――勤務中の空いている時間にできるとか?
寺田:いやいや(笑)。実はドクターズミーに登録されている医師は8割くらいが女医さんなんです。特に産休中の方が多い。
――なるほど。自宅で育児をしながら回答できるわけですね。
寺田:ええ。専門知識を生かしながら、在宅ワークができる。だから女医さんたちには、「こんな仕事を待っていたんです」と喜んでもらえました。
しかも相談をするユーザーも女性が多いから、質問の微妙なニュアンスも汲み取ってくれます。それが丁寧な回答にもつながっているんです。
■オンライン相談サービスに対する医師の意外な反応
――サービス自体に対する医師の意見はどうですか?
寺田:例えば小児科ですけど、医師をしている弟から聞いて意外だった話があります。彼が言うには、今って小児科がめちゃくちゃ忙しいらしいんです。
――全国的に小児科の数が減少しているというデータもありますからね。
(注:厚生労働省の「医療施設調査・病院報告(2013年)」によると、全国の小児科のある病院は18年連続で減少を続け、減少が始まった1994年の約4,000施設と比べて3割減にも及んでいる)
寺田:そうなんですよね。でも、今は子供がちょっと調子が悪かったり、転んでヒザを擦りむいたりしたら、すぐ病院に連れて行くママが多いそうなんです。
――小児科医は減っているのに、利用する人は増えていると。育児の悩みがあっても、周囲に相談できる人がいない「ママの孤立化」とも関係がありそうですね。
寺田:ええ。それで、「本当に重大な病気の人が受診できなくなる可能性がある、という悩みがある」と弟は言っていました。でもドクターズミーのようなオンラインの健康相談サービスが普及すれば、病院に行く前に、本当に診察が必要なのか相談ができます。それだけでも、小児科医の負担はかなり軽減されるので、助かるそうなんです。
――病院の機能の一部を、オンラインで補完していくわけですね。
寺田:自治体が「電話相談サービス」を提供しているところもあるのですが、若い世代にとって電話の相談は実はハードルが高いようで。スマホから気軽に相談できるサービスは医師の方からも期待されていますね。
■なぜライフネット生命と提携したのか?
――ドクターズミーはライフネット生命と提携して、ライフネット生命のご契約者さまに月額料金を無料で提供を行っています。
企業との提携は今後も進めていくのでしょうか?
寺田:現在は5社ほどですが、これから法人向けも増やしていきたいですね。特にライフネット生命さんは、「子育て世代の生命保険料を半額にして、安心して赤ちゃんを産んでほしい」というコンセプトが、そもそもドクターズミーと近いと思っていたんですよ。
これは私の意見ですけど、生命保険って、身近な存在じゃないと思うんです。普段の生活では存在を意識しないけど、だけど何かあったときにはすごく助けになる。それは病院みたいなものじゃないかなと。
――どちらも健康であれば、特段、意識しないものですからね。
寺田:だから病院とドクターズミーが補完的な関係にあるように、生命保険とも補完し合える部分が絶対にあると思っていて。
ドクターズミーで相談をする人が、「生命保険はどうしようかな」と検討するきっかけになったり、生命保険に加入した人が、「日々の健康管理も気付けないとな」とドクターズミーに登録してくれたりと、いろんなところで相乗効果を生み出していければと思います。
●専門家が答える医療(ヘルスケア)Q&Aサイト「ドクターズミー」
<プロフィール>
寺田佳史(てらだ・よしふみ)
1984年東京都生まれ。中央大学卒業後。2007年に株式会社サイバーエージェント入社。
2013年に株式会社サイバー・バズで「ドクターズミー」を立ち上げ、事業責任者としてサービス向上に努めている。現在2児の父。
<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/小島マサヒロ