(画像はイメージです)

こんにちは、ライフネットジャーナル編集部です。

今回ご紹介するのは、重い病気を抱えた子どもとその家族のための「子どもホスピス」です。「子どもホスピス」は、子どもがやりたいようにできること、そして子どもを支える周りの人も安心して過ごせることを目的としています。

私たち編集部は、院内学級で子どもたちを見守ってきた小児科の先生や、がん治療をしながら働く方たちに話を伺ってきました。みなさんがよくおっしゃっていたのは、病気によって自分らしさを保ちづらくなることがあるということ。そして、周りにいる身としては、病気のことにどう触れていいかわからず、コミュニケーションに戸惑うことがあるということ、でした。どちらも起こりうることですが、実際に自分がそういった状況になったら、どうしたらいいかわからないだろうと思います。

誰でも、誰かに支えられていることを申し訳なく思ったり、言いたいことややりたいことを遠慮したりすると思うのですが、自分の大切な人には、気を遣うことなくのびのびとした毎日を過ごしてほしい、と思う気持ちもありますよね。

そんな思いをサポートしてくれるのが、今回ご紹介する「子どもホスピス」です。子どもたちが、「子どもらしく」成長するために、さまざまな工夫がなされています。

■病気と闘う子どもたちの成長・発達のための場所

「子どもホスピス」ができた背景には、小児福祉・医療が抱える課題のひとつである、重い病気を抱えた子どもたちが、さまざまな体験を得る機会が少ないことが挙げられます。入院や治療に多くの時間を費やされ、両親やきょうだいなど家族と触れ合ったり、学校へ行ったりすることが難しいケースがあり、また、ご家族が24時間ケアを行っている場合、外とのつながりが減って孤立しやすいという懸念もあります。「子どもホスピス」は、これらの課題解決にも取り組んでいます。

世界で初めてつくられた子どもホスピスは、1982年にイギリス・オックスフォードに開設された「ヘレン・ハウス」。ヘレン・ハウスは、医療的なケアだけでなく、子どもとその家族のリフレッシュを主としたケアを行ってきました。

ヘレン・ハウスがこうしたケアを行うようになったのは、自宅で病気の子どものケアをしていた両親が疲れているという連絡を受け、子どもを預かり、両親に一時的に休んでもらったことがきっかけだそうです。

子どもたちの生活の質の向上に加えて、その家族のサポートにも焦点を当てたことは、日本の多くの子どもホスピスの設立に影響を与えています。

■子どもが子どもらしく過ごすために

日本の子どもホスピスには、主に2種類のタイプがあります。ひとつは、2012年に大阪市・淀川キリスト教病院に開設された「こどもホスピス病棟」のように、小児緩和ケアを中心とした病院併設型の子どもホスピス。もうひとつは、2016年に同じく大阪市の鶴見区に設立された「TSURUMIこどもホスピス」のように、病院に隣接しないコミュニティ型の子どもホスピスです。「ヘレン・ハウス」と同様に、寄付で運営されており、無料で利用することができます。

病院が医療を提供することが主な目的であるのに対し、子どもホスピスは、子どもとその家族が楽しく過ごせることを大切にしています。そのため、施設内にはプレイルーム、学習スペース、図書室や、スヌーズレンルームという、音や光の感覚刺激をリラクゼーションとして楽しめる部屋などが整えられ、地域の住民を招いたイベントを開催するなど、社会とのつながりをつくることも重視されています。

同世代の友達と遊ぶ。先生に勉強を教えてもらう。図書館へ通ったり、遠くへ出かけたりする。こういったことが難しい子どもたちにとって、子どもホスピスで友達や家族と一緒に過ごせることが、子どもたちの発達と成長につながっています。

また、長期滞在に加え、デイサービスなどの一時的な滞在も可能です。小児専門の看護師のほか、保育士や理学療法士、ソーシャルワーカーなどが参加し、医療機関と連携してケアを行うことが多いようです。自宅治療で子どもの体調から目が離せない家族の精神的・体力的な負担を軽減する目的でも利用できるようになっています。

子どもホスピスは、病気を抱える子どもとその家族にとっての「第二の家」として、その役割を果たしているのです。

■編集後記

子どもか大人か、病気にかかっているかに関係なく、周りの大切な人と自分を支えるために、どんな場所があったらより居心地がよくなるのか──。
「子どもホスピス」の主な目的は、重い病気を抱えた子どもとその家族を支えることですが、ケアが必要な人だけでなく、社会全体で考えていくべきことだと思いました。

日本各地では子どもホスピスを広げるプロジェクトが動き出しています。興味が湧いた方はぜひ子どもホスピスのことを調べてみてはいかがでしょうか。

<インフォメーション>
TSURUMI こどもホスピス
淀川キリスト教病院 小児科(こどもホスピス)

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部