人生、病気やケガをしたり、災害等で収入がなくなったりして、保険料を払うのが難しい場合もあります。
そんなときのための制度ですから、ぜひ確認しておいてくださいね。

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<クレジット>
●なごみFP・社労士事務所 中村 薫

<プロフィール>
1990年より都内の信用金庫に勤務。退職後数ヶ月間米国に留学し、航空機操縦士(パイロット)ライセンスを取得。訓練中に腰を痛め米国で病院へ行き、帰国後日本の保険会社から保険金を受け取る。この経験から保険の有用性を感じ1993年に大手生命保険会社の営業職員となり、1995年より損害保険の代理店業務を開始。1996年にAFP、翌年にCFP®を取得し、1997年にFPとして独立開業。2015年に社会保険労務士業務開始。キャリア・コンサルタント、終活カウンセラー、宅地建物取引士の有資格者でもある。