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前回は、平成が終わり令和を迎えたタイミングで、昔にいた生命保険会社での記憶を振り返っていた高橋。今回はそれに続き、当時の業界の働き方を振り返ります。


前回の社員ブログで令和のはじまりにあたり、平成の最初を振り返ったブログを書いたところ社内ブログの社員投票で2位にしていただき、受賞記念ブログなるものを書くことになりました。せっかくですので、前回の続きとして平成の前半を振り返ってみます。以下に記すのは私がライフネット生命に転職する前の一個人の経験です。

ビジネススタイルとしては、まだ、昭和の風習が残ってはいましたが、徐々に消えていった時期でした。また、生保業界にとっては、バブル崩壊からの経済低迷と金融危機による保険会社の破綻が相次いだ時期でもありました。

風習としては、その当時、あらゆる書類に印鑑を押す必要がありました。保険契約はもちろん、お客さまの手続き書類についても全て押印が必要でしたので、印鑑照合という作業が必須でした。押印された印鑑を、届け出された印鑑の印影と照合するのですが、欠けている印鑑もあり、証券等の届出印と合わせてみたり、透かしてみたり、試行錯誤しながら照合作業をやっていたことが懐かしいです。

社内の申請や決裁も全て押印が必要で、商品改定や金融庁への申請等の何か重要決定を行う稟議(りんぎ)手続では、起案部署の役職者が押印した書類を、さらに関連各部課に回してそれぞれの責任者に押印してもらいます。その場合、必ず役職の低い人から高い人へ回すのがルールになっていました。私は平成の最初から商品開発に携わっていますが、商品開発にあたっては多くの関連部署があり、まず、各課の課長を回り押印してもらい、次に部長を回り、役員も取締役、常務、専務、と役職順に回り、最後に社長に押印してもらいます。十数人の押印をもらうために役員等の忙しい人たちを引き留めなければならず、1週間近くかかっていました。人によっては必ず説明を求める人や、案件に疑問を呈する人もいました。

稟議が終わると、今度は申請の認可や決定が実行された後に、報告書を回します。これは稟議の内容がどうなったかを報告をするものです。報告書の場合は、社長から専務、常務、取締役、部長、課長と役職の高い人から順番に、押印をしてもらう必要がありました。今だとメールで一斉に報告すれば済みますが、1回の稟議と報告との往復で40人近い人から押印してもらうために、タイミングを見計らったり、遅くまで待ったりと、大変な仕事でした。

当時の習慣として、重要な書類は手書きで、という習慣も残っていました。机の上には書類とペンしかなかった時代から、平成前半にはワープロが使われだし、90年代後半からは徐々に机の上へパソコンも置かれる時代へと変わっていきました。

しかし、イレギュラーな処理の依頼や特別なお願いをするような申請書などは、必ず手書きで作成していました。複写便箋という、1枚目の裏にカーボン紙が付いた便箋があります。あまり見たことがない人もいるかと思いますが、複写の領収書と同じようなものです。その便箋に手書きで記載し、1枚目の記載したものは手元に残しておき、2枚目の複写された部分に、印鑑を押して提出していました。全部手書きなので、間違えると書き直さなければならないため、何枚も無駄にした記憶があります。最初から書くと間違えるので、ワープロやパソコンで作成したものを複写便箋に転記する人もいました。転記するのでさえ、慎重にやっていても間違えるので、再度書き直すこともあり、本当に骨の折れる仕事だったなと思います。

パソコンのビジネスへの普及時期は、不慣れなこともあり、今から考えると非効率なことや不思議な光景がありました。たとえば、パソコンで文書を作れず、手書きの原稿を作成してからパソコンに打ち込む人もいました。また、パソコンの使えない人のためにメールを紙にコピーして回覧していたこともあり、今なら笑い話になりそうです。

始まったばかりの令和の時代ですが、リモートワークの推進などの職場環境やビジネス環境、経済環境などは大きく変わっていくことでしょう。10年後に振り返ったとき、不思議なことをやっていたなと感じることもあると思います。

商品開発部 兼 保険金部
高橋