佐倉由枝さん(株式会社マークス クリエイティブセンター部長、手帳・ノートブランド「EDiT」ブランドマネジャー)

世界から愛される手帳・ノートを企画する株式会社マークスで、EDiT「大人のライフログ用ノート」の企画・製作に携わった佐倉さん。後編では、「書くこと」に向き合うコツや、アナログなツールの開発者の目線から、オンライン生保に期待することなどについて伺いました。
(前編はこちら

■書くときは時間と場所のセッティングにこだわる

──“40代からのエンディングノート”というコンセプトで作られたEDiTの「大人のライフログ用ノート」、書くのはいつがおすすめですか? やはり週末などまとまった時間を取れる時でしょうか。

佐倉:一番おすすめなのは年末年始のように、一区切りがつくタイミングですね。私の場合は旅行などに行って、自分のことを振り返る、“自分会議”の時間を持つようにしています。週末だと、家族や家事などいろんなことが気になって、手につかないこともあると思いますので、ちょっと場所を変えて、自分のことだけに集中できる旅先はおすすめです。

──Wi-Fiのつながらない環境で、パソコンもスマホもオフにすれば、考え事が進みそうですね。

佐倉:デジタルでもライフログは書けますが、常にいろんな環境とコネクトしてたくさんの情報が入ってくるので、そこから切り離した状態のほうが考え事に集中できますよね。それがアナログの良さだと思います。

考えごとに適している場所は人それぞれです。私の場合ホテルだと机が欲しいとか、海があると海辺に行きたくなってしまう(笑)から森林の方がいいとか、自分に合った場所をいろいろ試しています。

──確かに、自分のことだけに集中する時間を持っていないな、と気付きました。明日はあれをやらないと、など目の前のことに追われてしまって。

佐倉:そうした機会づくりはその後の自分の人生につながるものなので、お金をかけるだけの価値があると思います。

■手書きで記録することの効果

──デジタルではなく、自分の文字で書くことの特長や効果はどういったものがあると思いますか?

佐倉:目標がある人の場合だと、紙に書くことで目標が達成しやすくなると聞きますね。書いたものを持ち歩くと常にその内容を意識するため、目標達成率が上がるという方もいらっしゃいました。

デジタルだと色々な情報とつながってしまうので、それと切り離して“書く”ことに集中したほうが内面を見つめ直しやすいと思います。書くことで内的なものを表に出すことは心のデトックスにもなりますし、ポジティブになれたり論理的になれたりもします。

──確かに、PCやスマートフォンだと感情に任せてメールを書いてしまうこともありますが、手書きの文章だとそういったことが無い気がしますね。

EDiT「大人のライフログ用ノート」のプロフィールページ「私について」と「大切な人へのメッセージ」の記入例

佐倉:手で書くことは、自分を客観視することにつながって、意識と感情を切り離せるのが特長かもしれませんね。自分の文字で書くと、文字の乱れなどで怒っている自分を客観視できるけれど、キーボードで打った文字だと他人ごとに見えてしまう感じがありますよね。

──手帳を広げる、書くタイミングはいかがでしょう?

佐倉:書く時間や場所と内容はリンクすると思います。私の場合、一時期、毎朝5ページなんでもよいのでとにかく書く「モーニングノート」というノート術を実践していたのですが、朝は一番気持ちがポジティブなタイミングなので、書いた内容もポジティブな方向に向かうんですよ。特に、窓際で朝日を感じながら書くのがおすすめです。

──モーニングノートで書くのは、昨日あった出来事などですか?

佐倉:主には今日やることでしたね。今日はこうしたいとか、ToDo整理になることも多いんですが、それを書き出すことで、「よし、今日も頑張ろう!」と前向きな気持ちになれました。

──日記なども、ちゃんと書きたいなと思うのですが、毎日書かなきゃというプレッシャーを感じたり、何を書いたらいいのかわからなかったりして、日記を毎日続けることは「やりたいと思っているのに出来ていない」ことの一つになってしまいます。書くことを習慣にするためのアドバイスがあれば、ぜひ教えてください。

佐倉:実は私も、そんなにマメに書く方じゃないんですよ(笑)。日記が続くようになったのは、弊社の「5年連用日記」を使うようになった頃からです。毎日書けなくても余白があってもOKで、基本的に書きたいときに書けば良いんです。「5年連用日記」は、1ページに同じ日付の記入欄が5年分ある形なので、2・3年前のことを振り返る楽しみもありますし、書くスペースが小さいので、たくさん書かなくては、というプレッシャーもなく、おすすめです。

あとはログから始めるのもいいですね、体重とか睡眠時間とか、感情ではなく自分が気を付けたいことの記録をつけるのは続きやすいと思います。

■保険とアナログと人生のつながり方の未来

──私たちライフネット生命は、保険のお申し込みなどの手続きをオンラインで完結できることを基本としています。一方で、お客さまが保険を検討するうえで、紙などのアナログメディアのほうが適した内容もあると思っています。お客さまの人生に長く関わる「保険」には、どういったツールがあると良いでしょうか。

佐倉:そうですね。保険に関するさまざまなな情報をまとめるのが大変なので、ネットで管理するのもいいけれど、紙を活用するなら、保険証券だけではなく加入している保険の情報をストックできる冊子などがあるといいかもしれませんね。

──確かに、自分の保険についての情報がわからなくなる方も多いと思います。

佐倉:大事なところがメモできて、証券も貼っておけて、それをパラパラ見ることができるといいですね。あと、自分が60歳になるまでに保険料を合計いくら払うことになるか? などの情報がまとまっているツールもあるといいなと思います。

あとは保険が自分のために備えるものか、誰かに残すためのものか、でも変わりますよね。後者の場合ですと、残す人へのメッセージのページがあるといいですね。

──保険だとどうしても「亡くなったとき」を考えることになってしまいがちですが、今日お話を伺って、こういう働き方をしていきたいとか、健康でいてこういう生き方をしたいとか、そういう考え方ができる前向きな冊子が作れたらいいなと思いました。

佐倉:「自分がどう生きていきたいか」がないと、保険も選べないですよね。65歳まで働くつもりなのか、70歳過ぎても働くつもりなのか、などを選んでいって、保障を決められるような、自分の人生のプランを能動的に選んでいけるツールがあってもいいですね。

生きていく上での選択肢や目的は色々あるのに、「お金を貯めなくては!」と、それが目的になるのはおかしいなと感じるんです。生き方も多様化しているし、ライフステージと保険とのマッチングがもっとわかりやすいといいなと思います。

これから私たちがどう生きたいか、どう人生を終えたいかを考えさせてくれる機会があって、それによって自分が選ぶべき保険がわかっていく。チャレンジングな取り組みをしている御社にぜひやっていただきたいです。

──すてきなアイデアをありがとうございます! 人生を振り返る機会によって、お金との向き合い方や保険の選び方が変わる人も出てきますよね。新しい生き方を選んだお客さまにも、寄り添える企業でありたいと思います。本日は、ありがとうございました。

<プロフィール>
佐倉由枝
株式会社マークス クリエイティブセンター部長、手帳・ノートブランド「EDiT」ブランドマネジャー。同社にて、手帳の商品企画や出版部門「エディシォン・ドゥ・パリ」の書籍編集などを担当し、「EDiT」は2010年の立ち上げより企画開発に従事。2016年より現職。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/年永亜美(ライフネットジャーナル オンライン 編集部)

撮影/村上悦子